第7話 幼馴染の腕の中

:◆千咲都の部屋


:◆SE 扉が開く音



「どうだったー? シャワー、ちゃんと暖かかった?」


「そっかー。暖まってくれたなら良かったよ。ああ、その着替えねー。そんなのしかなくてごめんね。パパのシャツなんだけどさ」


「そのスウェットもお父さんので、上から下までパパ尽くしになっちゃったけど」


「うーん、やっぱりあたしの貸した方が良かった?」


「だよねー。サイズ的に無理あるよね。キミ、昔と違ってすごくデカくなっちゃったし」


「もう昔と違うんだなって、キミと並んでよくわかったよ」


「ああ、そうそう。そうなんだよ~。これね~」


「キミがお風呂入ってる間に、テン・ヨウくんコスしちゃいました~」


「まあ、あんまり時間なかったから髪もメイクも簡単モードだけどね」


「キミのおかげで、わかったかもしれないことがあって」


「あたしねー、テン・ヨウくんのコスする上で、あと一歩どーしても足りないなってところがあったの」


「それはね、体を張って坊ちゃまを守らないといけないっていう気持ちなんだ」


「さっき、キミはあたしのこと守ってくれちゃったでしょ?」


「あれで気づいたんだよね」


「あたしは、坊ちゃまを守るってことにふわっとした解釈しかできてなくて、体ごと守る気持ちを持ってなかったんだって」


「だから、ちょっとそこのベッドで寝てくれない?」


「別に変なことしないってば!」


「キミ、あたしのコスプレに協力してくれるって約束したよね?」


「それなら、あたしの言う通りにしてくれてもいいんじゃないかなぁ」


「うんうん、そうだよね。そういう優しいところ、好きだなー」


「ささ、じゃあベッドにどうぞ」


「え? あたしがいつも使ってるベッドだけど?」


「まさか匂いとか気にしてる……?」


「く、臭くないから安心してよ!」



:◆SE ベッドが軋む音



「そうそう。寝転がってるだけでいいからね」


「もう少し壁側に寄ってくれる?」



:◆SE ベッドが軋む音



「それでね、これからあたしは、キミをこうやってぎゅってしてね」



:◆声 イケボモードの千咲都・開始


:◆声 囁き・開始



「どうです? 守られている気分になって、落ち着きますか?」


「おや、坊ちゃまの鼓動が早いようですが」


「ぼくに抱きしめられて、緊張しているんですか?」


「困りましたね。ぼくは、坊ちゃまに安らぎを与えたかったのに。そう緊張されると、困ってしまいます」


「これは……もうぼくの体に慣れてもらうしかないみたいですね」


「もうしばらく、坊ちゃまに触れていることにしますね」


「だから坊ちゃまも、ぼくの感触に慣れてくださいね?」



「 (一分ほど耳元で呼吸音) 」



「どうです? ぼくの体に慣れてきました?」


「ぼくの体のことは、自分の体と同じと思ってくれていいですからね」


「いっそのこと、坊ちゃまの体とぴったり一つにくっついてしまいたいくらいです」


「おや、だいぶ落ち着いていたのに、また鼓動が落ち着きをなくしてきてしまったようですね」


「一体なにを考えていたんです?」


「ふふ、ここは坊ちゃまの名誉のために、深く追求しないことにしておきましょう」


「ぼくは坊ちゃまをからかうのではなく、守ることが仕事ですからね」


「いえ、仕事というより、使命ですが」


「では坊ちゃま、安心してぼくに身を委ねてくださいね?」


「坊ちゃまが落ち着くまで、ぼくがずっとぎゅってして差し上げますから」



「 (一分ほど耳元で呼吸音) 」



:◆声 囁き・停止


:◆声 イケボモードの千咲都・停止



「うーん、なんか眠くなってきちゃった……」


「これ、あたしの方が安心しちゃってるってことぉ?」


「ていうか、キミの方が先に寝ちゃってるじゃん」


「ふふふ、寝顔はいくつになっても変わらないんだから」


「よっし! 今のうちに……と」


「まだまだキミには、頼みたいことがあるんだからね」

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