第17話 暴走する明日
騒がしい夜が明け、王女として今回の問題に当たるためにルティアは王都へ戻った。ギンガは依頼に参加する事になったが、その前に一度ユキネとの時間を過ごすために、銀狼団とユキネを連れて拠点へと帰って行った。
そして俺達が依頼の準備をしていた時
─ドンドン!
「何でも屋さん!いらっしゃいますか!大変なんです!!」
慌しく開かれる扉の前には以前王都で会った冒険者の少年、マークが息を切らして立っていた。
「お前は…確かマークと言うのだったな。一体どうした?」
「はい、一斉にオートドールが暴れ出して王都中がパニックなんです!」
その急な知らせに、状況は一変した。
やられた。ユキネ救出の際に情報を得たのはこちらだけではなかったのだ。対峙したあの青年が倒された時点で、やつも行動を起こす手筈だったと言う事だろう。
「そうか、伝えに来てくれたのだな。エリィ!ミーナ!作戦前に一度王都へ向かうぞ」
「え、いや僕はまだお願いもしていないですが、良いんですか?」
「当然だ。それに俺達を頼ってきてくれたのだろう?ならばそれに応えるのが何でも屋≪ブラム≫だ。依頼料はそれなりに貰うから、お前もしっかりと稼ぐんだぞ」
「あ、ありがとうございます!!」
マークの表情に安堵が浮かぶ。
ではまずは王都へ向かおう。
◇◇◇◇◇
─ガシャン!
「うわあぁぁぁ!」
「きゃああー!」
王都では既に悲鳴が渦を巻いていた。俺は目の前のオートドールの群れに標的を定める。
<グリーンコマンド>
【オールハック】
「gggっppp─」
俺の魔力の干渉により周囲一帯のオートドールがその機能を停止させる。
この非常事態だ、正体がバレるリスクはあれど魔法を使うのをためらっている場合では無い。
「大丈夫。今降ろします」
「怪我人がいたら僕達の所に来てください!手当します!」
エリィは魔法を駆使し救助活動を行い。マークは冒険の相棒であるフィオと合流し、自分たちに出来ることをしているようだ。
「どうだ?何か異常は見つかったか?」
俺は停止したオートドールを調べていたミーナに尋ねた。
「それが、このオートドールに何かおかしなログが残ってたんです。ええと、多分信号を受信して暴れるように設定されてたんだと思います。今まで王都で時々暴走していたオートドールは、もしかしたら何かの拍子にその設定が誤作動を起こして暴れてたのかもしれません」
「…っ。そう言う事か」
王都に流通していたオートドールは、あの悪魔の合図があればこのように一斉に暴走するようになっていたと言う訳だ。
…【オールハック】でオートドールを止めて回るには王都は広すぎる。そこで時間を使ってしまえば、アスモデウスに逃げられる可能性もある。だが悩んでいる時間も無い。
ならば人命を優先するべき─
「何でも屋!!」
その時、ギンガが獣の如き速さで駆け寄ってきた。
「やっぱりもう人助けしてやがったか!流石アタイの…じゃねえ、ルティアからの伝言だ。『念話も使わずごめんなさい。今使うとボクとにーさまの関係がバレちゃうからギンガに伝言を託します。本当は勇者として皆を助けに行きたいんだけど、今は王女としての役割に専念するね。準備が出来たら国として宣言します。だから先にサイバネストに向かって』だとよ!ここはアタイ達銀狼団と冒険者ギルドの連中に任せて先に行きな!」
「良いのか?」
父親が関わっている事だ。本来なら、ギンガも共に行きたいはずだ。
「良いんだ。何でも屋が行く方が確実だしな。それにおやっさん達とこの騒ぎを止めたらアタイも後からぜってぇ行く!だから親父はの事は任せたぜ!」
「分かった。では後ほど会おう!」
ギンガの快活な言葉に背中を押され、何でも屋≪ブラム≫はサイバネストへと急いだ。
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