第3話







 アーデルヴェルトの意図を汲んでいるのか


 或いは拷問担当の単なる趣味なのか


 兵士達の拷問は一言で言えば魔女狩りのように残酷なものだった。


 熱い釘で足を刺したり、水車に身体を縛られた状態で水責めされたり、熱した焼き鏝を押されたり、鞭で打たれたり──・・・。



 聖女って王太后様のような女性を言うんじゃないのか?


 医師であれば放り出してしまう重傷でも一瞬で治してしまうとか、穢れを浄化するとか、豊穣を齎すとか・・・


 それって王太后様が先王様に匹敵する魔力の持ち主だから可能であって、普通の人間の魔力では不可能だからな!


 なぁ。この女から魔力を感じるか?


 んにゃ。全然感じねぇ~


 だよな~。この女は何で自分を聖女って言ったんだ?


 先王様の妃になる?


 先王様は王太后様以外の女性に見向きなどしないぞ


 王太后様が陛下を疎んじていた?


 王族の子育てがどんなものか知らねぇけど、王太后様は赤子だった頃の陛下達に自分の乳を含ませていたってさ


 へぇ~・・・普通は乳母が乳を与えたり、教育係に全てを任せるんじゃないのか?


 俺の恋人が陛下の乳姉弟で、彼女の母親は陛下の乳母の一人だったんだ


 聞いた話によるとさ、母親だからこそ子供達に寄り添いたいって王太后様は口癖のように言っていたんだって


 先王様達は躾と教育には厳しかったらしいけど、平民の妖魔と同じように親子の触れ合いをしていたらしいぜ


 幼い頃の陛下達に寄り添って構っていたし色んな事を体験させていたらしいし・・・


 だからレオンハルト様は医者になったんだな



 どういう事?


 あたしから魔力を感じない?


 セレスティはアーデルヴェルトを嫌っていない?


 ゲームのセレスティは自分が産んだ子供を『化け物』と罵って嫌っていたはずよ!?


 もしかして・・・


 拷問している兵士達の会話が聞こえたあたしは、ある結論に至ったの。


 バグ?


 バグが起こっているの?


 セレスティもこのゲームをプレイした事がある転生者?


 ネグレクトな環境で育ったアーデルヴェルト達を気の毒に思っていたセレスティが自分で子育てをしたって事!?


 ゆ、許さない・・・っ!


 この世界はあたしが幸せになる為に存在しているのよ!!


 怒りがあたしを支配していたのかな?



「セレスティを連れて来い!」


「あたしからグレンヴァルト様を奪ったビッチを消さないと、エレメントアースは元に戻らないわ!!」


「あたしはグレンヴァルト様の妃にして聖女!ヒロインとしてエレメントアースを本来の正しい姿に戻す!」



 身体中の痛みが消えたあたしはヒロインとして、聖女として兵士達にそう訴えたの!


 何で!?


 あたしは正当な訴えをしただけよ!!


 それなのに・・・兵士達の拷問が道具ではなく魔法を使ったものになって、さっきよりも更に過激になっていったわ!


 殺してくれ・・・


 いっその事、一思いに死なせてと思っているあたしの耳に救いの声が入って来たの。






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