第5話 リセスと草原と約束

 場所:草原(昼間)


「……んー、今日も良い天気ですねぇ」


 SE:風で草木が靡く音


「ふぁあ……今日はお馬さんもここでお休みをして、のぉんびり、休憩しましょう……」


「ふぅ……ちょっとぉ……お休みするので……見守っててくださぁい……」


(リセスの眠っている声)


「ん……んん……」


「すぅ………すぅ…………」


「シープが一匹……シープが二匹……」


「むにゃむにゃ……」


「あ……はい……お母様……ちゃんと勉強しています……」


「だから…………」


「お父様……だから……旅は行くって……言ったじゃ……ないですか……」


「危なく……なんて……ないです……」


「ちゃんと………ガイドさん……雇い……ますから……」


「すぅ……すぅ……」


「平気……です……得体の……知れない……人じゃ……ありま……せん……」


「ちゃんと……調査する人に……身辺を……確認して貰いましたから……」


「お金を……払えば……仕事は……してくれる……人みたいで……」


「むにゃむにゃ……」


「はい……はい……」


「ミーダちゃん……私の……影武者……お願い……します……」


「ひと月……くらいで……帰り……ますから……」


「ぐぅ……ぐぅ……」


(しばらく環境音)


「ふ……ふぁあああああ。(欠伸)あら嫌です、こんなはしたない……」


「え、あ。ガイドさん! す、すいません寝ちゃってました!!」


「……別に問題ない? それなら良かったですけど」


「あの……私、変な寝言、言ってませんでしたか?」


「その……なんというか……言ってはいけないことを喋っていたような……」


「か、か、可愛い寝顔ですって!? そんな! 破廉恥です! めです!」


「んもう……ふぁ……ちょっと……顔洗います」


「『ウォッシュウォーター』ぁ……」


 SE:洗顔する音。


「ふう……旅もあとちょっと、頑張らないといけませんね」


「……はい? 質問、ですか」


「魔法が使えるなら、『フライウインド』で目的地まで行けばあっという間に行ける?」


「いえ、確かに使えますけど……」


「でも、それって旅じゃないですよね」


「確かに目的は達成出来ますけど、でもそれは旅の醍醐味を台無しにする行為というか……いや必要とあらば飛べますけど……」


「……いえ、その……あのですね」


「確かに『フライウインド』を使うことは出来るのですが……私、その魔法苦手で……」


「笑わないでくださいね、笑わないでくださいね?」


「絶対ですよ、笑ったら怒りますからね」


「私、昔『フライウインド』で旅をする練習をしてたこと、あったんです」


「それで、実は夜中にこっそり飛んだのですが……」


「町の看板に激突しちゃって、それで『フライウインド』で飛ぶのが怖くなっちゃって……」


「な、な!! わ、笑わないって言ったじゃないですか!!」


「も、もう!! 酷いです!! あんまりです!!!」



(しばらく無音)


「え? 何です?」


「練習……すればいい……?」


「…………」


「いやまあ確かにそうなんですが人には向き不向きというものがあり過去の辛い体験が新たな可能性を妨げることも間々あることで」


「はい……分かりました……ちゃんと練習します……注意しながら」


「……だったら」


「それなら、ガイドさん。練習に付き合ってください」


「私がちゃんと飛べるように、目的地に付くまで手伝ってくれるって」


「約束してください」


「ゆーびきーりげーんまーん。うーそついーたら」


「『スパイクウインド』でめったーざしー」


「はい、指切りで約束しましたからね、守ってくださいよ」


「あはっ、絶対ですよ。ガイドさん」

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