毒ってセーブポイントでどうにか出来るの?
戦闘力、レベル、所持金、全部ないセーブポイント設置人がぼやきます。
「さてと、どうしたもんか……」
流石に猛毒の沼地を前にしたら、この感想も許されると思う。
この一帯は有名な毒沼地帯イーズル。
理由は地質? 伝説の竜の影響? 死んだ過去の大王の怨念? だか忘れたけど、何百年も前から数多の人間を飲み込んで来た超の付く危険地帯だ。
ガキの頃は寝る前に母ちゃんが聞かせてくれた話にもあったぐらい、そのヤバさは折り紙付き。
触れたら鉄の鎧でも溶けて、目や口に入れば二日以内に中毒死。猛毒耐性のある魔物さえ寄り付かない。人呼んで『悪魔のテーブル』、生物はこの沼地で生きてはいけない。
「けど昔話の通りなら、この毒沼には三つの攻略方法があった……」
童話で言ってた通りなら――
「バジリスクの毒から調合した『超是式解毒薬』、『劇癒の魔導書』に記された対毒術式と解毒魔法、仙竜の鱗から造った『不侵の鎧』、そのどれかを使う事……」
うん、なめてんのか?
「んなレアもん持ってるかボケェェェェェェェェェェェェ!!」
『劇癒の魔導書』がまず超貴重な魔導書で、覚えられるのは魔法適性のある魔導士とかだけ!
『不侵の鎧』はヴァルビト山脈で仙竜を倒さねぇと素材がねーし、流通もほとんどしてない!
大体のヤツは『超是式解毒薬』を街で買うが、金額が馬鹿高過ぎて冒険者でも金貯めねーと買えない代物! んなもん俺が買える!!
「迂回したくても、来た道以外はこの毒沼を抜けねぇことにはどこにも行けねぇ……」
頭抱えてると、この前から喋り始めたセーブポイントがけたたましい音を鳴らしてきやがった。
『《危険地域アラート》発令。生命を脅かす危険性があります。当該地域ではセーブポイントを設置できません』
「あーあー分かってるよ言われなくても!!」
そういえば冒険者を危険な場所で復活させないように、セーブポイントは設置場所を限定する『安全装置』があったとか話あったな……
『《セーブポイント保護術式》、起動。毒素分解を開始します』
次の瞬間、セーブポイントの周りの毒が消えた。
浄化の魔法みたいに毒が蒸発して、毒々しい紫だった地面はただの土色になっている。
「え、えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」
『分解確認、毒素の一時排除を完了しました。設置人は直ちに安全地帯にセーブポイントを移動してください』
「これってまさか、セーブポイントの回復機能の一つか!!」
セーブポイントってのは体力を復活させる性能があるが、猛毒や呪いみたいな状態異常も治す効果もある!
それがセーブポイント本体を守る『保護術式』にもあって、毒を中和してってるのか!?
「なんだかめっちゃ都合良いけど、これなら怖いもんなしだぜ!!」
一時排除って言ってたし、永久的な効力はないんだろう。
だとすれば、善は急げ!
「このまま街まで全力疾走だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
セーブポイントを地面に沿わせて、周囲の毒を浄化しながら走った。
最初は焦ってたけど、綺麗に道が拓けていく様は爽快感さえある。無敵の強者にでもなった気分だ!
今だったら攻撃食らったとしても倒れない自信があるぜ俺は!!
「……てかもうさ、セーブポイント奥より抱えて移動した方が早くね?」
回復や解毒だけじゃなくて、『鍛冶機能』やショップ機能なんて便利なものがあるんだ。
多少重量はあるけどさ、パワー系の冒険者だったら背負ってても問題ないぐらいの重さだぜ? 設置するよりそっち方が使い勝手良いんじゃ――
「あ、それを自動で出来る奴を、教会とかが作ってたのか」
回復までは分かんねーけど、契約すれば常にセーブや鍛冶やら諸々できる『自動セーブ』が教会やギルドのセーブには備わってるんだよな……
「良い加減終わってくれよ、ストライキ……」
ちなみに余談だが、セーブポイントの解毒機能も絶対じゃなかったらしい。
沼地を抜けた後、すんごい下痢になった。次の設置場所向かう前に、胃腸薬買うためになりそうだ。
クソが!!!!
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