召喚? なんか遠くで光ってるだけじゃん

 旅は変化の連続だ。

 風景は変わるし、嬉しい出会いもそうじゃないものも多々あるのがまた良い。


 そんな非日常的な日常があるから、冒険は刺激的な日々だ!



 ……そう考えてた時期が、俺にもあった。



「あき、た……つまらん」



 ダンジョンを抜け、村で愚痴話を心置きなくして出発から四日とちょっと。

 なんにも変化のない旅が続いていた!!


 見渡す限りの短い草の平野と、小さな起伏があるだけの一本道。

 歩いても歩いても見えるのは草原と地平線。前後左右どこ見ても景色は道以外まったく同じ。


 人はいない。モンスターもいない。天気も変わらない。そんな道を歩き続けて、良い加減気が狂いそうだ。



「モンスターや盗賊がいないのは良いけどさぁ!! ここまで何もないのはヤバいでしょ!? どーすんのよ! 備蓄食料と永久保存バッグなかったら餓死コースの道でしょ!!?」



 平野の現状にも訳がある。それは例の教会と冒険者ギルドのストライキのせいだ!


 元々、この平原は地質的に短い草しか生えない地域で、他の植物は土も魔力も適合しない特殊地域らしい。

 だから動物も魔物も住みつかないだだっ広いだけの草原だ。


 普段はそれを利用した冒険者ギルドが初心者用の訓練場にしてる。それに伴って交通の馬車もあったし、店もそこそこあった。



 けどストライキ中で全部撤退してんだよ!!!!


 さっき言った通り、ここは魔力異常が起きてる地域だから同じ場所にいると食糧とかも影響出て食えなくなんの。

 そんで遊牧や移動前提の店や小屋ばっかだから引き上げられるとマジですっからかんなんだよこココ!!!!


 クッソこの文句言う相手すらいねぇ!!!!



「しょうがねぇ休憩だ休憩! やってられっか……どうせ日付変わるか分からんぐらいの時間に着くんだし、止まったって変わらねえ」



 このイライラをぶつける物もないから、地団駄踏んでドッカリ道の真ん中に座ってやった。


 ……脚に響いて痛ぇ。



「はぁ……暇つぶせるもん、ねーかなぁ」



 さっき起きたから眠くもねーし、飯も余分に食うのもったいねーし、本もそもそも読まないから持ってきてねーし。



「セーブポイント、触るか」



 意外と知らない機能も沢山あるって最近知ったし、せっかくだから遊んでやろ。



「おっ、思った通りありそうだ……んーっと、『召喚機能』? なんだそれ」



 召喚って言うと、召喚士とか魔術師が使い魔を喚び出して使役するってやつじゃん。


 え、セーブポイントもそれできんの!!? 俺もマスターになれちゃうの!!??



「物は試しだッ! 来い、俺の召喚獣ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」



 気合十分に『召喚機能』を起動させた。



「さあ来いさあさあ……って、あれ?」



 押してみたは良いものの、これと言って何かが起こることはなかった。


 魔法陣が浮かび上がったりとか、闇の扉が開いたりとか、謎の気配とか一切ない。さっきから同じそよ風の音しか聞こえてない。


 そう思った時、俺は地平線の向こうを突っ切る真昼の箒星を見た!



「なんだあの光!? 向こう」



 青空を裂くように光る真っ白で巨大な流星が一つ、地平線の先へ落ちていく様子を拝めた。



「なにこれ面白れぇ!! 次々やってやろ!」



 いつもならこれで終わるだろうけど、この四日間変化なしだった今の俺には最高の暇つぶしだ!


 俺は召喚を続けた。その度に空に白い線が引かれる。なぜか知らんけど同じところばっか光は通ってる。



「あっ、なんだなんだ!? 今度は金色だぞ!!」



 これまで白一色だったってのに、今度は急に黄金の閃光になってた。


 黄金色の星は輝きながら落ちてく。ただ色以外は他の星と変わらない。


 もう一度同じ金星を見るために、召喚し続けた。



「十回に一回は光るなぁ……たまーにペース早まる時もあるけど」



 なんかこれも飽きてきたし『召喚機能』も別のやつ……あ、これいけそうじゃね?



「うわっ、なんか十個ぐらい一気に来た」



 今度は流星群だ! 白い光がほとんどだけど、二個金色の光も混ざってる。


 それに一つだけ、すげーなんか虹っぽい光も出てるじゃん!!

 カジノみてーじゃん派手だやっべー!!



 ……いや、こわっ。降ってきてるの何か、召喚してても分かんねーし。てか召喚って名ばかりで何も喚び出せてねーし。


 とりあえず何も分かんないから、あっちの方角はしばらく近付くのやめとこ。



「はぁ、しょうがない。ちょっと走って早めに村行くか」




 ――その日の夕方、村に到着した後に聞いた話なんだけど、あの星の方角にある国で数人のバケモノ級に強い戦士と、伝説の勇者に並ぶって言われてる冒険者が現れたらしい。


 あの機能、召喚っていうか強いヤツレーダーみたいなこと? あの光って……


 わかんねーけど、なんか関係なさそうだしいっか!



 ――それと、なんか所持金が覚えもないのに全部消えてた。



「金なァァァァァァァァァァァい!!??? え? えっ? ええっ!? 今月分の旅費全部なァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァい!!!!!!???????」



 絶対あの『召喚機能』のせいだ!!


 金巻き上げる機能かコレ!!?? クッソハメられた!!!!


 もう二度と召喚なんてするかよクソが!!!!!!!

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