第四章
「陛下、ヒエルランドで我が兵に偽装した相手の詳細が解りました。ルフテンブルグ兵ではありましたが、正規軍ではなくヴェルヘイムの雇った傭兵部隊でした」カエサルが信頼する臣下である宰相の報告書を受け取り、目を通した。そこには断片的ではあったがルフテンブルグ領内にある傭兵会社の社員と一致する情報があった。社員ととは言っても正規雇用ではなく非正規雇用であった。元よりヨーロッパに触手を広げているこの傭兵会社は奴隷商から通常の配送業、そして傭兵派遣を請け負っている会社だ。儲かっているのは傭兵派遣だそうだ。ヨーロッパは常に戦争しているような地域だ。王国同士の争いから民族紛争が多いのは多民族を束ねた王国が多いからである。そして近い地域で工業系国と魔法国家が隣り合うせいで、戦争が絶えない。しかもアメリカとは違い、純粋な工業ではなく魔法族が少数居るような国家もあり、その中でアフリカはヨーロッパ大陸と面して居ながら内部にはシャーマン(祈祷師)も居る工業国と少数の魔法族の多民族国家である。
アメリカ民族はこの紛争に生活を追われた民族がオーストラリアやアメリカ大陸に逃れた非魔法族の国家である。オーストラリアではアボリジニー、アメリカではインディアンなどの先住民が居たが、あろうことか非魔法族は彼らを根絶やしにしたり、奴隷にしたりとしたことから自身が虐げられていた歴史的悲劇を彼らにもしていた過去があり、そしてそれを正当化するような歴史教育をしていることから、全ての魔法国家からは軽蔑されている。
魔法国家は過去の非情な歴史手段も魔法族の身分的な価値観と魔法族としての危機感から非魔法族の迫害も正当化しつつも、その歴史を隠したりはしない。これは魔法族にとってその歴史は正当であるからで、魔法族の行動理念は全て伝統に依存するからだ。だから諸君ら読者世界の日本のように韓国や中国に配慮するという概念がこちらには存在しない。
こちらの日本もまた他国に配慮しなければならん理由が分からぬ。腑抜けな民主主義の政府ではなく、王を擁立した政府思考の日本国に置いて、旧公家や士族の発言力に加えて、民族主義の政党が居る日本国で、その周辺国より日本の利益にならん政策をしようとする思考すらないのだ。
例えそちらの中華の国のように処理水の海洋放出に対しても、他国に配慮する価値観を持っていないのだ。あるのは将来的漁業影響への配慮くらいであり、無根拠の海外の批判など考慮に値すらしないのだ。
馬鹿相手にいちいち相手にするほど、こちらの日本はそちらの日本のようにお人好しではない。
勘違いしないでほしいのは、これを書いている私もそちらの日本出身者ではなく、こちらのヨーロッパ世界のルフテンブルグ王国民であり、いち新聞記者であるからこのように小説を書くのであって、例えこちらの非魔法族のような生活と身分を与えられようと、魔法族である価値観は変らぬ民族であるからだ。
だから、そちらでいかに私が迫害されようとも、魔法族である誇りが変らぬ記録を書き続ける。
私にとってこの書物はネットにしか記録されぬ、記事であろうとも私にとっては紛れもない事実である。
さて、物語に戻ろう。
「ヴェルヘイムとはビスマルコの息子であったか」
「如何なさいます、陛下」
「我が国の名を借りて戦争の火種を誘発しようとしたのだ。愚行の代償を払って貰わねばなるまい」
「では、ルフテンブルグに宣戦布告を?」
「その前に飛行軍艦と戦車部隊を集めよ。数日ヒエルランドの顔を立ててやれ。それでもルフテンブルグが我が国への非礼を詫びぬのねあれば、奴の息子を叩き殺すまでよ」
「かしこまりました陛下」
宰相は多少慈悲を示したカエサルに礼をした。
もちろんカエサルもルフテンブルグに対して許す気などなく、当然国家ごと滅ぼす気でいたし、ヴェルヘイム自身も立ち向かう気で居る。
サディストしかしないこの世界において非礼を行った国家への滅亡作戦は普通である。ウクライナに侵攻するロシアを批判するような暇な国家はこの世界には存在しない。戦争を回避できなかった国が悪い。侵攻される国家が悪い。
自己責任が横行する世界において戦争とはそのような価値観だ。
逆に言えばアメリカとの戦争に敗北した日本で、アメリカを批判する国は居ない。徹底して勝った国は正義である。
もちろん負けた国は復讐で戦争することをこの世界では否定しない。だが、する事を愚かだと考える価値観はこの世界にもある。
要約すれば私はこう言いたいだけであり、これは私の価値観である。
核の傘に甘んじる奴隷国家の申し子である気持ちは元よりない。
これは戦争が最後の解決手段である世界から来た私の意見だ。対話を前提とする読者世界の日本を否定するものではない。それこそ、理想である。が、へりくだる無価値を知らぬ事は愚行である。負け犬根性を叩き直さぬ限り、国家は衰退する。
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