甲蟲転生 ～虫モチーフのヒーローが好きだとは言ったけど、虫にしろとは言ってないよォ！！森を出ましたが、ボクの無双はいつですか！？ ～

第56話 砕け！アソコを砕け！！

　黒棍棒は、ちょうど黒曜ゴーレムの目？のあたりに直撃した。

どう考えても重要器官だ！これで結構なダメージになってるハズ――

『むっくん！後方に退避！！』

　トモさんの声に地面を蹴り、後ろに跳ぶ。

更に空中で衝撃波を放ち、もっと離れる。

　さっきまでボクの体があった場所を、鋭い破片が貫いていた。

ひ、ヒエエ！？危ない！！

『あそこが核ではなかったようです』

　か、核？

それって……スライムくんの体にあるアレ？

『おや、ご存じだったから目を狙ったのではなかったのですか』

　よっとォ！？

うわわわ、追加の破片がバンバン飛んでくる！

横！横衝撃波！横スライドォ！！

「えぇえ～いっ！！」

　空中から、カワイイ掛け声に続いてカワイクない威力の思念ミサイルがゴーレムに着弾。

肩や背中の装甲が飛び散り、剥離しながら上空のアカへと飛んでいく。

「こっち！こっちぃ！」

　アカはそれを、とんでもない機動で躱していく。

ニッコニコで手を振るというオマケ付きで。

うーん、煽りスキルまであるとは……アカ！恐ろしい子！

『この隙に説明しましょう。一般的なゴーレム種は、体内のどこかにスライムのような核が存在しています……ソレを破壊すれば即座に無力化できますが、逆に核さえ無事なら魔力の続く限り復活しますよ』

　なんというクソゲー！

『核の周りに鉱石が纏わりついた状態なのが、ゴーレムなのです。先程から飛ばしているものもそうなのですよ、だから弾丸は実質無限にあります』

　なーんという！クソゲー！！

　ゴーレムってアレじゃないの！？よくわからないけど、たしか額の文字を削り取ったら死ぬんじゃなかったんです！？

『ありますか、アレに』

　……額どころか首が！なぁい！！

『額の文字云々は地球産のゴーレムですね、残念ながらこちらでは違いますね』

　むううん……現実は非情である。

　ま、まあアレだ。

じゃあ……一般的なゴーレムの倒し方っていうは？

『遠距離から魔法の波状攻撃で粉々にし、再生している間に走り寄って核を砕くのが一番簡単な方法ですかね』

　ボクにできる？

『むっくん1人だと無理ですね、通常は10人以上で行う戦法ですので』

　むぐぐぐ……現状、動けるのはボクとアカだけ。

それなら仕方ない……！

　まずは！全身に魔力を流して……防御力を底上げ！！

しかる後、棍棒にも魔力を流す！！

『さすが、最適解ですね……棍棒のラッシュで装甲を破壊、核を見つけて砕いてください』

　了解！

　視線の先では、アカがミサイルを放ちつつ回避を続けている。

待ってろアカ！おやびんが行くぞォ！！

「――オオオオオッ！！」

　口に魔石を放り込み、噛み砕いて……斜めにジャンプぅ！！

体が浮いている間に！全力衝撃波を後方へッ！！

あっという間に、空中のアカに気を取られているゴーレムの後ろに近付いた！！

「――ドッセイ！！！！」

　空中に青白い軌跡を残し、加速した棍棒がゴーレムの左肩にめり込んだ。

そのまま、肩を破壊しながら――左腕が吹き飛ぶ！！

「ヌリャアッ！！」

　着地しながら、メジャーリーガー並のフルスイングを腰に！！

またもや装甲がはじけ飛ぶ！

「グ！ギ！ギイイッ！！」

　だけど！空中に散った装甲がボクの全身に殺到！

魔力を纏わせた体に、やたらめったら突き刺さる！！

いっだい！表面にサックリ刺さっただけだけどいっだい！！

ウニの棘が刺さったくらいだけどいっだい！！

「コン、ニャロォ！！」

　さらに魔力を棍棒に注ぎこみ、青白い光が増す！

「コンニャロ！コンニャロ！コンニャロ！！」

　その状態の棍棒を！縦横無尽に振り回す！！

飛び散る装甲！ボクに突き刺さる装甲！

地味に痛すぎて死んじゃう！！

「やああああっ！！」

　アカの援護射撃がゴーレムに突き刺さり、さらに剥がれる装甲が増す！

そして増した装甲はどうなったかって？

――全部ボクに突き刺さりまァす！！

「ヌ、グッ！！」

　さっき砕いた左腕が丸ごと突っ込んできたので、さすがにジャンプ回避！

そんなにデッカイのは大ダメージだからね！！

　そして飛び上がって……頭頂部？に棍棒を振り下ろす！

よぉしッ！！かなりの面積を砕いたぞ！

今思い出したけど、地球でも黒曜石って簡単に割れるんだっけ！

異世界黒曜石が同じとは限らないけど、この分なら破壊するのも楽そうだ！

魔力を十分に込めれば結構砕きやすい！！

『あら、でも――』

「ンギュウウウッ！？」

　ちょ、ちょっと大きめの！鋭利な長い破片が！！

腕！腕を貫通したァ！！

凄く痛い！！

『地球でもこちらでも、割れた黒曜石は鋭いですよ。ナイフにすると便利です』

　生き残れば明日使える無駄じゃない知識だ！ちくしょう！

「ヌウウッ！！」

　大きく後方へ跳び下がりながら――速射衝撃波、5発！！

ボクの方を向いたゴーレムの、上半身から散らばる破片！

それがこっちに飛んで来るけど――

「ホームランッ！！」

――これだけ距離が離れてれば、流石に迎撃できるんだっ！！

甘い甘い！バッティングセンターに比べれば遅すぎるぞっ！！

行った記憶、ないけどさあっ！！

「えいっ！えいっ！え～いっ！！」

　アカの援護射撃も変わらず降り注ぎ、当初は5メートルくらいだったゴーレムもちょっと小さくなってきてる！

よしよし！もう少しだぁっ！！

　ゴーレムが空中のアカに意識を取られている間に……魔力を！溜める！！

『アカごめん！いっぱい逃げてて！ボク、今からでっかいの撃つから！！』

『あいっ！まかして！まかしてぇ！』

　返事代わりか、思念ミサイルがまたゴーレムに降り注ぐ。

込められた魔力が多かったみたいで、さっきよりも大きな爆発が見えた！

頼れる子分！最高っ！！

　魔力を触角に注ぎ込む……細かい紫電と、振動がやってくる！

まだだ、まだだ、まだ……！

ありったけを！注ぎ込むんだ！！

魔石を噛み砕き、追加で発生した魔力を……根こそぎ触角へ！！

むん……むん、むん！！

再生した足パイル展開……身体固定、ヨシ！！

　――電磁投射砲、発射ァ！！

　かぉん、と音がして。

発射された衝撃波は、ほぼノータイムでゴーレムの胴体を貫いた。

ビーチボールサイズの大穴ができて、向こう側までよく見える！！

　よし……畳みかけるぞ！

魔石おかわり！ぼりぼり、ごくん！

謎虫、行きマース！！

『アカ！崩れた所を狙って！体を切り離すんだ！！』『あいっ！！』

崩れた体に叩き込まれるミサイルを見ながら、ボクは地面を蹴る！

さあ行くぞ、棍棒くん！

いつもの謎加速を頼む！！

　アカのミサイルに完全に気を取られてるゴーレム。

今度は衝撃波を使わずに、その背中に走って突撃！！

「オオオッ――！！」

　走り込んだ勢いで、腰だめに大きく棍棒を横振り！！

「――ダッリャア！！」

　青白く輝く棍棒が、謎加速でゴーレムの腰付近に激突！

バリンバリンと装甲を砕いて、火花を散らしながら――衝撃波でできた穴まで食い込んだ！！

「コレデッ！！」

　めり込んだ棍棒に体重を預け、両足でジャンプぅ！！

上半身にドロップキック気味に叩き付けて――即座に二段階展開！そしてェ！！

「終ワリ、ダァアッ！！！！」

　同時に二本の棘を、射ァ出ッ！！

　穴に繋がる片方の体を砕かれたゴーレム。

今度は逆方向へ棘を打ち込まれて――さすがにこれには耐えきれなかったようだ。

穴を起点にして、破片を撒き散らしながら……上半身と下半身が泣き別れになった！

やった！これで勝っ――てない！あっぶない！

普通の生き物なら即死だけど、核とやらを砕かないと！！

　まずは落ちた上半身をもっと砕いて確かめグバアアアアアアッ！？！？！？

下半身くんに蹴り飛ばされた！？！？

『おやびーん！？』『んだ、大丈夫大丈夫！』

　泣き別れになってても動くなんて、出鱈目なヤツめが！！

「トウリャーッ！！」

　半泣き気分で棍棒を下からフルスイング！

あああ！股間に直撃しちゃった！？

……いや別にいいか！！

「……ハ？」

　股間をぶん殴ったら……なんか、下半身くんが痙攣し始めた？

……え？このゴーレム、オスだったのかな？

えっと……なんか……スイマセン……

『なぜ手加減するのですか！おそらくそこの奥に核があるのです！叩きなさい！股間を！破壊しなさい！股間を！！』

　股間股間連呼するトモさんが新鮮だね……

『むっくん！！』

　フルスイング！フルスイング！！フルスイング！！！！

うおおおおっ！砕けろ股間！弾けろ核ゥ！！！！

　何故か罪悪感を抱えながら……ボクはゴーレムの股間を砕いた。

なんだろう……ボク、いまだに性別不詳だけど、なんか、腰がヒュッてなったよ……

　完全に股間を破壊されたゴーレムは、ピクリともしない。

魔力も感じないし……完全に核は砕けたんだろう。

あとでより分けておこうかな。

スライムの核と同じなら、食べたらいい栄養？になりそうだし。

「おやびん！おやび～ん！！」

　上空から笑顔で飛んでくるアカを見ながら、ボクは緊張を解くのだった。