ダンジョンってヤバくね?死ねる
「はぁっ、はぁっ……しっ、ししし、死ぬ。これ死ぬっ」
いつもの通り、いきなり大ピンチの設置人リスお兄さんだ。
俺は今、人生初のダンジョンで絶賛命の危機に瀕してる(絶賛はされてねぇ)
「行く部屋ごとにモンスター寝てるわ、そこら辺に冒険者だった遺骨が散乱してるわ、暗くて普通におっかねぇわ……どうなってんだよ!!」
松明の火で照らしながら、キャンプ気分で友達と探索するもんじゃねーのかよダンジョン探索って!
ここまで危険なんて聞いてねえ!!
もう道にも迷ってるし、どっかで魔物が目覚めた声は響いてるし、怖さが尋常じゃねえって。
「はやぐ! はやぐいえにがえりだい!!」
明らかにヤバそうな唸り声してる部屋とか入れなかったから、その前とかに設置しまくって来たわ。
地図上じゃそこら辺に置けばいいって書いてたし、それで良いよな?
なんでこんな危険なとこにセーブポイント置くんだよ!!
……いや危険なとこだからセーブポイント置いとくのか!! 頭良いな考案者ちくしょう!!!!
「でもセーブポイントが発光してんのが唯一の救いだ……暗い通路もよく見える」
パズルみたいな壁動かして変な部屋入っちゃってから、完全に迷っちまってる。
地図にない部屋ばっかあるんだもん。
――そんなこんな、暗闇を逃げては設置を何度かこなして遂に、ダンジョン内最後のセーブポイントを置いてこれた。
「よっしゃ終わった! 設置終わったぞ! これでやっとトンズラこけ――」
ガゴンッ、と重い音が通路全体に響いた。
俺が『石のような何か』を踏んづけたと同時に。
「……ここから先は俺でも知ってるぞ」
嫌な予感はゴロゴロと転がって来る。
明らかに生き物を轢き潰すための大岩が、傾斜になってた通路の上から落ちてきてた。
表面のトゲトゲ、砂と土で真っ黒になってるヤツ。
「ほらねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
赤い塗料になるのだけは真っ平ごめんだ!! なんだよあの趣味悪い岩は!!
けどラッキーだ、曲がり角があるぜ!!!!
「ぎぃやああああぁぁぁぁぁぁぁぁだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
馬もビックリの方向転換で、俺は十字路を曲がった。竜王賞は俺のもんだぜ!
そんでトゲトゲ岩は通り過ぎてった!
――ガゴンッ、と曲がった先でまたもや『石のような何か』を踏み抜いたみたいだ。
「や、やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
踏みとどまって良かった。
俺が踏んだ半歩向こうの床は全て落っこちた。
暗くてよく見えないけど、床の下には大量にウネウネ動く紐状のヤツらが待ち構えてやがった。
「ヘビヘビヘビヘビベビヘビ!!!!」
腕振って体勢を立て直して、蛇風呂ダイブだけは避けられた。
「あっぶねぇ、落ちるとこだっ――」
トスン、とまた何かを踏み抜いた感触が足から伝わった。
「ままま、また作動させちった!!!? 今度は何が……」
……焦ったが今度は何も起きてねぇ?
足元にあんの、石じゃない?
どっか柔らかくて、地面と同じ色で、なんか臭い――
「……ウンコじゃねぇか!! 紛らわしいわ!!!!」
そこからは地獄のダンスだった。
『石のような何か』を踏み、トラップが作動し、また逃げる。
逃げた先でまたトラップを作動させ、逃げ回る。
時折、ウンコを踏み抜く。
何十分か何時間かも分からなくなるぐらい走り回った後、俺は見覚えのある場所までやってこれた。
「や、やっと帰れる……」
ダンジョンに入って真っ先に設置したセーブポイントがここにある。
この先を進めば、入ってきた場所に抜けられる。
「……って、あれ?」
と、思ったんだけどなぁ。
外の光は遮られて、元から入口なんてなかったみたいに石壁の行き止まりがあった。
「なんで!? ここ入り口だったじゃん!!」
場所は間違えてない。地図も穴が空くほど見た。
でも状況的に、答えは明白だった。
「これってまさか、クリアしないと出られない系のダンジョン……?」
終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
無理無理、魔物倒して奥に進める戦闘スキルなんかねーよ!!
終わった、餓死決定!! それか食われるか、岩に引かれるか、ミイラにされるか……ああああああ死因が多い!!!!!!
『――機能解放』
「はぇ!!?」
なんの脈絡もなく、近くに設置したセーブポイントは例の如く声を出す。
水晶の中でガチャガチャ音を立てて、セーブポイントは次第に光が強まっていく。
『緊急事態につき、《ワープ》機能を解放します』
ワープ!!?? ワープってあれ!?
あのバシュンッて他の場所に行けるやつ!!!???
「……た、助かったあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんかもうよく分かんないけどやったぜ!
「ありがとうセーブポイント!!」
『崇め奉りやがれ下さい愚民が』
「図々しいな! でもサンキュー!」
そこからは冗談抜きに一瞬。
セーブポイントが激しく光って、俺の全身を包み込んだ。
※ ※ ※
「フォォォォォォ脱出ゥ~!!!!」
無事! ダンジョン前まで出られた!!
リス・フォルポンド、奇跡の脱出劇ってやつだ!!!!
けど二度とこんな思いはゴメンだ。ダンジョンなんて一生入るもんかよ。
「にしてもこのダンジョン、お宝らしいもんはなかったな~変な石像とか壁画はいっぱいあったけど」
トラップだらけのダンジョンだってのに、あんなもんしかないなんて、造ったヤツも何考えてんだか。
きっとお宝があったとしても、大したもんじゃねーんだろうな。
「まったく、設置損だったぜ」
それから近くの村まで行った後、俺は酒場でダンジョンの詳細について話した。
そしたら横にいた冒険者パーティがグイグイ来たから、地図の写し渡してやったらダンジョン向かっていったわ。
あんなとこに宝物なんかないって言ったのによ。
それとも単純にダンジョンマニアなのかな?
物好きも案外多いんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます