第2話 異世界への誘い

拓哉は帰宅すると夏のイベントで美紀から購入した同人誌を読み始めた。そしてこの物語の最後に主人公達を召喚した女神ミーナが自分の行いを悔いて連れてきた異世界転移者を元の世界に戻すために、女神自身の力を使い女神自身の消滅と引き換えにしているエピソードが描かれていた。「へー、みんなを元の世界に戻すために女神消えちゃうんだ」と独り言ちた。

購入してきた同人誌を読み終わるころ、急にあたりが光に包まれた。そしてミーナと名乗る女神が現れ、「あなたを私の異世界に召喚します」と告げた、その瞬間、自分の居た場所に物語でよく登場する転移の魔法陣が浮かび上がり自分も光に包まれていた。


気が付くと高校の制服を着た生徒達と同じ場所に立っていた。


ここは聖堂の広間の様な場所で祭壇の方から声が聞こえた、「ようこそ、あなた達は選ばれし勇者なのです。私がこの世界に召喚しました。喜びなさいこれからあなた達には魔王の復活を阻止してもらいます。 ああ名乗るのを忘れました私はこの世界の神ミーナと言います。さあ、私の前にひれ伏すのです。」

召喚されてしまった学生たちは口々に、自分の身におきてしまったことを嘆いていた。


「なんだよそれ!、そんなの知らねーよ、すぐに元の世界に戻せよ!」男子生徒から怒声があがった。

「えーやだよー異世界なんて帰りたい、どうにかしてよ!」


「黙れ、女神さまになんと言うことを」隣に立っていた男が怒鳴った。

「オーディン良いのです。この世界に無理やり連れてこられて混乱しているのでしょう」そして隣に立つ男に指示を出すと姿を消してしまった。

その隣の男は、神官オーディンと名乗ると女神の指示を伝えてきた。

「これから勇者としての力量を把握させていただきますのでこちらに並んでください。」


拓哉はこの女神の名前と言っていることに既視感を覚えていた。『三枝先生の小説だとこの後、スキルを調べられるんだよな』

「これから、皆さんのスキルを確認させていただきます。順番にこの石板に触れてください」『小説の通り進んでいる ハズレスキルの持ち主の名前はたしかタクヤだった』


一緒に召喚された生徒たちは神官オーディンの指示に従い、順番に石板に触れていく。次々とスキルが表示される中、ついに拓哉に順番が回ってきた、小説の中で自分が発した通りに「ステータスオープン」と叫んでみた。『小説の通りなら俺のスキルはわかっている 美紀の付人だ この世界では意味不明な外れスキルだが、小説では違ったんだよな神官には理解してもらえないけど』


「タクヤ:スキル 洗浄」


その瞬間、周囲の生徒たちから失笑が漏れた。「洗浄だって! 服でも洗うの意味わからん?なに?」「役に立気がしねえ!」と囁かれる中、拓哉は冷静さを保とうと努めた。彼はこの展開を知っていたからだ。

神官オーディンは全員のスキルを確認し終えると、彼らに向かって言った。「皆さん、それぞれのスキルを活かして、この国を救うために力を尽くしてください。 タクヤはここに残ってください話があります。」


『最近読んだから、思い出した、ミーナが最後消滅しちゃうけどこの神官に騙されていたんだ、あるアイテムを探し出せば女神が力を使わなくても元の世界に返せる そしてそのアイテムは俺のスキルがないと手に入らないんだ 同人誌を読んだときは何だこの展開はって正直、三枝先生に文句を言いたくなったけど、このアイテムを探し出してミーナの消滅はできれば回避したいなすごく悲しかったし』


しかし、ここまでの展開は想定通りだから、俺を追放する小説の流れに今は従うしかない。


「お前の「洗浄」は聞いたことのないスキルだ何ができるのだ!」

これも想定通りだ、異世界に召喚された小説の主人公タクヤは洗浄というスキルを理解できていないのだからそう答えるのが賢明だ。

「わかりません 洗う能力なんだと思いますが、こちらが教えてほしいです。神官さまお導きください。」


「なんと、あなたのスキルは何も役に立たないハズレスキルの様です。あなたはここに必要のない人間です。今すぐここを立ち去りなさい。」

拓哉は神官オーディンに追放され、異世界の街へと放り出された。彼は自分のスキル「洗浄」が何を意味するのか、まだ理解していなかったが、三枝美幸の小説の展開を思い出しながら行動することにした。


拓哉は街を歩きながら小説の展開を思い出していた、細部まで細かくは覚えていないけどある程度展開はわかっている。ひとまず魔王復活阻止に向けて行動を起こすことにした。

無一文で異世界に放り出されてしまった拓哉は、生活の基盤を作る必要があった。街の中を宛もなくさまよっていると後ろから声を掛けられた「あなた、もしかして異世界から来た人?」

振り返ると、そこには美しい少女が立っていた。

彼女はこの国の第3王女リーシェだと名乗った。拓哉はリーシェに事情を説明した。

「なんで俺に声をかけたんだ!」


「それは、あなたがこの国では見ない服装だったのですぐにわかりました、あと女神ミーナからあなたを探すようにと神託があったのです。ミーナさまは神官オーディンの民を人質にとられていて従う振りをなさっているのです。」

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生成AIを研究していたら異世界創造神を救った件 @toru19680123

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