第3話 イケボ執事とティータイム

:◆部室内


:◆声 イケボモードの千咲都・開始



「坊ちゃま。もうすぐお茶の用意ができますよ」



:◆SE 紅茶をカップに注ぐ音



「はい、どうぞ。ああ、でも熱いようでしたら、ぼくが冷ましましょうか?」


「もちろん、ぼくの吐息で、ですよ」


「坊ちゃま、猫舌でしたよね?」


「坊ちゃまの大事な舌が、火傷されては困りますから」


「はい。ぼくにお任せを」



:◆SE カップに向けて何度か息を吹き込む



「これでだいぶ冷めたはずですよ」


「ためしに一口どうぞ?」


「ぼくの吐息混じりですが」※囁き


「ふふ、こういう言い方をされては困りますか?」


「……」


「ああ、そうですか。ほどよく冷めていたようで、良かったです。坊ちゃまの舌が火傷することがなくて」


「もし火傷してしまったら、どうやって坊ちゃまの柔らかくピンク色の舌をお手当するか、考えないといけないところでしたから」


「いくつかお手当てのアイディアはあったのですが、聞きたいですか?」※囁き


「何を挙動不審になっているんです?」


「ぼくは何も、おかしなことを言ってませんよ?」


「……ちょっとキミ、坊ちゃまのキャラはそんな挙動不審じゃないんだよ~? もうちょっと堂々としてくれないと、あたしもキャラ作りに困っちゃうよぉ」※通常時の千咲都の声・小声


「こほん」


「ふふ、坊ちゃま。いい飲みっぷりですね」


「紅茶のお茶請けに、クッキーはどうです? 向こうの戸棚に置いてありますので、取ってきますね」



:◆SE 遠のく足音


:◆SE 戸棚を開ける音


:◆SE 近づく足音



「どうぞ。箱は開封済みですが、個包装のパックですのでシケってはいないはずです」


「……」


「……坊ちゃまは、本当にいい音を立ててお召し上がりになりますね」



:◆声 食欲に耐えきれず息を呑む千咲都



「ぱくっ」



:◆SE 咀嚼音


:◆声 イケボモードの千咲都・停止


「あっ、うんまぁ~」


「だ、だってぇ、キミがあんまりおいしそうに食べてるんだもん!」


「あーあ、テン・ヨウくんは、坊ちゃまのクッキー勝手にぱくぱく食べちゃうキャラじゃないのに~」


「もう。キミのせいだよ」



:◆SE 20秒ほど咀嚼音



「だ、だっておいしいんだからしょうがないじゃん!」


「食べる手が止まらないんだよ~」


「もういいや。今日はこれからおやつの時間!」


「お気に入りのカップにお紅茶いれちゃおーっと」


「はあっ! 右京さん式お紅茶煎れ!」



:◆SE ポットをやたらと高く持ち上げてカップに紅茶を入れる音



「わ、飛んだ? ごめんごめん。あ、大丈夫だった? よかった」


「そそっかしい? そそっかしくないよー。キミの気のせい」


「だって今のあたしはね、テン・ヨウの性格をトレースしてる最中なんだから! テン・ヨウくんを通して、冷静なあたしがスクスク育ってる実感があるんだよね!」



:◆SE カップを手に取る音



「じゃ、お紅茶いただきまーす」


「あちっ!」


「わ、忘れてた……あたしも猫舌だったんだ……!」


「舌がヒリヒリする~」


「わ~ん、舌先冷まして~。キミがここにふーふーしてよ~」


「えっ、してくれないの?」


「いーじゃん、してよ~。ふーふーしてぇ~」

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