第5話 ヘアセットと霧吹き

:◆SE 洗面所。蛇口から水が流れる音


:◆顔を洗うリスナー


「おー、洗ってる洗ってる」


「ふふふ、いいじゃん。ちょっとくらい見たって。キミがちゃんと顔洗ってるかなーって気になったんだよ」



:◆SE 蛇口を閉める音



「あれ? 終わり?」


「まだ寝癖ついてるよ? なんかFFのキャラみたいにツンツンだけど、キミって別にそういう髪型じゃないよね?」


「あー、そのまま行こうとしないの!」


「キミってたまーにツンツンヘアで学校に来ることあったけど、寝癖だったんだね。おしゃれかと思って突っ込まないでおいたけど、寝癖だったなら話は別だよ~」


「ほら、ちょっと屈んで」


「まだ時間あるし、直してあげるから」


「キミは座ってるだけでいいんだし、これくらいいいでしょ?」


「そうそう。幼馴染に起こしてもらった上に、寝癖まで直してもらえるなんて、こんな幸せなことはないんだからねー」


「じゃ、この霧吹き借りるね」


「しゅっしゅってしちゃうよ~」


「右から左、左から右って感じでしゅしゅってかけちゃうからね~」



:◆SE 30秒ほど、じっくり霧吹きのポンプ音



「どうかな? しっとり冷たくて心地いいんじゃない?」


「いい感じにしっとりしてきたから、次はヘアブラシで髪を梳かしてあげるね~」


「すーっと、丁寧に髪に通しちゃうよ~」



「 (30秒ほど呼吸音) 」



「たまにこうして、霧吹きでしゅしゅっと」



:◆SE 10秒ほど霧吹きのポンプ音



「そしてまた、ヘアブラシで通しちゃいま~す」


「ふふふ、なんかこのキミをお世話してあげちゃってる感じ」



:◆声 イケボモードの千咲都・開始


:◆声 囁き



「ぼくが、坊ちゃまにいつもしてあげてるのと似てませんか?」


「でも、ぼくはヘアブラシを使いたくありませんね」


「坊ちゃまの繊細で大事な頭に寝癖がついていたら、よく濡らしたあとに、こうして撫でて直したいですから」



「 (30秒ほど呼吸音。髪を撫でつけて直そうとする) 」



「なでなで」


「坊ちゃま、これ好きですよね?」


「否定しても、表情に出てしまっていますよ?」


「坊ちゃまの顔、とろとろですから。わかってしまいます」


「鏡がウソをついているというのなら別ですが」


「寝癖がずっと直らなければいいのに、と考えてませんか?」


「坊ちゃまが望むのでしたら、たとえ寝癖を直す意図がなくても、いつでも撫でて差し上げますよ?」


「ふふ、そういう安心した顔をされてしまうと、ぼくは本当に愛しく思ってしまいますから」


「おや、こちら側の髪の毛がまだ跳ねたままでしたね?」


「もちろん。こちらもぼくの手で、しっかり愛おしくなでなでして差し上げますよ?」



:◆SE 10秒ほど霧吹きのポンプ音


「では、じっくり直してあげますね」



「 (30秒ほど呼吸音。髪を撫でつけて寝癖を直そうとする) 」



「坊ちゃまのとろっとろの顔を見るのが、ぼくの一番の楽しみになってしまいそうです」


「坊ちゃまの場合、口よりお顔の方がずっと正直ですからね」


「お口も体も、ぼくの前では、ずっと正直でいてください」



:◆声 イケボモードの千咲都・停止



「はい、もう寝癖直しはバッチリだよ!」


「えー、俺はいつもこんなサラサラストレートヘアじゃないって?」


「いいじゃん、たまには」


「キミの髪の毛は元々サラサラで綺麗なんだから、そっち方面で押し出して行こうよ!」


「コスプレじゃないけど、キミはもっと坊ちゃまにキャラ寄せちゃうといいと思うなぁ」


「坊ちゃまなキミ、けっこう可愛いし……」


「な、なんでもないよ! 遅刻しちゃうし、早く学校行こ!」

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