第4話 

「工場長?帰ったんじゃなかったんですか?」


「会社に忘れ物してな、俺明日休みだから取りに来たんだよ」


この上司、人に仕事押し付けるくせに明日休み取ってやがる。

ますますイライラしてきた。


「何ボーッとしてんだよ。早く戻れ!」


「あっ、はい。すみません!」

「今戻りまーす!」


とはいえ、上司は上司。

部下は逆らってはいけない。

残業頑張るか…


―――――――――――――――――――――


「やっと終わった…」

「マジで疲れた…」


2時間後、俺たちは疲労困憊。

他の社員もかなり辛そうな顔をしている。


そんな中、あの男は…


「おう、お前ら!今日のノルマよく頑張ったな!」

今日のノルマ達成だ。

ようやく帰れる…


「てなわけで、本来なら明日俺がやるノルマ分もお前らやっといてくれ」


は?


「いや、ちょっと待ってください!」

「なんだ、ウルス。文句あんのか?」


「流石に今日は無理でしょ!」

「なんでだよ?」


「なんでって…」

「ほら、文句言わずにやる!」


なんだよコイツ。

もう我慢の限界だ!


「あの、工場長」

「なんだよ、今度はリエスか?」


「前から思ってましたけど工場長、経験が浅い俺らにこの仕事量は流石におかしいです」

「なんだと?俺はお前らに経験を積ませたいだけなんだが?」


「自分の仕事押し付けてまで?」

「おい、リエス。お前いい加減にしろよ。俺を誰だと思ってんだ?」


工場長が俺の胸ぐらを掴んできた。

まさか、殴る気か!?



すると、その時―――


ドォォォォン!


外からすごい音が鳴り響いた。

慌てて、外を確認する。

そこには―――


20メートルはあるであろう巨体に、黒い狼のような見た目、体に貼り付けてあるような装甲、肩に背負った大砲。


間違いない、機構魔獣だ。

しかもコイツは知っている。


聞いた話によると、かつて東アジアに大規模な被害をもたらした機構魔獣〈フェンリル〉だ。


まずいな。機構魔獣の被害規模は、国どころか文明まで壊滅させる。

これでは俺たちも全滅だ。


フェンリルが大砲を一発放った。

すると、工場の近くの山が大爆発を起こし、燃え盛った。


「なんて威力だ…」

「やべぇよ、逃げねぇと!」

社員たちはすぐに全員逃げた。


「俺も早く帰ろう!」

工場長もそれに続いて走っていった。


しかし―――


「「がぁぁぁぁぁぁ!」」


そんな皆の必死な逃走も虚しく、フェンリルの砲弾の餌食となってしまった。


「嘘…だろ…」


さっきまで、一緒に仕事を頑張っていた仲間がこんな簡単にいなくなるなんて、信じられなかった。


被害は更に拡大していく。

山全体を焼け野原にしたフェンリルは、街の方を襲撃しようとする。


「な、なぁリエス!どうしよう!?」

「お、俺に聞かれても…!」


ハッ!

そういえば1つだけ希望がある。

できるかは分からない。

でも一か八かやってみるか。




― 第5話に続く ―

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