声が可愛いコスプレ好き幼馴染が、執事コスにハマってイケボで俺を惑わせてくる。

佐波彗

第1話 コスプレ大好き幼馴染のお誘い

:◆SE 部室の扉が開く音


:◆声 イケボの千咲都ちさと・開始



「ようこそ。コスプレ部へ」


「坊ちゃま、少しお待ち下さいね。お茶の用意をしますから」


「それまで、こちらのお席へどうぞ」



:◆SE パイプ椅子を引く音



「おや、座らないんですか?」


「妙な顔をして。どうなさいました?」


「えっ? 違和感が凄いから、いつもの声に戻れって? ふふ、坊ちゃまはワガママですね。いいでしょう。坊ちゃまが一度言い出したら聞かないのは、重々承知ですから」



:◆声 イケボの千咲都・停止



「はーい、いつもの千咲都ちさとちゃんだよ~」


「てか、そんな変だった?」


「身も心もイケメン執事になりきれるように頑張ったんだけどなー」


「ん~、違和感持たれちゃうってことは、やっぱりまだまだ完成度が低いってことかー」


「今回のコスしたキャラ? 知らないの~? 『九龍クーロン執事』のテン・ヨウくんだよ。原作はアニメ化も舞台化もされてて超有名なのに。あれ? キミに漫画貸したことあるよね?」


「えー、あんな大名作読んですぐ忘れちゃう? わかったよ、また貸すから。今度こそちゃんと読み込んでよね」


「キミにも、『九龍執事』はちゃんと履修してもらわないと困っちゃうんだ」


「ほら、知っての通りあたしって、コスする時はキャラクターの内面まで正確に掬い取りたい方でしょ?」


「まず内面を理解してないと、そのキャラクターになりきれないもんね」


「だから、キミの目から見て、テン・ヨウと違うくね? って思ったらすぐ指摘してほしかったんだよ。どれだけ気をつけてても、自分一人じゃわからないことってあるから」


「でもー、原作覚えてないならしょうがないよねー。あーあ、アテが外れちゃった」


「ああ、声? ふふ、あたしってああいう低い声も出せちゃうんだよね」


「脳みそが溶けちゃいそうな可愛い声を聞いてるキミからすれば、びっくりしちゃったかもだけどー」


「実家の声じゃないよ! キミだって、あたしがママとかパパの前でも今みたいに可愛い声なの知ってるでしょ? 風説の流布はダメだよー」


「でも、結構ドキドキしちゃったんじゃない?」


「隠さなくていいんだよ~?」



:◆声 イケボで囁く・開始



「どうなんです? 坊ちゃま」


「ぼくにして欲しいことがあれば、なんなりとどうぞ。ぼくは、坊ちゃまに拾っていただいた恩を一生忘れはしませんので」


「坊ちゃまのためなら、なんでもしてしまいますからね?」



:◆声 イケボで囁く・停止



「なんてね! どう? 男の子っぽく聞こえちゃう?」


「そうだよね。幼稚園からの腐れ縁のキミがびっくりしちゃうくらいだもん」


「うんうん、それが縁で、キミをこのコスプレ部に引っ張り込んだんだもんね!」


「人数不足で潰れそうなところを、キミが入ってくれたおかげでこうして続けられてるんだから、そのことにはホントに感謝してるんだ」


「だからね~、この際だしあたしのお願い聞いてくれてもいいでしょ~?」


「マコスタって知ってる? 都会でやってる大きなコスプレイベントなんだけど」


「あたし、それに出たいの!」


「完璧なテン・ヨウくんになって、コスプレイベントデビューをしたいんだよね」


「だからね、キミには、一緒に完璧なテン・ヨウを作り上げるパートナーになってもらうのと、あとあと~、イベントの付き添いをしてほしくてね?」


「えっ?」



:◆声 以下、半泣きで



「こ、断るってなんで!? 一緒に都会行こうよ~」


「キミが『うん』って言ってくれないと~、ママの許可が降りないんだよ~!」

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