第4話 あらためて、ステータスってなんですか
正面から迫り来る赤色の光と、それを迎え撃つ青色の光。
二つの光はお互いを打ち抜こうとまっすぐに突き進み、互いに触れ合った直後。
――キィンっ
甲高い音をたてて、同時に消失した。
続いて、ジュっという湿った音とともに、あたりに白煙がたちこめる。
……白煙? 違う。霧だ。
冷やされた水滴の粒につくられた、インスタントの雨雲。
煙幕のように一瞬で広がって視界を覆ったそれは、すぐに風に流されて溶けるように消えていった。
――徐々にひらける視界の奥で、ひらひらとこちらに手を振っている姿が見えた。
遠くからこちらにひょいとおどけてみせると、悠然と去っていく。
それを追いかけるように、取り巻きの男女が慌てて後についていった。
「街中で、なんてことを……!」
ツカサの声が怒りに震えている。
今の行いがよほど腹に据えかねたのか、顔色はほとんど蒼白になっていた。唇をきつく噛みしめて、トールの去った方角を睨みつけている。
俺はといえば、目の前で起こった出来事に目を白黒させるだけだった。
「ナオヤくん、大丈夫?」
「え? あ、ああ……」
言葉が上手く出てこない。
深呼吸をうながされ、何度か繰り返すように少し気分が落ち着いてきた。
「……今のが、【魔法】なのか?」
「ええ」
苦々しく、ツカサがうなずいた。
「魔法は街中では使わないように言われているの。攻撃魔法なんてもってのほか。それを、あんなに堂々と使うだなんて……」
「さっきの奴は、転移者? 日本人っぽい名前だったけど」
「タギシトオル。トールって呼ばれてるわ。若いけど、転移者としてはだいぶ前にこっちにやってきてて、かなりのベテランってところ」
ベテラン。
それだけ強いってことか。
「ツカサさんよりも強い?」
ツカサはきょとんとした顔で俺を見た。
苦笑する。
「うん。一対一じゃ、まず敵わないかな。……実はね。私って、あんまり戦うのとかって得意じゃなくて」
恥ずかしそうに言う彼女に、俺は意外な気がしてしまう。
なんとなく運動とか得意そうに見えるのに。
そう言うと、ぶんぶんと勢いよく手を振って否定されてしまった。
「全然そんなことないよ。球技とか超苦手だったし」
「そうなの? それじゃ、部活とかやってなかったんだ」
「あ、部活はね。入ってた。陸上部」
……それはまた、意外というか、逆に似合ってるというべきか。
俺が判断に困っていると、ツカサがジト目になってこちらを見た。
「なぁに、その間は。これでもけっこう速かったんだからね。短距離の地区代表にだってなったんだから」
「おお。そりゃ凄い」
凄いでしょ、と胸を張ってから、彼女はふぅっと息を吐いた。
さっきまでの張り詰めるような表情が少しだけ、いつものやわらかい感じに戻っている。
「……なんだか、気が抜けちゃった。ナオヤくんって、相手をリラックスさせる才能あったりしない?」
残念ながらそんなのは初耳だ。
俺は肩をすくめてみせたが、ツカサは納得していない様子だった。
「そっかなあ。絶対、才能あると思うけどなぁ」
「そりゃどうも。ってか、そんな才能があっても意味なくないか?」
「えー。そんなことないよ。めちゃくちゃ重宝されるってば。寝るときに近くにいてほしいもん」
「扱いが抱き枕なんだよなぁ」
できれば、リラックスされるよりはドキドキされたいんだけどな――とは、思っただけに留めておいた。いい自制心だ、俺。
「ふふ。じゃ、ちょっと急ごっか。寄り道しちゃったから遅くなっちゃった」
「ああ、わかった」
二人して早足で、宿屋へと急いだ。
◇
到着した先で、俺は意外な人物と再会することになった。
「あらあら」
口元に手をあてて驚いているのは、俺がこの世界にやってきて初めて会話した相手。
上品で親切なお婆さんの、ユノさんだった。
また会えたらなんて思っていたら、まさか本当に会えるなんて。しかもその日のうちに。
「……どうして、ここにユノさんが?」
「どうしてと言われると困ってしまいますね」
ユノさんはおっとりと微笑んで、
「ここはわたしのお店なんです。ですから、ここにいるのは仕方ないかもしれませんね」
この宿屋が、ユノさんの店?
「はい。といっても、昔はちがうお仕事をしていたんですけどね。主人が死んで、引き継ぐことにしたんです」
さらりと故人のことを言われ、答えに詰まってしまう。
こういう場合、なんて返せばいいんだ? あっちの世界に倣えばいいのか?
「ええと、……ご愁傷様です。って、こういう言い方でいいんでしょうか。すみません、こっちの慣習がわからなくて」
とりあえず、気持ちだけでも伝わればいいだろう。
ユノさんは目をまばたかせてから、クスクスとおかしそうに笑いだした。
「ナオヤは、やっぱり変わっていますね」
「……はあ。そうでしょうか」
それで、とユノさんが上品に首をかしげてみせる。
「どうして、ナオヤがここにいるんでしょう。確か、組合の建物まで一緒に行きましたよね?」
俺とツカサは顔を見合わせた。
目線でアイコンタクト。
俺が、よろしく、と丸投げして、引き受けた、とうなずいたツカサが重々しく口をひらいた。
「実は――」
ツカサの説明は簡潔で、そのうえ明瞭だった。
多分、俺が事情を話したよりよっぽどわかりやすかっただろう。
眉をひそめて話に耳を傾けていたユノさんは、俺のほうを気の毒そうに見やって、「大変でしたね、ナオヤ」と労わってくれた。
「ナオヤくん、どこにも行く宛がないんです。それで、しばらくの間だけでもこの宿で引き受けてもらえないかなと思って、連れてきたんですけど……」
お伺いを立てるように、ツカサが両手をあわせている。
それに対するユノさんはしばらく考え込むように口元に手をあてて、
「ナオヤが【ステータス】を見ることができない、というのは確かなのですか?」
二人からの視線がこっちに集まる。
他人事のように話の推移を見守っていた俺は、あわててうなずいてみせた。
「あ、はい。他人のステータスも、自分のステータスを確認することもできません」
「それに、スキルを使うこともできないみたいなんです」
「……スキルを?」
「はい。私たちは、ステータスからスキルの使用に繋げているので。そのことも、ユノさんに相談できたらなって」
なるほど、とユノさんは目を閉じた。
「確かに、あちらの方々のスキルの使い方と、こちらのスキルの使い方では違いますからね。感覚の部分で、なにか伝えられることはあるかもしれません」
「ですよね!」
「……わたしとしては、ナオヤをここに留めておくことには問題ありません。人手があるのは助かりますし、ナオヤの人柄はわたしもわかっていますから」
ツカサの顔がぱあっと輝いた。
「本当ですか? ……よかったあ」
ほっと肩を撫でおろしかける彼女に、ただし、とユノさんが穏やかな微笑を向ける。
「ただし、わたしやツカサがよかったとしても。ナオヤのほうがいいと思うかどうかは、また別です」
……俺?
「ええと、俺ですか?」
「ええ、そうです」
「……正直言って、自分にそんな選択肢があるとは思ってないんですが」
ステータスは見れない。スキルも使えない。
どこの誰にでもいいから拾ってもらえないと、待ってるのは野垂れ死にくらいのように思える。
「そうではありませんよ、ナオヤ」
やわらかく、ユノさんは俺の意見を否定した。
「選択肢は常にあるものです。自分で『ない』と思い込んでいるだけ。そのことを、若い人は覚悟と言ったりしますが……知らずに決めつけてしまっては、ただの妄執と違いはありません」
長い人生を過ごしてきた人間だけが持ち得る、深くて、静かな厚み。
反発したくなる気持ちごと包み込まれてしまうような不思議な説得力で、ユノさんは言った。
俺からツカサに視線を移して、
「ツカサ。ナオヤには、わたしたちのことや、わたしたちの周囲を取り巻く状況について説明したのですか?」
あ、とツカサが声をあげた。
「……すみません。まだでした」
「それでは、ナオヤも容易に決めることはできないでしょう。まずはそのあたりをきちんと話しておく必要があるのではないですか?」
はい、とうなずくツカサ。
心なしか、しゅんとしてしまっている彼女に、ユノさんはくすりと笑って、
「ナオヤ」
「はい」
ユノさんが今度はこちらを振り向いた。
穏やかな、それでいて芯の強い眼差しでひたと捉えてきて、
「もう日も遅いですから、今日は泊まっていくといいでしょう。疲れているでしょうから、お風呂に入って、お夕飯を食べて。そして、お話しましょう。この世界のことや、あなたのこと。あなた自身がどうするかを決めるのは、それからでよいでしょう。――二人とも、それでいいかしら?」
「はい」「……はい」
なんというか、ユノさんの前だと、自分が幼い頃に戻ったように錯覚させられてしまう。
実際、ユノさんにとっては俺たちくらいの年齢なんて、ほとんど子どもと似たようなものかもしれないけど。
俺とツカサの返事を聞いたユノさんは、よろしい、と軽く手をあわせて、
「それでは、まずはナオヤの部屋を用意しないといけませんね。ツカサ、あなたが二階に案内してもらえますか? そのあいだにお茶を淹れておきますから、すぐに降りてきてくださいね」
老齢の婦人は、にこりと微笑んだ。
◇
「あ、普通にいい部屋じゃん」
案内された部屋は二階の奥から一つ手前。
ビジネスホテルのシングルルームくらいの面積で、決して広々とまではいかないけれど、寝起きするのには十分な空間だった。
もしかしたら、今夜は野宿しなきゃいけなかったかもしれない身の上なのだ。
贅沢を言ったら罰が当たるってもんだろう。
「うん、いい部屋でしょ。南側だから日当たりもいいし、景色もいいから外も見てみて?」
扉のところからツカサに言われて、さっそく窓際に寄ってみる。
ガラスではなくて木製の扉がついた窓を一気に押し開けると、
「おおー」
そこから広がる景色に、思わず声が漏れた。
遠くまで広がる街並み。
ほとんどの建物が二階建て未満で、だからこそ、それ以上の高さのある建物があると異様に目立つ。
中央には広場のような空間があって、そこから広がるように建物が密集している。
そのなかをゆるやかに弧を描くように、大きな河川が弧を描いていた。
驚いたのは、地平線のあたりまで視線を飛ばしてみても遠くに山が見えないことだ。
どうやら、このあたりは随分となだらかな立地らしい。
そして――空に浮かぶ、ふたつの太陽。
かなり低い位置まで落ちてきたその存在が、異国情緒あふれる光景に決定的な印象を加えている。
……こういうのを、幻想的と言うのだろうか。
「ファンタジーだなぁ」
まさに文字通りの感想をつぶやいていると、くすくすと背後からツカサの笑い声。
「俺、なにかおかしなこと言った?」
「ううん。私も、最初におなじこと思ったから。一緒だなって」
まあ、そうだろう。
こんな光景を見れば、大抵の人間は似たような感想を抱くだろうな。
それくらいには圧巻の風景だった。
しばらくそれを眺めているうちに、あらためて自分が違う世界にやってきたという実感が沸いてきた。
息を吐き、振り返る。
扉の前のツカサに、俺は深々と頭をさげた。
「――ありがとう」
「え? いきなり、どうしたの?」
びっくりしている相手に、
「いや。あらためてお礼を言っとこうかと思ってさ。ツカサさんと出会えてなかったら、どうなってたことか」
少なくとも、こんな部屋に泊まれることにはなっていなかったはずだ。
彼女は俺の恩人だ。
その気持ちをしっかりと本人に伝えられていなかった。
改めてお礼を言うと、ツカサは照れたように頭を振った。
「そんなの、気にしないでいいってば。私が勝手にしたことだし――」
それに、と続ける。
表情に自嘲的な感情が浮かんでいた。
「こっちこそ、さっきはごめん。勝手に先走っちゃった」
さっき?
ああ、一階での話のことか。
「別に、先走ったわけじゃないだろ? 俺のほうが、世話になりたいって言ってたわけだし」
「そうじゃないの」
ツカサは頭を振って、
「ユノさんが言ったとおりだわ。きちんと説明しておかないといけなかったのに、子どもみたいに浮かれちゃってて。……反省しないと」
知らなかった。浮かれてたのか。
同郷の人間がやってきたことが、そんなに嬉しかったんだろうか。
……そういえば、年齢が近い相手は久しぶりって言ってたっけ。
同郷者の転移者なら一人いるはずだが、あっちは仲良くできそうな感じじゃなかったしな。
「私は、自分の都合にナオヤくんを巻き込んだだけだから。お礼を言われる立場なんかじゃないの」
ツカサが言った。
その表情には暗い影が落ちていて、俺は顔をしかめた。
「……よくわかんないけどさ。俺が助かったのは間違いないわけだし。それじゃ勝手に感謝しとくよ」
それでいい?
視線で相手に訊ねると、彼女は綺麗な眉を困ったように寄せてみせて、
「……ん。わかった、――ありがとう」
彼女の表情はまだ晴れない。
もう一言、二言、なにかを言いかけようとしたところで、階下からユノさんが俺たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ、お茶がはいったみたい。行きましょ」
気分を振り切るように、ツカサが明るい声で言った。
表情もようやく普段のそれに戻っている。
ただ、廊下を歩いていく後ろ姿はどこか頼りなく思えて、俺は眉をひそめてその姿を見送った。
◇
ユノさんが淹れてくれたお茶は美味しかった。
元の世界で飲んでいたような緑茶や紅茶とは違う。多分、ハーブティだと思うのだが、詳しくはわからなかった。
三人でテーブルを囲んで、しばらく雑談に花を咲かせる。
話が真剣な方向に進んだのは、俺が三杯目のおかわりをお願いしたあたりのことだった。
「――【ステータス】。そう呼ばれるモノについては、わたしはあまりわからないのよね」
優雅な所作でティーカップを口に運びながら、ユノさんが言った。
「そういうものが存在していることは知っているし、何度も説明を受けてはいるのだけれど。どうしても、実感できないの。自分の頭に、そういうのが浮かんでいるだなんて……」
困惑するように、頬に手をあてるユノさん。
まったくもって俺も同感だったから、俺は大きく同意のうなずきを返しながら、
「正直に言うと、自分もちょっと。……ピンと来なくて。まあ、見えてないからなんでしょうけど」
「そうでしょう? だから、それについてはやっぱり、見えている側の立場から聞いた方がいいと思うの」
どうかしら、とユノさんに訊ねられたツカサがうなずいた。
手にしていたティーカップをテーブルに置いて、目線をあげると、
「……ナオヤくんって、向こうの世界にいるときにゲームとかしてた?」
「ゲームって、ソシャゲとかそういうやつのこと?」
「うん。RPGとか、そういうの」
「ああ、そっち系か。昔はよくやってたけど、最近はやってないなぁ」
せいぜい、スマホゲーを触るくらいだ。
それも知り合いから誘われて付き合いでやってただけで、ハマってやってるわけではない。
高校生までは、けっこう熱中して徹夜したりもしてたけど。
「……この世界のことを、組合の人たちは『ゲーム世界』って言ってた。ゲームみたいだからって」
まあ、街の風景とかはだいぶゲームっぽくはある。
「そうじゃなくてね」
ツカサが頭を振り、「『
羽根ペンというやつだろうか。
ペンの先にインクをつけ、メモ帳になにかを書き記していく。
【NAME】名前
【LV】レベル
【EXP】経験値
【EFP】効率値
【RACE】種族
【SEX】性別
【AGE】年齢
次々に羅列されていく単語。それらを一目見て、すぐに既視感に襲われた。
なるほど、とため息をつく。
「たしかに、ゲームみたいだな」
メモ帳に書かれてた単語は、いわゆる「ゲームでよく使われる単語」だった。
ただ、【EFP】という略語には聞き覚えがない。隣には効率値と書かれていたが、意味がよくわからない。
【JOB】職業
【CLAN】所属
【CLASS】属性?
【ALLIGNMENT】指針?
【ELEMENT】要素?
【BRAVE】勇気?
【FAITH】信仰?
このあたりの単語には、あまり覚えがないものもあった。
特に、指針から先の単語は彼女自身も解釈に自信がないのか、隣にハテナマークが添えられている。
【HP】体力
【MP】魔力
【SP】スタミナ
最後に書かれたのが一番、俺にとっては馴染み深かった。
HPやMPあたりは、あまりゲームをしない人間にだって認知されてるくらいだろう。
最後の三つを書ききって、ツカサはペンを置いた。
「……これが、『基礎ステータス』って呼ばれてる項目。私や、私たちから見ると、みんなの頭のうえには、これが載った画面みたいなのが浮かんでるの」
道行く大勢の人の頭上に無数の画面が浮かんでいるのを想像して、顔をしかめた。
頭が痛くなりそうだ。そのうち慣れるのかもしれないが。
「基礎ってことは、これ以外にも?」
「うん。本当は、もっとたくさんの項目があって。身長とか体重とか。……もっと個人的なことまで。そういうのは、相手と仲良くなっていかないと見えないんだけど――」
ツカサは口を濁した。
どうやら、ユノさんのことを気にしているらしい。
ユノさんは静かに話を聞いていたけれど、表情はいつもの柔和なそれではなくて、眉間に皺をよせていた。ツカサが書きつけた内容に目を落としている。
あれ?
そういえば、言葉はなぜか通じてるけど、文字ってどうなんだ?
……ツカサがユノさんを気にする理由は、俺にもわかる気がする。
異世界からやってきた人間は、他人の頭のうえに浮かぶ【ステータス】を見ることができる。
仲良くなっていけばもっと詳細な、たとえばその人の内面に関わることまで見ることができるのなら、見られる側としては愉快なわけがない。
二人のあいだに微妙な空気が流れているような気配を察しつつ、
「HPとかMPはわかるんだけどさ。このEFPってやつの、効率値ってどういう意味? CLASSとかALLIGNMENTの、属性とか指針ってのもよくわかんないんだけど」
言葉そのものの意味はわかるが、それが具体的にどういうことを意味しているのかがいまいち謎だ。
「効率値は、成長しやすさとか、効率の良さみたいな感じかな。この世界の技能や魔法には習熟度があって、効率値が高いほど早く上がるの」
習熟度。そんなものまであるのか。
「属性や要素は、その人の生き方っていうか……スタイルみたいなものかな。それが、それぞれ三つに分類されてるの。私の場合だと、CLASSが秩序、中庸、混沌の中庸になってて。ALLIGNMENTが善・中立・悪の善みたいな風にね」
へえ、面白い。
そういや、なんか昔のゲームで見たことがあるかもしれない。
たしかそのゲームでは、自分がどういう立ち位置にいるかでストーリーの展開が変わってしまうとかだったはずだ。
「……ちなみに、俺の場合はどうなってる?」
単純な好奇心で訊ねると、ツカサは俺の頭のうえをちらりと確認して、
「ええと。ナオヤくんは、――中庸、中立だって」
うーん、微妙。
「なんか、どっちつかずって感じだなあ」
「そんなことないよ」
まあ、どっちかに振り切っているよりは、真ん中あたりをうろついてるほうが性にはあってるかもしれない。
「ゲームとかだと、腕力とか体力とかもよくあるけどさ。そのあたりはどうなってるの?」
「そっちは、『個人ステータス』のほう。腕力、生命力、素早さ……他にもたくさんあるけど、そんな感じ」
聞けば聞くほどゲームっぽい世界観としか思えない。
この世界のことを『ゲーム世界』なんて呼びたくなる気持ちもわかる気がした。
「それに、私たちには【通知】が届くから。それこそゲームみたいでしょ? ほら、向こうでも、運営会社からそういう連絡が入ったりするじゃない」
「……たしかに」
「うん。だからね、最初にこの世界に来た人たちは、考えたらしいの。この世界はなにかのゲームのなかの世界か、それを模した世界で。どこかに、この世界を創った誰かかがいるんじゃないかって」
創造主。もしくは神様。
ゲーム的にいうなら、GMと表現するべきかもしれない。
「どこからか【通知】が来る以上、それを送ってくる誰かがいる。少なくとも、そういうシステムが存在しているはず……。なら、その正体を突き止めて、元の世界に帰還する方法をさがそう――そう思った人たちがつくったのが、今の組合の基になった組織なの」
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