第2話 

その後、辿り着いた隣の国であるカンパニュラに住んでいる。

今はその国の工場で働いているというわけだ。


「ウルス、お前はずっとこの国に住んでるんだよな?」

「あぁ、そうだぜ」


「この国の機構魔獣による被害はどのくらいだったんだ?」

「こっちもかなりの人間が殺されたけど、お前の出身国のアマリリスほどの被害はないな」


「そうか…やっぱりか」

アマリリスは、俺以外の人間は全員死んだらしいからな。


俺はもう一度、このレットアージを見る。

「ところでコイツはどこで見つけたんだろうな?」

なんせ俺が就職した時には既にここにあった。


「さぁ?誰がどこで見つけたのか、なんで動かないのかもさっぱりだ」

「考えたって分からないか」


俺たちは仕事場に戻ることにした。

すると、嫌な奴に会ってしまった。


「おいガキ共、どこほっつき歩いてやがった」 

「げっ、工場長…」

「げっ、てなんだ。げっ、て」


会ってしまったのはここの工場長だ。

工場長は社員から嫌われている。

いわゆるパワハラ上司というやつだ。


他人の仕事にケチはつけるし、自分の言う通りにしないとキレるような性格だ。


さらに、自分は仕事をよくサボるから、残りの仕事を俺たちでやる羽目になったりする。

しかも、残業時間の割に給料が合わない。


結構、ブラック企業なんだよな…。


「んじゃ、俺は今日これで上がるから後はお前らでよろしく」


「はい?何かあるんですか?」


「あ?何でもいいだろ。絶対外せない用事なんだよ。あんま詮索すんな」


そう言って、工場長は帰ってしまった。


「絶対サボりだよな…」

「最悪だ…また残業じゃねぇか…」


―――――――――――――――――――――


今は夜になり、外はかなり暗くなっている。

しかし、俺とウルス、そして他の社員は絶賛残業中である。

ちなみに工場長だけいない。


こんなブラック企業、本当はもう辞めたいんだが、生活に十分なお金はまだ稼げていない。


それに、ロボット関係の仕事から離れてしまったらレットアージに乗るという夢を諦めてしまうような気がして嫌だ。


仕方ないか。

しばらく社畜生活続行だな。


「疲れたな。俺はちょっと休憩にするか」

「あ、俺も行くぜ!」


俺とウルスは、社員の中でもかなり若い方であるため、経験も浅い。


仕事にはまだ不慣れなため、度々休憩を挟みながら作業を頑張っている。 


俺たちは自販機でジュースを買った。


「はぁ〜!やっぱ肉体労働の後に飲むジュースはうめぇ!」


「でも、この後も肉体労働続行するんだよな…」


「おい…悲しいこと言うなよ…」


ジュースを飲み終わった俺たちは仕事場に戻ろうとする。

廊下を歩いていると―――、


「またお前らサボってんのか?」

なんと、工場長とすれ違った。


「工場長?帰ったんじゃなかったんですか?」


「会社に忘れ物してな、俺明日休みだから取りに来たんだよ」


この上司、人に仕事押し付けるくせに明日休みまで取ってやがるのかよ。

ますますイライラしてきたな。


「何ボーッとしてんだよ。早く戻れ!」


「あっ、はい。すみません!」

「今戻りまーす!」


とはいえ、上司は上司。

部下は逆らってはいけない。

残業頑張るか…。


―――――――――――――――――――――


「やっと終わった…」

「マジで疲れた…」


2時間後、俺たちは疲労困憊。

他の社員もかなり辛そうな顔をしている。


そんな中、あの男がやってきた。

結局まだ帰ってなかったのかよ。


「おう、お前ら!今日のノルマよく頑張ったな!」


でもやっと今日のノルマ達成だ。

ようやく帰れる…。


「てなわけで、本来なら明日俺がやるノルマ分もお前らやっといてくれ」


は?


「いや、ちょっと待ってください!」

「なんだ、ウルス。文句あんのか?」


「流石に今日は無理でしょ!」

「なんでだよ?」


「なんでって…」

「ほら、文句言わずにやれ!」


なんなんだよコイツ。

もう我慢の限界だ!

俺はついに工場長に反論することにした。


「あの、工場長」

「なんだよ、今度はリエスか?」


「前から思ってましたけど工場長、経験が浅い俺らにこの仕事量は流石におかしいです」


「なんだと?俺はお前らに経験を積ませたいだけなんだが?」


「自分の仕事押し付けてまで?」


「おい…、リエス。お前いい加減にしろよ。俺を誰だと思ってんだ?」


工場長が俺の胸ぐらを掴んできた。

まさか…、殴る気か!?



すると、その時―――、



ドォォォォン!


外からすごい音が鳴り響いた。

慌てて、外を確認する。

そこには―――、

怪物がいた。


20メートルはあるであろう巨体に、黒い狼のような見た目、体に貼り付けてあるような装甲、肩に背負った大砲。


間違いない、機構魔獣だ。

しかもコイツは知っている。


聞いた話によると、かつて東アジアに大規模な被害をもたらした機構魔獣〈フェンリル〉だ。


まずいな。機構魔獣の被害規模は、国どころか文明まで壊滅させる。

これでは俺たちも全滅だ。


フェンリルが大砲を一発放った。

すると、工場の近くの山が大爆発を起こし、燃え盛った。


「なんて威力だ…」

「やべぇよ、逃げねぇと!」

社員たちはすぐに全員逃げた。


「俺も早く帰ろう!」

工場長もそれに続いて走っていった。


しかし―――。


「「がぁぁぁぁぁぁ!」」


そんな皆の必死な逃走も虚しく、フェンリルの砲弾の餌食となってしまった。


「嘘…だろ…」


さっきまで、一緒に仕事を頑張っていた仲間がこんな簡単にいなくなるなんて、信じられなかった。


被害は更に拡大していく。

山全体を焼け野原にしたフェンリルは、街の方を襲撃しようとする。


「な、なぁリエス!どうしよう!?」

「お、俺に聞かれても…!」


ハッ!

そういえば1つだけ希望がある。

できるかは分からない。

でも一か八かやってみるか。

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