第33話 三つ首大蛇 VS 謎虫パーティ
まずは、衝撃波を機先に放つ!
バスくらいでっかいんだ!こんなのどこ狙っても当たるもんね!
「シュルゥウウ……!」
衝撃波は首の一つに着弾……しなかった!
完全に当たる軌道だったでしょ!?ナンデ!?
「――せいやあっ!!」
次にロロンが前に出る。
低い姿勢から、3つの首が繋がっている胴体へ横薙ぎの一撃!
「ぐ、ぬゥ!?」
がぎ、という音。
ロロンの槍は、胴体に届くちょっと手前で止まっている。
アレどうして……ああ!
胴体と槍の中間に、なんか壁がある!
半透明っぽい、変な壁が!
「っちい!ムーク様ァ!魔導防壁でやんす!!」
見切りをつけ、ロロンがバックステップ。
まどーぼーへき?
『バリアですね。トライ・ペントは3つの頭のうちどれか2つが魔法を行使して、攻撃と防御に使用します!』
さすが、頭が複数なだけある!
魔物の癖に賢いなあ!
ボクより頭がでっかいから、脳も大きいのかもしんないね!
「フシャーッ!!」
っと!
真ん中の首が吠え、その口から……なんか紫色のゲロ!ゲロが!!
明らかに体に悪そうなそれを大きく躱すと、さっきまでいた場所にベシャーっと着弾。
そこに生えていた草が、じゅうじゅう音を立てながら溶け始めた!
ヒィーッ!?
「劇毒でやんす!」
でしょうねえ!
近寄ると酷い目に遭いそう!
「アカ!距離取ッテ援護ヲ!!」「あいっ!!」
あんなの、アカに当たったらエライことになる!
幸い巨体なので動きはそんなに早くない、アカなら大丈夫だろう!
「ムーク様!魔法を撃ちやんす!」
「了解!囮ハ任セテ!!」
棍棒を担いで前に出る!
ワザと大きな音を立てて、斜めに移動しながら速射衝撃波をついでに撃つ!
「シュルルルルルゥ……!」
案の定効いてないけど、ボクに興味津々みたい!
3つの首は全部こっちを追ってるね!
「――カッ!!!!」
うおおっと!また毒液!
躱した横を、刺激臭のある液体が通過していく!
――お返しだぁっ!!
躱した瞬間に衝撃波で加速!
胴体の真下に近付いて――棍棒フルスイング!!
メジャー級の打撃を喰らえ!ホームランしちゃるぞ!!
――がぎん、と手応え!
いでででで!腕が痺れる!?
まるでコンクリの壁を殴ったみたい!?
「――シャッ!!」
右の首が吠えると、魔力の気配が――地面から!
軽く跳ぶと、足元の地面から細い槍がいくつも生えてきた――土魔法!!
「ヨッ!ホッ!トォッ!?」
バックステップを繰り返して躱しつつ――衝撃波!
ああ駄目だ!?この程度の威力じゃ防がれちゃう!!
「――ザンガ・バンマ・スヴァーハッ!!」「――ッギィイ!?!?」
と、横から視認できないほどの速度で土の槍が飛んできた。
ロロンが放った土魔法は、何もない空中で火花を散らした後――蛇の胴体に突き刺さった!
今の火花がボーヘキ?を貫通した証なんだろうかね!?
『魔導防壁を貫通するには、それよりも大きい魔力を纏った攻撃か、高威力の魔法です!』
つまり魔力ナシの物理はNGってことね!了解!!
「――シャアアアアッ!!!!」
3つの首は、吠えながらロロンの方を向く。
「――ええぇ~いッ!!」
いつの間にか蛇の直上にいたアカが、大き目の稲妻を真下に放った。
それは、3つの首全てに直撃して動きを止めた!
――今だッ!!
むん、むんむんむん――!!
魔力を練り、額に集中……動きの止まった首に向けて、最大溜め衝撃波、発射ァ!!
「――ギシャッ!?」
それはバリアを突破し、右端の首にヒット!
鱗が飛び散り、大きく揺らいだ!!
『体表面に流れていた魔力が消失!バリア担当はあの首です!』
うっひょー!ラッキー!!
……よおし、それならッ!!
背後に衝撃波を放ち、飛び出す!
空中で右手に魔力を溜め――右端の首、その首の下にインセクト・パンチ!!
「――オ、オオオオッ!!」
さらに、パイルオン!!
飛び出したチェーンソーが首の皮膚に、食い込む!
――回れ、ボクの棘ェ!!
ぎゃち、と湿った音を立てて……ずらりと並んだ棘が高速回転を始めた!
あっという間に血と肉片が飛び散り、ボクの全身にビシャビシャと降りかかる!
「――オウ、リャアッ!!」
棘を回転させたまま、腕を横に振り抜く!
一瞬、ごりっという手ごたえがあって……蛇の首が半分以上切れた!
いいぞお!ボクのチェーンソーハンドッ!!
「キシャアアッ!!」「ガッァア!?!?」
真ん中の首が右手に噛みついてきた!
うわわわ、いっだ、いだい!?ジュウジュウいってるゥ!?!?
腕、腕が溶けちゃう!!
「――ああああああああああああああああっ!!!!」
その首、いや頭にロロンの骨槍が突き刺さった!
ありがとう!
「ヌ、ウウ――ガッ!!」
自由な左手を動かし、魔力を流して――発射ァ!!
ほぼ密着した状態で放たれた棘が、右目を貫いて内部まで貫通した!
オオムシクイドリよりかは柔らかい!貰ったァ!!
「――ええーいっ!!」「ギシャ!?!?」
残った首に、アカの青い炎球が直撃。
ボクに何かをしようとしていたその首が、行動をキャンセルした。
この隙に、棘を撃った反動で離脱!
ああああ!右腕が半分くらい溶けてるゥ!?
ボクが攻撃喰らってよかった!やっぱりアカだと大惨事だよ!!
着地し、痛みにのたうち回る大蛇を見る。
首の一本は死に、真ん中の首は半死半生、残った一つは燃えながら暴れてる!
――チャンスゥ!
「オッキイノ、撃ツヨ!!」
大地を踏みしめて両足の棘を展開、体を固定!
魔石を齧りつつ、全身の魔力を練り上げて触角へ!!
稲妻と、振動が徐々に大きくなる!
「オーム・ヤガラ・ガカラ・ノーム・スヴァーハ!!」「――ギッシャ!?」
駄目押し、とばかりにロロンの放った大岩が燃える頭に直撃。
大蛇は全身をよろめかせる!
それと同時に、充填完了ォッ!!
――電磁投射砲、発射ァ!!
目の前が光り、一瞬で衝撃波が着弾。
――大蛇の太い胴体に、大穴が空いた。
向こう側まで見えるほどの大穴が!
ぐうう、魔力が一気になくなった……追加の魔石ボリボリ!!
「ギ、ギャア……!」
ぐら、と揺らぐだけの大蛇。
さすがは蛇、耐久力がえげつないや!
「オーム!サンガ・バンマ――!!」
ソレに向って、ロロンがダッシュ!
軽やかに飛び掛かると、真ん中の首に刺さったままの骨槍を掴んで引き抜く!
「ノーム・ローム――!」
引き抜かれた槍の穂先に、虚空から湧いた土の刃が纏わりつく!
そして、ロロンは首を蹴って空中に離脱。
「――スヴァーハッ!!」
ぞん、と。
長くなった刃で首を斬り落とした!
ヒューッ!格好いい!ウチの子分むっちゃ格好いい!!
「イ、シュ、シュシュ……ゥウ……」
どずんと地響きを立て、大蛇は遂に地面に倒れ込んだ。
体中から染み出した血が、地面に広がっていく。
『お気をつけて、トライ・ペントは死ぬと血液に猛毒が混じります。気化したものを吸い込むと大変ですよ!』
トモさんが言い終わると同時に、血から紫色の煙が上がり始めた。
「アカ!ロロン!コッチヘ!」
2人がこちらへ戻ってくる中、大蛇はゆっくりと死んだ。
……ふう、大物とったど~!
・・☆・・
「オッキイネエ……ハイドウゾ」
「あんぐ、もぐぐ……ぼりぼり、おいし!おいし!」
毒煙が収まるのを待ってから、大蛇を解体した。
死んでからしばらくすると、毒もなんか抜けるらしい。
デタラメな生態してるよ。
でっかい大蛇だけど、売り物になるのはそれぞれの牙と眼球だけってのも切ないね。
身の毒は完全には抜けないし、皮は死ぬと強度を失うんだってさ。
肉は……とても美味しくないそうなので放置するゥ!!
まあ、今アカが齧っている魔石については頭から3つも取れたけど。
それぞれハンドボール大もあった、凄く大きい。
「おやびんは?おやびんはぁ?」
「前ニボクガ貰ッタデショ、ソノオ返シダヨ」
一気に齧って進化したからね。
今度はアカに譲ってあげないと。
「ムーク様はお優しい頭領様でがんす~♪」
よせやーい。
背中が痒くなっちゃうよ~!
「むぐむぐ……おやびん、からだ、あつい!あつーい!」
このタイミングでェ!?!?
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