第32話 仲良し双子が立ち直れた理由
「たっくんおはよーのぎゅ〜っ♡♡♡」
「・・・」
「たっくん?」
「んぁ?あぁごめんおはよ」
「ぎゅ〜っ♡♡♡しても気づかないって・・・どうしたの?」
「あぁ普通にちとね・・・」
「むぅ・・・」
たっくんと愛央、双子である私たちはいつも仲良し。たまに喧嘩するけど、すぐ仲直りするほど。
「たっくん最近働きすぎじゃない?」
「俺?」
「うん」
「多分ね」
「無理しちゃダメだよ。たっくんがいなかったら、愛央たち何もできないんだから」
4枚敷いた布団の真ん中でいつも寝ている私とたっくんはあいちゃんと瀬奈がまだ寝ている朝5時から動き始める。別にやらしい行為をするわけでもなく、ただただ双子だから起きる時間が同じなだけ。ロングヘアをたくみにヘアアレンジしてもらってから、たくみは仕事に取り掛かる。その間に私はメイクをして、Luminasのチアユニに着替える。
「今日も頑張ろうね!たっくん!」
赤色のポンポンを振って、たっくんに伝える。ここまでが、今の私とたっくんの日課。しかしこれにはちゃんとした理由があった。
第29話のチアダンスの大会前、たっくんは突如として学校に行かなくなり、部屋の中で引きこもってしまった。
「たっくん、学校いこー」
「無理。今日は行かない」
「うーん・・・わかったー、先生に言っとくね」
この時、私たちはたっくんが1ヶ月以上休むことに気づかなかった。
「体調悪いのかなぁ・・・?」
「じゃない?顔が疲れてたし」
「まぁ、うちらは楽しもっ」
学校に着いてから昼休みの時間まで、頭の中にたくみがいないことを思わないようにしていた私だけど、昼休みの鐘がなった瞬間先生に呼ばれた。そこで告げられたことは、たくみの休学届の話だった。
「えっ、たっくんが休学!?」
「そう。10時頃に職員室に来て、休学届を出して帰ったよ」
「なんで・・・」
「実は、どうやらスクールカーストというやつに巻き込まれたみたいでな、いじめられていたんだって」
「そうなんですか・・・」
この学校にはスクールカーストというものが存在する。私たち応援チア部とダンス部は一軍女子扱いをされていて、いじめられるということはまずない。しかし、たっくんはいわゆる陰キャとして扱われていたらしく、それが原因でいじめられていたという。それで突然の休学ということになったみたい。
「それでだね、愛央さんと瀬奈さん、明里さんについては休学解除になるまで来る来ないは決めていい。匠くんの面倒をみたいなら休んでも良いし、学校に来るでも良い。休んだとしても欠席扱いにはしないよう、こちらも配慮する。それから、匠くんの成績についても現状のまま保証しよう」
「わかりました」
帰るバスで叔父さんに話をすると、どうやら最近たっくんが夜遅い時間にバスを使っていたことも判明していたの。
「あーなんかね、たくみがここ最近19時とか20時に高校から家までバス乗るんだよ」
「えっ!?」
「そう、たくみが1人で乗って、無言で降りちゃうの。どうしたもんか最近心配でなぁ」
「そうなんだ・・・」
あれから私たち3人は毎日たくみの目の前でスカートをひらりと広げたり、脚を上げて踊ったり、ポンポンを思いきり鳴らしながら1日1回踊っていた。
「チアのスカートの中見えるのほんと怖い」
「いいじゃん。愛央の下着が見えるより」
「まぁそらそうなんだけどよ」
1ヶ月後、たくみは精神的に学校へ行けるような体力に戻った。私と瀬奈はいけるようになってから少しチアを封印して、ただただサポートをしていたのだった。
あれから半年、たっくんは頑張っていけるようになっていた。あいちゃんも、保育園に行きながら時々学校にもついて行っている。私も瀬奈も、たっくんのために頑張っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます