第9話 リセスと見えないオーロラと旅の終わり
場所:コスヒ海岸
「ここが……コスヒ海岸ですか……あっという間に着いちゃいました」
「確かに『フライウインド』を使えばあっという間に行けると言ってましたけど、本当に、こんな早々に着いちゃうなんて」
SE:波の音
「それにしても、真っ暗ですねぇ」
「え? オーロラは冬にしか見えない?」
「ああ……そっかぁ……そうでしたよね。本にも書かれていましたもんね。冬の景色だって」
「……がっかりしたか、って?」
「いいえ、全然。ちっとも。むしろこんな真っ暗な海を見たの、産まれて初めてです」
「確かに、見たい景色が見れませんでしたけど、でも」
「思いがけないものは、見れました」
「これはこれで、とても素敵な旅の思い出です」
「……最後に、一つだけ聞いていいですか?」
「あの『勇者のその後の旅路』の本。実は――」
「ガイドさんが、書いた作品、なんですよね」
(無音)
「……違う? え? だって魔法使えるじゃないですか!」
「天才だから? ちょっと! 嘘ですよね!? それじゃあ私が、先ほどまで凄い勘違いしてたってことじゃないですか!」
「わ、分かりました! 実は親戚が作者だったとか!」
「無関係?! まったくの他人!? えぇ?! そんなぁ……」
「ふふ、うふふふふふ」
「そうなんですかぁ。そうだったんですか。それじゃあ、仕方がないですね」
「(小声)そういうことに、しておきます」
「あーあ、全部、思ってもいないことばかりです」
「知らないことばかりだったけど、でも、色んなことを知れて」
「とても最高の、旅でした」
「ガイドさん、今までお付き合い頂きありがとうございます。どれほど感謝の言葉を述べても足りないくらいです」
SE:リセスが頭を下げる音
「そして、本当にこれを最後にして、帰ります」
「改めて、自己紹介させて頂きます」
SE:風が舞う音
「私の名前は、リセス・オーギ・クインプル。オーギ王国の姫」
「今回の旅は、私の心を豊かにする最高の思い出となりました」
「この先いつまでも、いつまでも胸の奥に残り続けるでしょう」
「私に最上の喜びを与えて頂けたことを、誠に感謝申し上げます」
「願わくば、これからのアナタ様が歩む道が、どうか安らかに、健やかに、素晴らしいものになることを、お祈りします」
「それでは」
「ありがとうございました。ガイドさん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます