第1話 同人誌即売会
真夏に開催されるクリエイターの祭典に向けて、領布予定の同人小説の執筆も大詰めだ。読者のみんなに異世界の良さが伝わります様に!!自宅の自室でペンを走らせる。
現役女子高校生の星野美紀(ペンネーム:三枝美幸)は「小説家になるぞ」という小説投稿サイトに投稿した小説「女神に異世界に召喚されたがスキルの意味が分からない」(通称 異世意味)がブレイクして書籍化によりデビューを果たしたラノベ作家だ。その書籍化された小説の内容は、女神によって高等学校の1クラスごとそっくり異世界に召喚されてしまったが、自分だけ使えないスキルだったので、召喚した女神に無能呼ばわりされて異世界に放り出されるが、本人の努力によって異世界で生き残り、勇者の召喚に反対だった王女の助力によって魔王の復活を阻止する話だ。この異世界の物語の女神と主人公のその後の物語を読んでもらうのが目的だった。
美紀は普段から眼鏡を掛け地味で目立たない格好をしているが、実は黒髪で眼鏡の奥に美しい瞳を持つ美少女だ。
SNSにも即売会への参加についてアナウンスしたところ、多くのフォロワーさんが今回の新刊を買いにきてくれるようだ。これはうれしい。
そして即売会当日、準備と言っても搬入した同人誌を並べるだけの作業なのですぐに終わってしまう。即売会の開始が宣言され、パラパラと買ってくれる人がいる中で見知った顔の人がブース前に立って同人誌を手に取っていた。
「「女神に異世界に召喚されたがスキルの意味が分からない」のその後を書いています。」
美紀には見覚えがあった。あれこの人どこかで見たような、すると「これお願いします。あれっ、美紀ちゃん?えっ、失礼ですが星野美紀さんではないですか?」
「あれどこかでお会いしたことありました?っけ そっか、隣のお兄さん、拓哉さんですよね、お久しぶりです。余り大きい声で名前呼ばないでくださいね、人も来てないみたいですし別なところに行きましょう、少し待っていてください。」
思い出した、最近は挨拶する程度になってしまったが、子供のころよく遊んでもらったことのある隣に住む、3つ上の阿久津拓哉さんだ確か大学生に言っているってお母さんから聞いていた。
「どこで待っていればよいかな?」と拓哉は答えた。「では一緒に行くので通路の邪魔にならない場所にいてください、すぐに休憩中の看板出してきますので。」
「了解」
「お待たせしました。行きましょう。」
2人は入り口付近のベンチまで移動した。
「ごめんさい 星野美紀さんが三枝先生だったの? 昔はよく遊んだけど最近は会釈程度だったからな、へーあの美紀ちゃんが三枝先生だったなんて、信じられないよ、高校生で小説家ってすごいね」
「あはははは、阿久津さんありがとうございます。読んで貰えてたんですね」
改めて、この青年は大学生で阿久津拓哉という、2人は幼少期からの知り合いで、幼馴染だった。私達は一緒に遊んだり、時には喧嘩したりしながら成長してきたが大きくなるにつれ交流がなくなっていた。
今では近所で子供の遊ぶ声を聞くようになってきたが、2人が子供のころは近所には同じ年ごろの子供がいなかったのでよく遊んでいた。2人ともアニメが好きで2人でよく見ていた、その影響もあってか空想の世界に興味を持つのは必然だったのかもしれない。特に美紀は中学校に上がると創作活動に熱心に取り組んだ。
「そうなんだ、うれしいなあ。俺、三枝先生の大ファンなんだよ、まさか美紀ちゃんが先生だったなんて…」
美紀は少し照れくさそうに笑った。「ありがとうございます。拓哉さん、あっ阿久津さんが読んでくれてるなんて知らなかったです。」
お金を受け取りながら会釈すると拓哉が答えた。
「実は、俺も異世界転生ものが大好きで、三枝先生の作品には本当に感動して。特に、主人公が自分の力で成長していく姿が好きなんだ。」
拓哉は、カバンから名刺を取り出して美紀に渡した。「改めまして、隣に住んでいる阿久津拓哉です。大学では生成AIの研究してるんだけど、異世界にも興味があって…」
「まあ、そうなんですね、すごく興味深いです。異世界の物語を書く上で、AIの力を借りることができたらもっと面白い作品が作れるんじゃないかって思って。」
「それは面白いアイデアだね。もしよかったら、今度一緒に異世界について話をしたいな?」
「ぜひ!それに、読者さんから直接、異世界の物語について作品のヒントが聞けるなんて、夢みたいです。」
二人は週末の休みを利用して、ファミレスで食事しながら異世界の設定やキャラクターの詳細を語り合った。
ある日、拓哉は美紀に新しいアイデアを提案した。「三枝先生、異世界の物語にAIを組み込んでみるのはどうかな?例えば、主人公がAIの力を借りて魔王を倒すとか。」
美紀は目を輝かせた。「阿久津さんに三枝先生って言われるのなんだか照れます」
少しハニカミながら続けた「でも、それは面白いですね!AIが異世界でどのように役立つか、読者も興味を持つと思います。じゃあ、今書いている作品の次の章ではそのアイデアを取り入れてみましょう。AIが主人公の成長をサポートする役割を果たすんです。」
「いいね!それに、AIが異世界の知識を提供することで、主人公が新しいスキルを学ぶ手助けもできるかもしれないね。じゃ、子供のころみたいに美紀ちゃんって呼んでもよいかな?」
「私はそうしていただけると助かります。」
「じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
こうして、二人は新しい物語の展開に夢中になり、次々とアイデアを出し合った。彼らの協力は、単なる研究や執筆の枠を超え、互いの創造力を刺激し合う素晴らしいパートナーシップへと発展していった。
そして、ある日、拓哉はふと美紀に尋ねた。「美紀ちゃんは、もし本当に異世界に行けるとしたら、どんな異世界にいってみたい?」
私は少し考えてから答えた。「私は、自分の書いた物語の世界を実際に体験してみたいです。主人公と一緒に冒険して、彼らの成長を見守りたいですね。」
「それは素敵だね。主人公を見守りたいなんて美紀ちゃんの小説に登場する女神ミーナ見たいだね、俺も同じだよ、異世界が存在するならその世界に行ってみたいんだ。恥ずかしいから、笑わずに聞いてほしいのだけど」
「はい、笑いませんよ!ふふ 女神ミーナって召喚した主人公に試練なんか与えちゃって、自分で展開考ええおきながらあれなんですが、可笑しいですよね」
「そんなことないよ。実は俺、異世界に行く方法を研究しているんだ。」
「えっ!異世界に行く?」
「やっぱり、可笑しいよね」
「いえいえ、異世界に転生するパターンって、この世界に未練を残して死んでしまうとか、輪廻から外れた死に方をしてしまうとか?あと転生ではないですが異世界側から召喚されてしまうとかで自らの意思で異世界に行くのは難しい気がします。」
自分が書いている小説の世界では、女神であるミーナによって教室からクラス全員を異世界に連れていかれる話だった。私はそのことを考えながらミーナにはなりたくないなと思った。
なぜなら召喚したミーナが使えないスキルを持った生徒にとった態度が許せなかったからだ。しかもその生徒に付けていた名前が「タクヤ」だったからだ。
「でも、美紀ちゃんの書いた世界を実際に冒険したいし。そのための方法を真面目に研究してるんだ。僕は相当に思いが強すぎるのかな、引いちゃいますよね」
美紀はスマフォを覗き込だ「そんなことはないのですが…あっすみません家からです。お客さん来たみたいなのでこれで、その研究の話は、今度、阿久津さんの家にお邪魔しますのでその時にまた」
この日、二人は異世界への転生や召喚について話し合っていたが、拓哉が異世界転生の研究の話を持ち出したところ、美紀は避けるように席を立ってしまった。
拓哉は、普段から自分の研究の合間に考えていた異世界転生の研究について熱く話してしまい、美紀に頭のおかしいやつって思われたか心配になってしまった。
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