どうしよセーブポイント落としちゃった!?
「ひぃぃ~怖ぇぇぇ……」
セーブポイント設置人、リス。旅に出てから早数日。
ごめん、冒険者ダンジョンには行けません。今、吊り橋の上にいます。
「ここ普通の通行路なんだよなぁ!? 今にも橋落ちそうなんだけど!!」
村がある地方を抜けて来たのは山岳地帯『ヴァヤリース』。
魔物も定期的に群れ単位で通過するここは、一部の馬車用高速路と山岳都市を除いて整備が難しいとか。
予算もないから、この吊り橋も心もとないロープと木の板だけの突貫仕様。
おかげで俺は風が吹く度に命の危険を感じる。
「って、考えてたそばからぁぁぁぁ! 揺れるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
突風が吹いてまた橋が傾いた。まずいってこれ、体ほぼ真横だよ!
「落ちる落ちる落ちる……って、やっべ! セーブポイント!!?」
握ってた道具袋からセーブポイントが三つか四つ……五つぐらい谷底に落ちてった!
慌てて袋の口縛ったけど、落としたのは受け止められなかった。
「うっわ~やったわ、落としちまったわ」
セーブポイントは谷の壁面や岩にぶつかりながら、それぞれ谷底へバラバラに落ちていった。
ガンガン、カラカラって音が下の方から響いてきてるわ。
「うわぁどうしよ。まあ、セーブポイントは個数の上限ないらしいから良いけど……って、ありゃ?」
セーブポイントが落ちてった谷の底は暗くてよく見えないけど、なんか青く光ってね? それも五か所……
間違いない、今光ったばかりだ。あれ全部落としたセーブポイントじゃん。
「しかもあの光、設置したセーブポイントが出る光じゃん。もしかして、あれで設置できた感じ?」
設置はそこまで難しいもんじゃないけど、村長からは「立て付けと試運転はしないと冒険者からクレーム来るから、出来る限り見ながら設置せい」って言われたけど。
「……ま、いっか!」
谷降りて確認するのメンドくさいから止めた。
もしかしたら村長、簡単な方法もあるけど俺が楽すんの腹立つから忠告しただけかもしんないしな!
「よーしじゃあ出発! あんな変なとこ、どうせ行く冒険者もいないだろうし」
そして俺はそのままセーブポイントを放置したまま先に進んだ。
※
「……ってことがありまして」
「で、適当にセーブポイントを落としてたら、この一帯に滅茶苦茶な数のセーブポイントを設置しちゃった……と」
大のピンチ。俺、衛兵さんから絶賛お説教中です。
「で? 谷下の道はセーブポイントのせいで馬車が通れなくなって、崖崩れも発生。大型家畜魔獣の背中には引っ付く形で設置。民家の屋根や放牧地にも置いちゃってるじゃない」
衛兵さんの言う通り、あれから落ちたセーブポイント拾わなかったり、適当に袋振り回して『セーブポイント飛ばし』して遊んでたら……大変なことになっちゃった。
まさかね、セーブポイントが原因で渋滞とか? 動物に引っ付いたり? すると思わなかったんだよ。
流石に小屋の屋根を突き破っちゃったのはまずいと思って謝りに行ったら、こうなったけども……
「どうするのよこれ、人様の土地や物にまで勝手に設置しちゃって~」
「いや、ホント、サ―セン……」
村追放から一週間で、まさか逮捕されるかもしれない事なるとは思わなかったわ。
助けてお母ちゃん、近所のばっちゃん、村長――ってここ来てるのも村長のせいじゃねーかクソジジイ!
……チクショウ、責任転嫁したいけど俺の良心がさせてくれねぇ!!
「まあまあ衛兵さんや、青年には悪気がなかったようじゃから、ワシはええよ」
「良いんですか地主さん? 額としてはそこまでかもしれませんが……」
「ハハハ、ええんじゃよ」
どうやら老人は皆、村長のような鬼ばかりじゃないらしい。
ありがとうおじいさん、ナンバーワンおじいちゃん。
「お、おじいさ……」
「じゃが、ちゃんと未設置分くらいは片づけてくれるじゃろうな?」
あっやべ、じいさん顔は笑ってるのに目が全く笑ってねぇ。
「塞がってしもうた道路の整備と、屋根の修繕。ついでに草むしりと家畜の餌やりも頼んだぞぉ」
「うっ、うっ、ごべんなざいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
この後、数日頑張ってセーブポイントの撤去とおじいさんの仕事を手伝った。
なんだかんだあったけど、ご飯と寝床貸してくれた。食糧もちょっと貰えた。
おじいちゃん大好き!!
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