第5話 忍び寄る影

「…​大丈夫?しっかりして!」

ミズクラゲの声でやっと目を覚ました少女

どうやら海の中をさまよっていたようだ


「あれ…​さっきの建物は?」

ミズクラゲは残念そうな顔をしてある場所を指さす

その先には、崩れてしまった建物があった

ただし、石像は遠くから見ても分かるほど傷一つない状態で残っている

まるで結界が張られているようだった


「無事だったんだ、よかった…​」

しかし、安心していたのも束の間だった

少女は激しい頭痛に襲われてしまう

「ぅ…​い、痛いっ!」

どうやら、地震で建物から放り出された時に頭をぶつけてしまったらしい

体を見ると、あちこちに割れたガラスでできたであろう小さな傷があった



目の前にいるミズクラゲがぐにゃぐにゃしているように見える

とても気持ちが悪くて吐きそうだ

気を失う前になんとかこの言葉を発した

「クラゲちゃん、まわりがぐにゃぐにゃしてる…​」

「え…​ちょっと!!」

少女はまた意識を海中へと手放した


たったひとり残されたクラゲは少女の体を揺らしながら叫ぶ

「まだダメ、もうすぐ空を見れるんだよ!?

もどってきて!」


いくら顔をつねっても、肩を揺らしても、反応はなかった

「どうして…​」

クラゲはどうすることも出来なかった


周りの魚たちが、なんだなんだと野次馬のように集まってくるだけだった



旅路に影はついて回る。

故にその影たるものと対峙せよ。



「どうしよう、何をすればいいのかな…​」

ミズクラゲは不安が限界に達し、泣き出してしまった

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