第26話 ダンジョンの財宝!財宝!!
「っぐ、コボルトどもめ、通路にまで糞すんじゃねえよ……」
「だから言わないでって、アロンゾ。ああもう最悪……」
アロンゾさんが先頭を歩く。
言う通り、通路にも排泄物がいっぱいいっぱいある……
以前トモさんに『獣人とコボルトを一緒にしたら戦争』みたいに言われたけど、確かにコレと一緒だって言われるのは最大級の侮辱だね。
人間がチンパンジーと同じだって言われる感じだもん。
「ロロンちゃん、大丈夫ぅ?」
「はももも、ももも」
「本当よねえ……帰ったらアカちゃんも一緒に水浴びしましょ。いい石鹸あるのよ、香り付きのね」
「ももめ、ももも!」
「ええ、本当。オンナの魅力は毛並みと香りだからねえ」
何故パライさんがロロンと意思疎通できているのか疑問を感じていると……
「おおい!なんてこった!コイツは……うははは!来てみろてめえら!!」
アロンゾさんが無茶苦茶でっかい声で叫んだ。
ビックリしたあ……そんな声出して大丈夫なん?
その声に従って進むと、通路を抜けた。
そこは、さっきまでいた部屋に比べるとかなり小さかった。
たぶん、20畳いかないくらい。
そして、そこには――
「がはははは!許した!薄汚ねぇコボルトどもに関しちゃ全部許したぜ!!見ろ!コイツをよォ!!」
剣、槍、鎧に盾みたいな装備品。
その他に、こまごまとした器具の数々が無造作に転がっていた。
そして、何個かの箱には――鈍く輝く、硬貨が詰まっていたのだ!
「こいつはすげえ、汚れちゃいるがまだ使えそうだ!」
いつもは物静かなバリトンさんまで興奮している。
まあボクも大興奮なんだけどね!!財宝!!ダンジョンの財宝!!!!
テンションがストップ高だよ!やったねトモさん!!
『おめでとうございます。むっくんのダンジョン愛が結実しましたね』
愛はよくわかんないけど浪漫はある!
痛い思いをした甲斐があったねえ!!
「ヤッタネ!」「ももも!?もっも~!」
思わずロロンを抱え上げて肩車しちゃった!
「アカも!アカも~!」
懐から飛び出したアカも参戦し、ボクらはしばし謎ダンスを踊るのだった。
これは、途中で臭いに気付いたアカが避難するまで続くのだった。
・・☆・・
「ひいひい、重い……」
「黙って運べよ、幸せの重さだぞ!」
「まあ、そりゃあそうだけど……よっと!」
どずん、と。
地面に箱が置かれる。
日の光を浴びた中身は、高級そうに光り輝いている。
あれからボクらは、宝物の部屋の先を確認して戻ってきた。
しばらく行くと、地震で崩れたように通路が崩落していたんだよね。
一本道だからこれ以上の脅威はないと判断し、引き返してきたんだ。
最近大きな地震があったらしいし、それが原因なんじゃないかな。
宝物の運搬は、戦闘に参加してない傭兵さん達がやってくれた。
手伝うって言ったんだけど、アロンゾさんに『最前線で苦労した奴にそんなんさせられるかっての』と、断られた。
「さっぱりしやんした~!」「さっぱり!さっぱりぃ!」
水浴びに行っていたアカたちも帰ってきたようだ。
ボクのマントも一緒に洗ってくれたので、目下ボクは全裸である。
まあ、鎧着てるようなもんだからいいけどさ……元が人間?としてはちょっと恥ずかしい。
お腹のベルトしかないし。
防御力って意味じゃなくって、普段使いの服でも調達しようかしら。
「おうパライ、やっと帰って来たか。女の水浴びは長いねえ」
「アンタは短すぎるのよ、まったく……」
ボクもアロンゾさんとバリトンさんと一緒に水浴びしたけどね。
まあ、水に浸かって磨けばピカピカになるから楽でいいけど。
ボク、どこにも毛が生えてないし。
逆にアロンゾさんみたいな毛の多い獣人さん達は……大変そうだった。
この世界、ドライヤーとかないしね。
現に今もちょっと湿っている。
「さてと……ドラウドさん、いいかい?」
「あいよぉ。アンタら、上手くやったなあ!査定は勉強させてもらうぜ!」
ホクホク顔のドラウドさんもやってきて、ボクたち戦闘組は車座になって座った。
中心には、持ってきた宝物がデーンと置かれている。
「ムークさんよ、本当に取り分は山分けでいいのか?」
「ハイ、ボクラハ雇ワレナノデ」
ロロンとも話し合った結果だ。
アロンゾさん達とはこの先も仲良くしたいし、大金を貰っても使い道に困るしね。
いや、お金はあればあるだけいいんだけどね?
でもまあ、全然もらえないってワケじゃないからいいんだ。
『過ぎたるは及ばざるが如し……』
トモさんの格言が身に沁みる。
「まずは金の方だな、コイツは全部ドラウドさんに任せるぜ」
「ああ、ラバンシで現金化する。あそこにゃ本部直属の買取所があるからな」
で、宝物はドラウドさんの竜車に積み込んでそのままラバンシに向うことになった。
さすがにボクらだけじゃ心もとないので、パライさんとロイドさんが追加の護衛になることになったんだ。
ちなみに中級ポーションとやらのおかげで、ロイドさんはすっかり健康体である。
ポーションってすごいな……寿命使わないし、ボクも予備に欲しい所だ。
森の中にはなかったしね。
「貨幣関係にゃ詳しかねえが、そんな俺っちでも値打ちモンだってわかる代物だ。まあ、期待しときな」
「はっは!今からたまんねえぜそいつはよ!!」
アロンゾさんのライオンヘッドが満面の笑みだ。
動物園の看板にできそうなくらいのすごい笑顔……ご機嫌だね。
でもボクも楽しみ!!
「で、武器防具類なんだが……これは各自で判断しようぜ」
残ったモノについてはそういうことになった。
好きなモノを取って、残りは売る。
もしくは、他の傭兵の方が欲しい場合は応相談って感じかな。
ボクらも問題はない。
とりあえず、物色することにしよう。
ええと……剣とか槍はボクには必要ない、というか使いこなせないからいらないね。
アカもサイズ的に無理だし。
あとはロロンか……
「んむむむ……」
むっちゃ真剣に選んでる。
アロンゾさん達にも槍使いはいないし、存分に選ばせてあげようか。
で、鎧。
コレもボクには必要ない。
だってベルトくんと喧嘩するらしいし。
パッと見た感じ、ロロンも着れそうにないし……あの子も背中の装甲があるからね、鎧は今みたいにエプロン方式じゃないと。
というわけで武器防具はなしだね。
「魔法具カ……」
というわけで、武器でも防具でもないモノ。
魔法具っぽいモノの一群を物色することにした。
でも、問題がある。
ボク、目利き、できない。
『――あら、頼りになる女神様をお忘れですか?』
お忘れしていません!神様仏様!!
『女神ですが』
ですね!ですね!!
じゃあお願いします!トモさん!!
『ふふふ、任されました……その左端から3つは照明の魔法具ですね』
あ、いりませんね。
光石あるし、全然活用してないけど暗視できるし。
ロロンにも聞いたがいらないそうなので、次!
『これと、これは魔物除けの結界魔法具ですね。等級は……おそらく中級、オオムシクイドリクラスにも効きます』
ほほう、それは役に立ちそう。
これから旅もするし、今回みたいに複数ってのもないだろうから……一個確保しておこう。
2つのうち、コンパクトで綺麗な方を選んだ。
アロンゾさんたちは山程持っているみたいなので、問題なく貰うことができたよ!やったね!
『コレは遠見の魔法具ですが壊れていますね。こっちは……あら、万歩計ですよ』
万歩計……いらないや。
測量の仕事とかになら使えるかもしれんけど。
でも、万歩計とかあるんだ……健康志向だったのかな、古代人。
『おや、コレは……ロロンさんの為に確保してください』
これは……銅色の腕輪?綺麗だけど、なにこれ。
『毒に反応して光る魔法具です。劇的という程の効果でもないですが、むっくんやアカちゃんと違って毒に対する耐性が低いロロンさんにはいいかと』
おお!仲間の防御力問題は急務だよね!
これも、問題なく許可が取れた。
あちらはそういう薬も充実されているらしい。
傭兵団ってすごいや。
「ハイ、ロロン」
「じゃじゃじゃ!?も、もっだいね……ありがとうござりやんすぅう!!」
槍を物色していたロロンは、顔を真っ赤にして喜んでいる。
ふふふ、微笑ましい。
「おやびん、おやびぃん!」
頭の上のアカが触角を握ってくる。
うひゃひゃひゃは!くすぐったいってば!!
アカも何か欲しいのかな……何かないですかトモさん!
ボクにプレゼントのセンスはなぁい!!
『まあ、アカちゃんも女の子ですね。少々お待ちを……そこの魔法具の下にある指輪、それがいいでしょうね』
ほう……なんか青い宝石がはまっているシンプルな感じ。
アカの指には大きすぎるけど、腕輪とかにすればいけるくらいのサイズかしら。
これはどういう魔法具なんです?
『【追加魔力庫】という魔法具です。簡単に言えば緊急用の魔力タンクですね、これもそれほど貴重ではありませんが……戦闘スタイルが魔法に寄っているアカちゃんにはいいでしょう』
ほほう!それはいい!!
「アロンゾサン、コレモイイデスカ?」
「構わねえよ、俺たちの指にゃあ小さすぎるぜ、ガハハハ!」
あーうん、そうだよね。
あ!女性のパライさんは……指輪が好きじゃないからいい、と。
ならいいか!
「アカ、コレドウゾ」
「わはーい!きれい、きれぃい!」
アカは、指輪を持つと光りに透かして眺め……胸に抱きしめた。
そのまま、ボクの兜に体当たりを繰り返している。
「おやびん、だいしゅき、だいしゅきぃ!」
「ハハハ、喜ンデモラエテ嬉シアダダダダ……」
喜び過ぎて帯電してるゥ!!
地味に、地味に痺れるよォ!
『ふふふ、さて……他にめぼしいものはありませんね、この場にあったものは生活に使用するようなモノがほとんどだったのでしょう。といっても古代の遺物、売ればかなりの金額になりますよ、報酬が期待できますね』
やったあ!億万長者虫になっちゃうなあ!困ったなあ!
『あ、それほどではありませんね、山分けですし』
あ、そうだった。
まあいいけどねえ!
やっぱりダンジョンって最高だ!!
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