家族

とうちゃん、謝りなさい。」


「だって、命かかってんじゃんか。」

「怖いの」

「怖くないといったら嘘になります。」

渋い顔を決めながら堂々と恥ずかしい発言をかます。


「でも、かわいそうでしょ。」

「それはそうだけどよ。やばいって。

「俺だよ。俺。分かる。弱いの。学園でも弱いの」


「確かに神様はトウチャンに与えてくれなかったよ。でも、与えてあげることはできるでしょ」


「どうしろと。」

意味深な言葉に不満そうな顔を上げ睨みをきかせる。

「一先、修行ね。」

「こう見えて、強いんだから。」

「知ってますぅ。自慢なんですぅ。」

「ハッハ」

「なぜ、笑うの」

「私とおんなじですね。」

「まぁ、そうかもな。仕方ない。やってやるよ。」


3人は両手で体を支える姿勢で天井を見上げ

た。

「皆、同じだね。花麗ちゃん」

「はい、同じです。」

「俺のことお兄ちゃんと呼んでくれていいんだぜ。」

「まだ、早いです。」

「それもそっか」

「いつから、やる。」

蓮見が尋ねると意気揚々と声が返る。

「今日からに決まっておろう。」

「よっ、それでこそ、トウチャン。」

「ちょっと、着替えてくる。」

「私も。おっと、花麗ちゃんはソファーでくつろいでて」

「はい」

「はーいでいいよ。」

「はーい」

賞状、トロフィーが沢山飾られていたけれど、あれは蓮見さんだったのかと感心しながら待っていた。


「なんだよ。その格好。」

「仕方ないでしょ。久しぶりなんだし」

出てきたのはジャージ姿の二人だった。


「見てよ花麗。変だろ。」

それは王立松坂学園というロゴのついたジャージだった。斗架のは青を基調とし黒い線が入った今風ので、蓮見のは黒を基調としたもの。

少女にはなんだかヒーローの登場シーンに映っていた。

「花麗ちゃん、おーい」

「ダメだ。意識を失ってる。」

そういうと悪ふざけで頭を触ろうとする。


「きゃー」

「大丈夫か。」

頭を傾け、クセのように角を触りながら。

「ごめんなさい。変じゃありませんよ。似合ってます。」

と返す。


斗架は何かを悟って謝るポーズをとる。

「角な。気をつける。」

「大丈夫です。体が勝手に動いただけなので」

「トウチャンも素直に謝れんじゃん。」

「俺をなんだと思ってる。悟りの菩薩ぞ」

「ん」

「ん、じゃ、行きますか。」

恥ずかしと体が少し硬直する。

蓮見はどんまいと言わんばかりに肩に手を乗せつつ、不思議そうにこちらをみている


少女の全身を下から上にかけてみた。そして、気づく。

「変装しなきゃ。」

そういうわけで廊下へと続く扉を閉める。

「トウチャン、入っちゃダメだからね。」

「分かってる。」


「ジャーン。」

出てきたのは厚化粧のおばさんだった。

「まじか。」

「まじです。」

笑ってもくれないのでげんなりする。それが伝わったのかすかさず斗架は似合わずフォローをする。

「まぁ、大丈夫。お似合いだよ。」

「お似合いですか。それも悲しいです。」

と正直な感想を述べる。


こうして私達は修行の地へと向かう事となった。



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幻灯記 秋風のシャア @akikazenosyah

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