今更だけど、ステータスって見れるんだ

 太陽に負けじと輝く金色の液体。氷魔法の気配を残したその飲み物を、俺は口内へ真っ逆さまに注いだ。



「……ぷっふぁー! ここの酒うんめぇー!! 陽魔道具の光を沢山浴びてきた麦と、冷却遺物に冷やされた炭酸がたまらねぇ。くゥ~生き返るゥ」



 おっちゃんたちの連絡船が港に着いて、俺は隣の大陸に辿り着いた。


 食文化も建造物も俺の出身地方とはえらく違う。異国情緒ってやつが町全体から漂ってる気がする。


 とりあえず小銭もあったってことで、今は昼間だが酒場に邪魔している。

 明るい時間から飲んだくれるには抵抗があったが、冒険者も大勢酒盛りしてたこともあって、雰囲気にもすぐ馴染めた。



「ねぇねぇ《ステータス》機能開けた?」


「俺はまだ。ったく、これだけでも再開してくれよなぁ」


「ギルド直営の店が生き残ってるだけ、まだ有難いけどさ……」



 こっちでも教会やギルドのストライキはまだ続いてるみたいだな。冒険者たちも文句垂れてるわ。



『ステータス機能』は体力や魔力を図るだけのものじゃない。

 スキルの習得具合や身体コンディションを数値でチェックして、結果に応じて必要な能力を伸ばす。肉体が資本の冒険者には必要不可欠なモンだ。



「……待てよ、『ステータス機能』っていえば」



 おもむろにセーブポイントを取り出して、画面をガチャガチャいじった。

 しばらくして、お目当ての窓が開かれる。


 窓にはど真ん中に『ステータス』って分かりやすい表記があった。



「うーしっ開けた! これで冒険者達の不満をちとマシになるかな。あとで酒場の端っこにでも設置しとくか」



 これで冒険者相手にドヤれるぜ。酒も驕ってくれたりしてな。ガッハッハッハ!



「せっかくだし、俺のステータスも見てみるか。権限は……お! 見れそうじゃん」



『鑑定開始』の枠を押すと、セーブポイントは俺に光を照射。

 全身をくまなく分析し始める。



『《ステータス》を鑑定しました――――』



 さぁきたきた。何を教えてくれる?


 これを機に、習得できそうなスキルでも見つかれば……



『あなたのステータスは、《穀潰し》です』


「……どぼじで?」


『状態、現在進行形です』


「はぁっ!!!???」


『滑稽ですね』


「うっせぇ!!!!!!」



 このセーブポイント、なんか俺にだけ辛辣じゃない!!!??


 クッソ腹立つ!! 壊せねーからって舐めてきてるぜったい!!!!



「ってか、なんでまだ無職扱いなんだよ! これでもセーブポイント設置人だぜ!?」


『それはあなたの村で設定された《役割》あって、教会及び冒険者ギルドの設定する《職業定義》とは異なります』


「とゆーと?」


『本来、教会やギルドが機能不全になることは想定外の事態。事前に準備などできておりません』


「なんの関係が?」


『ステータスに《セーブポイント設置人》が存在していないため、このような表記になっています』


「だからって職業『穀潰し』はちょっと……」


『そして、あなたの正式な登録職業は《家事見習い》です』



 ……え、そなの?



「な、なぜに?」


『他に分類がなかったのでしょうね――――フッ』



 なんか鼻で笑ってきやがったぞコイツ!!???



『ですがあなたの場合、数日以内に村へ帰れる見込みがありません』


「まあ、そうだよな。旅してんだもん」


『家事のできない者は《家事見習い》にあらず。よって《穀潰し》です』


「……泣いて良い?」


『泣く水分あるなら働いて汗で流してください、寄生型成人男性さん』


「お前がセーブポイントじゃなかったら魔王になってでもぶっ殺してたよ」



 しばらく涙目になって、酒飲みまくった。


 ちなみに酒は酒場のみんなに驕ってもらった。多分、話聞かれてて同情された……


 こんな、はずじゃ……!!!! ひぐっ、ぐすっ……俺がんばってるもん働いてるもん……

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