第2話 イケボで惑わされる

:◆SE 部室の扉に鍵がかかる音



「はい」


「今からここは、『うん』って言わないと出られない部屋になりました」


「ほら、言っちゃいなよ。『はい』か『イエス』か、『今日もちぃちゃんはかわちいね!』か!」


「最後の別に関係ないよ」


「ついでにちょっと褒めてもらいたかっただけだから!」


「ていうかキミ、昔はあたしのことちぃちゃんって呼んでくれたのに、最近は全然じゃん~」


「高校生になってから、なんかちょっと冷たいよね?」


「わかったよ~。じゃあキミの好きなやつやってあげるから。そしたら、イベントの付き添いで来てくれるよね?」



:◆声 イケボの千咲都の囁き・開始



「坊ちゃまは、こっちの方がお好きなんですよね?」


「言ってくださいよ、坊ちゃま?」


「ぼくに付き合ってくれたら、坊ちゃまにだけ、いつでもこうしてあげますよ?」



:◆声 くすっ、という笑み



「そんなに顔を赤くして。照れていらっしゃるんですね。今の坊ちゃまは、まるで可憐なお嬢様のようですよ?」


「そんな坊ちゃまも大好きですけど」


「ぼくは、坊ちゃまのためならなんだってしてあげたい気分になってしまいますから」


「ぼくがそばにいれば、たとえ東京だって一緒に行くのに何の不都合もないですよね?」



:◆声 イケボの千咲都の囁き・停止



「え? 『九龍クーロン執事』の舞台に東京関係あるのって?」


「いや、ないけどさぁ。原作にはないけど、そこは坊ちゃまの日本外遊編があると思って。ツッコミはナシだよ~」


「ねー、いいでしょ? こうやってこれからは、キミ専用に、テン・ヨウ執事役としていーっぱい囁いてあげるから~」


「テン・ヨウくんは厳しいフリをしていても坊ちゃまが大好きだから、すっごく甘やかしちゃうんだよね! ほらほら」


「この声で、甘やかされてみたいと思いませんか?」※イケボで囁き


「ふふふ。ほーら、すぐ顔がとろけちゃうんだから」


「付き合いが長いあたしには、すぐわかっちゃうんだからね?」


「え? うんうん、もちろん! 遠征の時はちゃんと大人しくしてるって!」


「やった! ありがとう!」


「じゃ、イベント本番に向けて、一緒にテン・ヨウくんを作り上げていっちゃお?」

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