ショップってなんでもあるなぁ(俺買えないけど)
毒沼の影響で超下痢になってから数日、胃腸の調子もようやく戻って来た不遇系設置人のリスさんだ。
こんなハプニングもそろそろ慣れてきた頃だ。そこまで後に引かなくなってきた。
起きた瞬間は馬鹿みたいに喚くけど。
「それにしても、セーブポイントって結構色んな使い方あるんだな」
伝説の沼地も下痢になる程度まで解毒させる機能があるなんて、古代の遺物ってのも侮れないな。
考えるとこんなセーブポイントを、ガキの頃はボール代わりに転がしたり、組み立てて秘密基地の脚に使ったり、悪戯にばっか使って村長や村の大人によく怒られたなぁ……
そりゃあ怒られますわ。
あの頃遊んでた皆は、すっかり叱る大人側になっちまってさ。俺だけだよ、今でも村で一番怒られてんの。
……思い出すの止めよ。友達の結婚とか子育てとか想像してたら涙出てくる。
「にしてもよ、設置するだけだからって村長も意地悪だよなぁ。便利機能あるなら最初から教えてほしいぜ」
ま、俺は使えないんだけど。
「『ショップ機能』は売買権限ないし……おん?」
適当に『ショップ機能』を起動して、『光る窓』を動かしてたら気が付いた。
「なにこれ、いじれるぞ。『試着機能』?」
装備欄のとこだけ、なぜか自由に触れて、選択することも出来る。
「冒険者-1」って書いてあった装備のところを触ると、急にセーブポイントが発光を始めやがった。
『《試着》を開始します』
「わっちょ、なんだこれ!?」
激しい光を前に、俺の視界は真っ白になっだ。目がぁ……
――――視界が戻った時、俺はマントを装備した冒険者の姿になっていた。
「な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」
全身を覆うマントに、ガッシリしたアイアンシューズ。それと腰には剣の鞘まである!
「そ、装備できた!? いやでも、ステータスが上がった感じはないな」
『試着機能』ってのは、見た目だけ試せるって話か?
まあ確かに、冒険者によって体型はバラバラだし、自分に合わない装備を買うリスクは避けられるな。
「せっかく使える機能があったんだ、遊んでやーろっと!」
ってことで、この『試着機能』を俺は遊び倒した。
「おお、一番冒険者っぽい! このラフな感じに、機動力重視な最低限の冒険装備ってのがたまんないぜ」
レザーベストと白シャツに、ベルトに小道具を色々つけた冒険者ファッションは最近のトレンド。ギルドに絶対三人はいる駆け出し冒険者の姿だ。
「おおおおおおロイヤルナイト装備! 鏡みてーに磨かれた鎧と、ドラゴンっぽい意匠の紋章が渋い! ステレオタイプだけど全男子憧れのヤツ!!」
ピカピカの鎧は王都や相当精鋭な騎士団の団員とかしか装備出来ない。
冒険者なら、かなり金を貯めないと買えないほどの高級装備だ。たまんねー!
「ギャハハハハ変態装備! 一部の変人か、超一流の冒険者が着る防御力ゼロの格好。武器の攻撃力を代償にパンイチと靴下だけってのがまた笑えるぜアッハッハッハ!!」
パンツと靴下に、攻撃力の高そうな『ドラゴンバスター』を片手に、俺は大地のど真ん中ではしゃいでた。
「アハハハハ、はあ……何してんだろ」
成人男性、一人でふざけてる時に我に返る瞬間ほど悲惨なものはない。
正気に戻る前に、これ以上はやめとこ。
「まあいいや、遊べたしこれで……」
『ショップ機能』を終了しようと思った時だった。
セーブポイントがいつもの警報を鳴らしながら喋り出す。
『《試着料》を、払ってください』
「ハァ!? 試着って言ったじゃねーか! タダじゃねぇのかよ!!?」
『試着の際は肌を直接触れさせないで下さい。分かったかスコップで肋骨を抉るぞクソガキ』
「ごめんなさい!!」
セーブポイントにガチギレされたので、そのままお支払いすることになった。
こうして俺は暇つぶしのお代を請求されて、旅費をほとんど溶かした。
「金があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そしてパン一個も買えなくなりました。
次の街行ったら設置の前に、一回バイト探します……
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