甲蟲転生 ～虫モチーフのヒーローが好きだとは言ったけど、虫にしろとは言ってないよォ！！森を出ましたが、ボクの無双はいつですか！？ ～

第23話 迎撃！エンシェント・コボルト！！

「ロイド！前に出ろ！先に変異種をやる！！バリトン！同時にやるぞ！！」

「よっしゃ！」

「応！」

　ロイドさんが盾を巨大化させて、前に出る。

その後ろには、アロンゾさんとバリトンさん。

『アカ！前の3人に当てないように魔法で援護！』『あいっ！』

「ロロン！魔法デ援護！」「合点承知でやんす！！」

　ボクも2人に指示を出し、後方で備えつつ魔力を溜める。

ボクらはまず援護！その後は強く当たって、後は流れでお願いします！！

『なんですかそれは』

　わかんない！

「ガアアアアッ！！」

　まず、1匹の変異種が走り出てきた。

「――どおおおりゃあああああ！！」「ガギャッ！？」

　どおん、と盾が激突。

だけど変異種なだけあって頑丈なのか、吹き飛ばされずに盾に手をかけて耐えている。

でも――

「――ヌンッ！！」「――ハアアッ！！」

　バリトンさんの投げた斧が、首元に突き刺さり。

アロンゾさんが突きの形で伸ばした剣先は、大きく空いた口に飛び込んだ。

「ッギ！？ゴァ！？アッ――！？！？」

　そして、駄目押しのような形で眉間に矢が突き刺さった。

変異種の目からは光が消えて……盾に寄りかかるような形で崩れ落ちた。

「オーム・カラガリ・ハーム・ウーム……！」

　横から、ロロンの詠唱が聞こえる。

「ガアアアアッ！！」

　崩れ落ちた変異種の後ろから、飛び出してくる新手の変異種。

「――スヴァーハッ！！」「――ギャンッ！？」

　その胸に、ロロンが放った岩の槍が激突した。

切っ先が食い込み、貫通はしなかったけど……飛び掛かりの動作は中断した。

「――えぇいッ！！」

　そして、空中の変異種にアカの雷撃魔法が直撃。

全身の毛皮が逆立った。

「――オリャア！！」

　駄目押しに、ボクの左腕の棘がお腹に着弾。

魔力を十分纏わせ、以前よりも太く重くなった棘が鳩尾にめり込みんで後方へ貫通した。

「ギャ！？ゲェエ！？ッグ！？」

　変異種はそのまま地面に倒れ、何度か痙攣して動きを止めた。

よし！コレで変異種は片付けたぞ！！

「後ろのデカブツが動いたよ！こっちに歩いてきた！！」

　パライさんが叫んだ。

「いよいよ本命のお出ましか……！引き締めていけ、変異種とは大違いだぞ！」

　アロンゾさんが、伸ばした剣を振って通常に戻す。

だけど、刀身には薄青く発光するくらいの魔力が込められている。

バリトンさんも、斧に対して同じようにしている。

　来るぞ……！

「――ルオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ！！！！」

　どん、と音がした気がする。

それを認識した時には、何故かボクは膝を折って地面を見つめていた。

な、なに、これ！？

『威圧の咆哮です！体表面に魔力を流して抵抗してください！』　

　ああ、コボルト騒動の時にランゴさんが使ってたやつか！

実際に喰らうとこんな感じ、なのか！！

「――ウゥオオオン！！」「っぐ、うぅう！？」

　まず、ロイドさんが襲われた。

なんとか盾を持ち上げたけど、足の踏ん張りが効いていないみたいで……盾を跳ね上げられちゃった！

そして、そのがら空きになった胴体が蹴られる！

「――ガアッ！！」「――ごぉあっ！？！？」

　ロイドさんの鎧がひしゃげて、血を吐いた。

「こ、のォお！！」

　バリトンさんの斧が飛ぶ――が、避けられた！

エンシェントはバックステップして躱す。

バリトンさんも、足の踏ん張りが効いてないみたいだ！

「バリトン！ロイドを頼む――！！」

　アロンゾさんが飛び出した。

若干足元がふらついてるけど、一番復帰が早い！

「おやびぃん……」

　おっと！そんなこと考えてる暇はない！

なんとか魔力を流して体が動きつつあるので、まずは地面に落っこちゃったアカを回収！

「ん、ぎ、ぎぃい……！がああああっ！！」

　ぶわ、と魔力が放出されてロロンが大丈夫そうになった。

さすが、魔法を使い慣れてるだけあって頼もしいね！

「ロロン、アカヨロシク！」

「んぐう……お任せくだしゃっさい！」

　アカを受け取り、懐にそっと入れるロロン。

「援護、オネガイ！」「はぁいっ！！」

　さあ、もう一度魔力を全力で流す！！

各所の装甲が震え、やっと体がまともに動くようになってきた！

「パライサン、2人ヲ頼ミマス！」

「任しといて！ムークさんも気を付けて！」

　パライさんの横を走り抜け、倒れたロイドさんに何かの液体を振りかけてるバリトンさんに近付く。

あれ、もしかしてポーションってやつかな？

「気を付けてくれ、アロンゾを頼む」「ハイッ！」

　アロンゾさんは……いた！

剣を縦横無尽に振り回して、エンシェントと打ち合ってる！

あっちは爪なのに、剣とギャリンギャリンって感じで打ち合ってる！

火花がすごいや！

「援護、シマス！」「おお、たの、む！」

　まずは、ちょっと手前で止まって……わざとらしく魔力を充填していく！

「ッガァア！！」

　ホラ釣れた！

「ぬう――！！」

　こちらを見たエンシェントの前で、アロンゾさんが剣を思い切り振りかぶった。

「――りゃああぁああ！！！！」

　その一瞬の隙に振り下ろされた剣は、エンシェントの胸に切り込んだ。

「ギャアッ！？」

　怯むエンシェント。

胸に食い込んだ剣先はそのままに、残りの刀身がばらける。

「オオオオッ！！」

　ばらけた刀身のまま、アロンゾさんは左に体を躱し――エンシェントの背後へ抜ける。

魔力で繋がった刀身が、胸を起点にしてエンシェントの体に……巻き付いた！

「ギャ、ガ！？」

　それを追おうとしたエンシェントの顔に、ボクの衝撃波が直撃！

この程度じゃ大したダメージはないみたいだけど、行動は阻害した！

「るぅうう――アアアアアアアアアアアアアアアッ！！！！」

　そして、後ろに抜けたアロンゾさんは……吠えながら剣を振った。

エンシェントの体に巻き付いた剣の破片が、その勢いで表面を削ぐ。

「ギイイイッ！？！？ガアアアアアアアアアッ！？！？」

　胸から脇腹、そして背中を削がれたエンシェントは……こっちまで見えるほど、盛大に出血した！

これなら結構な有効打になるんじゃ――！？

　――だけど、エンシェントもすごかった。

「――オオオオオン！！」

　一声吠えると、噴出する血液が止まる。

そして、毛皮を抉った傷口まで塞がり始めている。

『回復魔法――しかも、高度な！』

　さすがボスキャラを産むボスキャラ！！

トモさん！どうしましょ！？

『むっくんと同じように、魔力は無限ではありません！攻めて攻めて――隙を与えないで！』

　了解ッ！！

　背後に衝撃波を発射、地面スレスレを飛ぶ！

「ガアアアアッ！！アアアア！？！？」

　ボクに注意を向けたエンシェントが、背後からアロンゾさんに切り付けられて悲鳴を上げた。

さっきとは逆だ！助かるゥ！！

　右手を引き絞って、さらに衝撃波！

ぐん、と加速し――懐に、飛び込む！！

「――オオオオッ！！」「ギャッ！？」

　左肩から、体当たり！

エンシェントが怯んだ隙に――鳩尾に、右ストレートをねじ込む！！

分厚く、毛皮に包まれた硬い腹筋に拳が触れた瞬間に――パイル、オン！！

「ギャアアアアアッ！？！？」

　二段階で展開した刃がめり込み、先端が浅く肉を突き破った！

さあ、こっからが！新スキルの――真骨頂だ！！

魔力、全開ッ！！

　ぐん、と棘に力が宿る。

棘はしばしのストップの後、一気に旋回を始めた。

「ギャアアアッ！？ッガ、ッガアアアアアアアアアアアアアアアアッ！？！？」

　なんともグロい音を響かせながら、棘が肉を抉ってどんどん肉へ埋まっていく。

湿った異音がくぐもるほど、腹の内部へ！

　ぶわわわわ！？

で、でもこの攻撃……しょうがないけどボクの全身に血と肉片が滅茶苦茶ぶつかってくる！？

目がァ！

目に血が入って見えない！もうちょっと打ち込む角度、考えればよかった！！

『――あぶない！おやびん！！』

「グ、ワッ！？！？」

　塞がった視界に苦戦していると、アカの念話に続いて激痛！？

「ハグルウルルルウ！！！！」

　エンシェントが右腕を掴み、首筋に噛みついてきたみたい！

いいっだ！？いっだ！？あああああ！装甲が、装甲が割れ、割れッ！？

こ、こんのォおおおおおおおっ！！

「――ギャンッ！？！？」

　打ち込んだチェーンソーを一旦引っ込ませ、回転させたまま再度展開！！

更に、ボクの体にぶつかる血の量が増える！

加えて衝撃波！衝撃波！衝撃波ァ！！

　何度かの発射でエンシェントの、噛む力が弱まった！

「――喰、ラェエッ！！」

　その隙に左足を持ち上げ、たぶん下腹部に蹴り！

そして――間髪入れずに、足のパイルを射出した。