第31話 散財!散財!!無駄遣いじゃないぞ!?
ロロンの持っていた地図のおかげで、先の見通しがついた。
何かに追われているわけでも、急がないと死ぬわけでもないけど……旅の準備はしておいた方がいい。
『むっくんの寿命は残り1年と半年ですが』
食べるから!色々食べるから大丈夫!!
っていうか地味に食事と魔石で増えてるな……ボクの寿命。
でも、いくら寿命が延びたってボコボコになったり頭が吹き飛んだりしたら普通に死んじゃうから……進化しなきゃね。
別にこの世界で最強の存在になりたい!とかそういうわけじゃないけど、旅をする以上は自衛能力は必要だし。
これからも魔石と魔物をもぐもぐしようか。
「ジャア……ロドリンド商会、行コウカ」
「で、やんすね。ドラウドさんにお聞きすれば店のこども教えていただけるでしょうし」
何も全部あそこで揃えなくてもいいけど、あの人はここの住民だし。
それに、ロドリンド商会はでっかい商会だ。
伝手も多いだろうしね。
「シュッパツ」
「しゅっぱ~つ!」
アカを肩に乗せ、ボクらは歩き出した。
・・☆・・
「よお、買い物かい?」
商会に行くと、丁度店先にはドラウドさんがいた。
ガラッドと同じような店内だね、やはりフランチャイズといったところか。
「ハイ、天幕トカ色々探シニ来マシタ」
「おおそうかい、丁度いいや。結構いいものがあるぜ」
ドラウドさんが指差した方向には、テントがいっぱいある区画があった。
おー、地球のアウトドア用品店みたい。
「他にも色々便利なモンがあるから、しっかり見ていきな。寝具周りをケチると長旅は辛いぜ~?まあ、何かあったら聞いてくれや」
ありがたいねえ。
店内は結構なお客さんがいて、にぎわっている。
広いお店だなあ……異世界も便利じゃないか。
むむむ?
店内を見ていると、見慣れたものに気付いた。
これ……リバーシじゃない?
間違いない、リバーシだ。
地球でお馴染みのアレ!
へえ、異世界にもあるんだねえ……まあ、これくらいのボードゲームはみんな考えつくか。
そういえば、転生ものって地球の知識で大儲け!みたいなのもあるんだよね、たしか。
詳しい記憶はないけどさ。
ふむ……ボクも考えてみようかな。
なにかこう、一発逆転のアイディアが眠っているかもしんない!
ロロンは真剣な顔で天幕を選んでるし、アカと一緒に見物しながら何か……何かないかな。
むむむむ……ま、マヨネーズ!
アレならボクも作り方がわかるぞ!
『ありますね』
あるのォ!?
『高級ソースですので、そこらの屋台にはありませんよ』
高級ソース?嘘でしょ。
そんなに卵とか高くないよ?
『あのですね、ここと地球では衛生状況が違うのですよ?卵の殺菌一つとっても大変なのです。魔法はありますが、なんでもかんでも魔法で解決できません』
あ、ああ~……確かにそうか。
地球でも、生卵を食べられるのは日本といくつかの先進国くらい……なんて話もあったね。
考えてみればマヨネーズって生のソースだし、適当に作ったらあっという間に食中毒だ……
マヨ計画は一瞬でとん挫してしまった。
もう既にあるみたいだし。
むうう……他に何かないかなあ。
ええと……使い終わった後のお茶っ葉を畳に撒くと掃除が簡単!
皮をむいた大根でタコをぶん殴ってから煮ると柔らかくなる!
お豆を煮る時に釘を入れると柔らかくなる!
野菜のアクを取るには竈の灰をぶち込む!!
『おばあちゃんの知恵袋ですか』
せ、生前のボクはお婆ちゃんだった……?
『それに、それらの知識はもう存在していますよ』
なんてこった……よく考えれば他にもこの世界って転生者いっぱいいたんだもんね。
それを抜きにしても、同じ人間だからみんな考えつくことか……
『リバーシも、トランプも、将棋も囲碁も似たようなゲームはだいたい存在していますよ。転生者が発案したものも、元からこの世界にあったものもあります』
ううむ。
やっぱり楽にお金を儲けるのは無理ってことだねえ。
「おやびん、どしたの?どしたのぉ?」
「ン、ナンデモナイ」
おっと、アカに心配されてしまった。
ロロンは……まだ吟味しているね。
ボクもなにか、役に立ちそうなものを探そうかな。
ええっと、背嚢に調理器具はもう買ってあるから……それ以外かあ。
何があるかなあ~?
『無駄遣いは駄目ですが、必要なものはしっかり揃えましょうね』
はぁい!
・・☆・・
「む、ムーク様……あのぉ……」
しばし後、ロロンがおずおずとやってきた。
この態度は一体どうしたのだろうか?
「あの天幕でやす……」
ロロンが指差した所には、箱?がある。
小さめの段ボールって感じだ。
これがテント?
なんか、魔石を嵌めるような場所があるけども。
『これは……魔力を流すと展開する天幕ですか。いいですね、コンパクトで場所も取りませんよ』
へえ!そんなにいいものがあるんだ!
いいじゃんいいじゃん、ポーチの容量も無限じゃないし……小さくなるならなるで問題ないよ!
あ、注意書きがある……ふむふむ、展開した大きさは10倍ね。
だいたい……乱暴に考えて4畳半くらい?なのかな?
野営なら十分すぎるね、ダンジョンでゲットした魔物避けもあるし!
「スッゴクイイヨ、コレ!流石ハロロン!」
「じゃじゃじゃ……だ、だけんども……しょの、お値段が……」
お値段?
言ってもただのテントだしそんなに……5万ガルゥウ!?!?
ほ、ほほう……なかなかやりますねえ。
むぐぐぐ……どうしよ。
『ふむ、汚れに強く、魔石経由で魔力を流せば汚れも落ちる……斬撃や打撃にも対応、ですか……適正価格でしょうね』
魔法具は高い、虫覚えてる。
ううむ……でも、ここで妥協しちゃうとなあ。
他にもテントはあるけど、どれも普通の物だ。
かさばるし、洗濯もしっかり自分たちでやんないといけないし……
「……ヨシ、買オウ!ドウセ長イ旅ニナルシ、無駄ジャナイヨ!」
ポーチの容量も圧迫しないしね!
やっぱり、休める時にしっかり休む場所って重要だと思う!
「え、えがんすか?」
「イイヨ、ボクタチ皆ニ必要ジャナイ。クオリティオブライフ、ダヨ!」
「く、くおりて~?」
寝る場所に妥協すると健康に悪い……らしいし!
旅するなら、そういう所にも気を遣わないとね。
「ドラウドサン、コレ買イマス」
近くにいたドラウドさんに声をかけた。
「おお!張り込んだなあ……コイツは一生モノの天幕だぜ!頑丈だしな!流石に竜のブレスにゃあ耐えきれねえがよ」
そこは初めから期待してないよ!
そんなの、5万ガルじゃ絶対買えないでしょ。
あるかどうかわかんないけどさ。
「ロロン、他ニモ必要ナモノ、ドンドン探ソウ。出シ惜シミハナシ!」
「は、はぁい!」
「さがす、さがすぅ!」
「はっはっは!そうだそうだ!ウチのモンは一級品ばっかりだかんな!張り切って探してくれよ!」
ドラウドさんの目がお金のマークになってるような気がする……だけど!ロロンに任せておけばぼったくられるようなことはない!ハズ!!
『清々しいまでの他力本願……』
適材適所って言ってェ!!
・・☆・・
「買ッタネェ」
「買いました!」
「かった、かったぁ!」
宿に戻ったボクたちは、今日買い込んだものを部屋に並べて確認している。
ロドリンド商会と、それからドラウドさんに紹介してもらった別のお店で買い求めたモノたちだ。
まずは、テント。
正式名称は『魔力展開式天幕』だそうだ。
テントでいいや。
お値段5万ガル。
次は、地面に突き刺せるような形の杭が4本。
これは、小規模な消音装置のようなものだ。
これを刺しておけば、周囲に響く音をかなり小さくできる。
魔物避けってわけじゃなくて、コレは盗賊避けだ。
ここ周辺はそれなりに安定しているので盗賊の目撃例は少ないらしいけど、いない訳じゃない。
用心に越したことはないからねえ。
そしてお値段、4つで4000ガル。
テントで麻痺しているけど普通に高い。
そして……もう一つの大きな買い物。
6本の、ガラス製の瓶。
中には緑色の液体が入っている……そう、これは『中級ポーション』だ。
これは商会で取り扱ってなかったので、薬局みたいな場所を紹介してもらったんだ。
やっぱり寿命以外の回復手段は重要だし、ボク以外の2人の為でもある。
ちなみにお値段、紹介で安くしてあっても1本……なんと1万ガル。
つまりは6万ガルだ。
大きな損傷と、手足が千切れるくらいの傷には対応しているらしい。
無い所に腕や足を生やす『上級ポーション』は取り扱いが無く注文方式で、お値段は最低でも10万ガルからだそうだ。
さすがにそれは手が出ない……わけじゃないけど、とりあえずは中級からってわけ。
あとは、テント内で使う寝具類。
これもいい物を選んだので、全部で1000ガル。
それに体を拭くタオルや包帯などの布類を、ちょこちょこ買った。
しめて11万6千ガルと少し。
ふふふ……滅茶苦茶使ってしまったよ。
ダンジョンの儲けが無ければ即死でした。
「空間圧縮背嚢ダケ、ナカッタネエ」
「アレは貴重でやんすから……」
あとはポーチの予備みたいなものも欲しかったんだけど、なかった。
注文はできるが、最低1年は待たないと駄目で……しかも20万ガルからときたもんだ。
どうしても必要なモノじゃないし、今回は見送ることとした。
「コレデ大体揃ッタ、カナア?」
「足りねぇモノはその都度考えればええがす。だけんど、必要最低限は大丈夫でやんす」
よし、ロロンの太鼓判もいただいた。
かなり散財したけど……必要なモノばっかりだから後悔はしていない!
お金を惜しんで死んだりしたら大変だからね!
「ジャア、コノ街ニイル間ニ試運転、シヨッカ」
「はい!明日早速冒険者ギルドに行ぎやしょ!」
そして次はそう、冒険の時間だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます