機構魔獣戦記
巫有澄
プロローグ
第1話
自動車、ロボット、AIといった機械技術が発展し始めた地球。
ロボットの普及により、事件事故等の発生率は大幅に減少した。
人間が機械技術を発展させ、ロボットは人間の生活や仕事を手助けする。
ロボットの活躍により人間とロボットが程よく共存できる平和な世界が作り上げられた。
しかし、突如宇宙より襲来した謎の機械生命体「機構魔獣」により人類の平穏は終焉を迎えることになる。
―――――――――――――――――――――
アルファオメガ暦931年。
北大西洋のとある国、アマリリス。
そこが全ての始まりとなった。
それは何の変哲もない、ある日のことだった。
突然、晴れていた空の状況が一変した。
空から何かが飛来したのだ。
「おい、なんだあれ!?」
「ろ…ロボットか?」
「いや、生きてるようにも見えるぞ?」
その刹那、謎の機械のようなものが発した強烈な光が、辺り一面を焼き尽くす。
悉くは無に帰され、国の人間も生き残りは誰一人としていなかった。
この事件以降、このような機械生命体は地球各地で出現し、数々の文明を滅ぼしていった。
人々はこの機械生命体を「機構魔獣」と呼び、恐れ慄くようになった。
―――――――――――――――――――――
そして数年後―――、
「よし、できた」
俺はリエス。
ロボット製造工場で働いている。
この工場では、医療用ロボットから産業用ロボットまで幅広く製造している。
中でも製造に力を入れているのは、大型の人型ロボット「レットアージ」だ。
かっこよくて、強くて、人の力になる。
俺はそんなレットアージのパイロットになるのが夢だ。
「リエスー!休憩にしようぜー!」
「あぁ、そうだな」
俺は仕事を一段落させ、友人のウルスと休憩に行く。
「ウルス、今日も“アレ”見に行かないか?」
「おう、当然だぜ!」
アレというのは…、
「やっぱカッケーな!」
「でもこれ動かないんだよなぁ…」
工場の奥に保管されているレットアージだ。
大抵のレットアージの外見は、正統派ヒーローロボットといったところ。
だがこれは全体的に、スタイリッシュな赤い鎧のような外見に、天使のような翼、巨大な剣まで装備されている。
まさに騎士といった印象だ。
性能も名前も分からない。
動かないから、壊れてるのかもしれない。
でも、俺はコイツに乗ってみたいと思ってる。
「レットアージ自体がかっこいいけど、やっぱりコイツは格別だな」
「リエス、お前ならコイツに乗れるんじゃねぇのか?」
「いや、無理だろ。動かないんだからな」
「そうか?」
「そうだろ、今まで色んなパイロットや整備士がコイツを調査したが、仕組みが全く分からなかった。そんなのに俺が乗れるとは思えない」
「そっか。でも俺は、お前が立派なレットアージのパイロットになれると信じてるぜ!」
「…あぁ、必ずなってみせる。…そして俺の手でヤツらを…機構魔獣を倒す!」
―――――――――――――――――――――
― 5年前 ―
当時小学生だった俺は、その頃から機械科を学んでいた。
なぜなら、俺の父さんはレットアージの一流パイロットだったからだ。
父さんに憧れて、俺もレットアージのパイロットになりたいと思っていた。
ちなみに母さんは、父さんを傍で支える天才エンジニアだ。
父さんの愛機であるレットアージ「セラフィム」を作ったのも母さんだ。
レットアージは人を助けるロボット。
そんなロボットに乗って、たくさんの人を助けている両親の名に恥じぬよう俺も頑張ろうと思っていた。
あの日までは―――。
―――――――――――――――――――――
その日は、小学校の卒業式。
「卒業おめでとう」
「おう、リエスもな!中学は別々になっちゃったけどお互い頑張ろうぜ!」
俺は友達との別れを惜しみながらも、中学生活に期待を膨らませていた。
卒業式後、校門前で両親と写真撮影をした。
それが両親との最後の思い出となった。
そう、卒業式直後に起こったのだ。
あの事件が。
「なんだあれ?」
「空に何か浮いてるぞ!」
「ロボットか?生き物にも見えるけど…」
突如、空から飛来した機械のような謎の生命体に、学校だけでなく、国全体が騒ぎになった。
その生命体は、暫くその場から動かなかった。
こちらの様子でも窺っているようだった。
すると、両親がこんなことを言い出した。
「いいか、リエス。なるべく遠くに逃げるんだぞ」
「え?父さん、急に何言ってんだ?」
「リエス、お母さんもお父さんもあなた大切に思ってる。だから今すぐ逃げて」
「母さんまで!どういうことだよ!?」
両親はそんなことを言い残し、2人でセラフィムに搭乗した。
その時―――、
謎の生命体が動き出したのだ。
その生命体は目と思しき部分から強烈なビームを放った。
すると、辺り一面は焼け野原となり、その場にいた人間を次々と黒焦げにしてしまった。
「な、なんなんだよコイツ…」
俺は恐怖に怯えた。
目の前の光景が現実なのか疑ってしまうほどだった。
俺は父さんに言われた通り、遠くに走って逃げることにした。
俺の行く道には既に何も残っておらず、灰と化した建物や人体が転がっているだけだった。
空を見ると、両親が乗っているセラフィムを見つけた。
謎の生命体に向かって突っ込んでいく。
その時の記憶で鮮明に残っているのは、生命体が放ったビームが起こした爆発に飲み込まれたセラフィムの姿だった。
ということは両親はもう―――――――――、
そして俺は山を越え谷を越え、やっとの思いで謎の生命体による被害が少ないとされる隣の国まで辿り着いた。
後ほど、アマリリスの生き残りは0人と発表されたが1人だけ生き残りがいる。
それが俺だ。
そして、世界中に被害を及ぼしているこの生命体は「機構魔獣」と命名された。
―――――――――――――――――――――
これが俺が機構魔獣を倒したいと思っている理由だ。
要は両親の敵討ちだ。
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