第8話 リセスと事情とお別れ――

 場所:城下町の宿


「まさか先の町でお父様が待ち伏せしていると思いませんでした……」


「いえ、今回は本当に申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます」


「実は、ずっと……ずっと隠していたんですが」


「私、オーギ王国の姫だったんです!」


(無音)


「…………え? 知ってた?」


「え、え、え。いつからですか!? 最初から!? 一体どこでバレる要素が……」


「全部って! なんですか全部って! そんなぁ……じゃあ私は一体何のために今まで誤魔化し続けてきたんですかぁ」


「はい、実はですね。前にもお話しましたが、本に書かれていたコスヒ海岸のオーロラを見るために旅に出ようとしたんです」


「ちゃんと、お仕事も、稽古も一通り終わらせて、一か月お休み貰って行こうとしたんですけど、危ないからダメだってお父様とお母さまが反対するから……だから魔法使いとして町を出て……」


「でも、これで終わりですけど、楽しかったです」


「美味しいもの沢山食べられましたし、色んな町や自然を巡って、色んなものを見れましたし、よかったです」


「ガイドさん、今までありがとうございました」


「……え? 約束と違う?」


「何を言ってるんですか! ちゃんと報酬をお渡ししましたよ!」


「ちゃんと、目的地まで届けるのがガイドの役目?」


「えっ、えっ」


 SE:リセスの手を引いて外に出る足音


「で、でも、もう私帰らなきゃ……」


 SE:リセスをお姫様抱っこする音


「きゃあ! そんなはしたな――」


 SE:風が舞う音


「う、『フライウインド」?! ガイドさん、魔法使えるんですか!?」


「使えないなんて一度も言ってない? 確かにそうでしたけど……」


「あー……お付きの人、かなり怒っているみたいです。お父様もなんか叫んでいるみたいですね」


「……いえ、お願いします」


「私をどうか、旅の目的地まで連れて行ってください」


「お願いします、ガイドさん」

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