甲蟲転生 ～虫モチーフのヒーローが好きだとは言ったけど、虫にしろとは言ってないよォ！！森を出ましたが、ボクの無双はいつですか！？ ～

第60話 激闘！虫食いトカゲ野郎！リベンジ！！

「ガアアアッ――」

　大きく開いたオオムシクイドリの口。

丸見えになった喉の奥に、魔力が集中するのが見えた。

むううん――衝撃波、発射ァ！！

　一瞬早くボクの衝撃波が射出され――かき消されたァ！？

まっず、まずい！！

インセクト・ジャンプゥ！！

　思いっきり跳んだ足元を、白いブレスが薙いだ。

ひええ、当たったら痛そう！

ブレスって衝撃波かき消すんだ！？

『いえ、そういうわけではありません。含有する魔力の量が違いましたので』

　ああ、そういうことか。

――納得してる場合じゃない！

　空中で衝撃波を発射。

斜めに跳んで、今まさにボクを殴ろうとした翼を躱す。

ひいい、風圧！！

「ガアアアッ！！――ギャッ！？」

　空中のボクを追おうとしたオオムシクイドリの胸元に、アカの稲妻が直撃した。

よおーし！最高の子分だよ、アカ！！

　背後に衝撃波を放ち、感電で動きを止めたオオムシクイドリに突撃。

「オウ――リャアッ！！」

　突撃した勢いを乗せて、翼の付け根を左手でぶん殴る。

そして、パイルオンッ！！

「ギシャアアアアアアッ！？！？」

　どどん、と棘が皮膚に食い込む。

大地竜よりは硬いけど、エルフの鎧よりは柔らかい！

――ボクの攻撃は、コイツに通用するっ！

「モッテケーッ！！」

　食い込んだ棘を、射ァ出ッ！！

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ！？！？」

　至近距離での射出の威力は絶大！

オオムシクイドリはよろけ、ボクは反動で後ろへ跳ぶ。

か、貫通してない！突き刺さって血が噴き出てるけど、やっぱり硬い！

「ギャアアアアッ！！」

　まっず！？

無事な方の翼がボクの方に！

こんのっ――！『隠形刃腕』展開ッ！！

「ギャッ！？！？」「グゥウ！！」

　背中から突き出した刃が翼に突き刺さり、薄い皮膜？の部分が裂けたけど――翼は止まらない！

胸をぶん殴られ、ピンボールよろしく弾き飛ばされた。

いっだい！？

「ギ！？ガ！？ゴ！？」

　地面にバウンドし、木の幹をなぎ倒し、最終的に大岩にめり込んで止まった。

あ、頭がクラクラする……手足も付いてるけど、背中の装甲が割れた感触がある！

「ムーク様ァ！！」

　視界の隅で、ロロンが低い体勢で疾駆。

ボクに気を取られてるオオムシクイドリに向けて、凄い勢いで走っている。

「オーム・ラウドール・ザンガ・バンマ・スヴァーハ！！」

　おおおお！？

ロロンの足元に地面がめくれ上がり、槍の穂先に纏わりついている。

あっという間に、彼女の身長を遥かに超える大槍が完成した！

いいな！それいいなあ！！

「――るぅああっ！！」

　それを抱え、ロロンが跳ぶ。

背後の気配に気付いたオオムシクイドリが振り向こうとするが――もう遅かった。

「――どっせぇええい！！」「ギャアアアアアアアアッ！？！？！？」

　轟音と一緒に振り抜かれた大槍は、さっき隠形刃腕が切りつけた翼の――先から三分の一辺りを切断した。

うっひょお！！ボクより小さいのになんてパワーだ！！

すっごい！！

「えぇーいッ！！」「アギッ！？！？」

　そして、アカの雷撃も続く。

これで行動キャンセルだ！

むぐぐ……今のうちに体勢を立て直さなきゃ！

　岩から体を起こし……いや待てよ！？

ここなら……反動を消せる！！

『アカ！復活したらまたバリバリってやって！』『あーいっ！おやびん、がんばて！』

　カワイイ激励を聞きつつ、全力で魔力を――右腕に！

お腹から血管を伝って……右手に纏わりつかせるように！

むんむん――むんむんむーん！！

うわわ、鎧にヒビが！？

「えぇーいッ！！」「ギャガッ！？！？」

　アカの援護射撃を見つつ、充填完了！

「ロローン！！離レテッ！！」「合点！！」

　両足のパイルを展開！重心を下に――飛んでけェ！インセクト・パイルッ！！

　――肘から先の装甲を破損させながら、爆発的な勢いで棘が射出される。

背後の岩が割れるほどの反動を、歯を食いしばって耐える！

「ギャアアアアアアッ！？！？！？」

　頭を狙った棘は、僅かに狙いを逸れた。

オオムシクイドリの首を抉りながら、背後に抜けていく。

惜しいけど！これだけ魔力を込めれば貫通はできるな！

トモさん！棘修復！最優先！最速で！！

『了解です』

　ダッシュ！

地面を踏み割りながら、一気にダッシュ！

三段跳びの要領で、踏み切って――衝撃波アフターバーナーッ！！

「――セイヤァアアアアアッ！！！！」

　重力を無視した多段加速で、痛みに動きを止めたオオムシクイドリの胸に蹴りをぶち込む。

足裏から、何か硬いものが軋む感触がした。

同時にボクの足からも！なんでさ！！

　が！パイルオン！そして射出ゥ！！

「ゲギャッ！？！？アアアアアアッ！？！？」

　魔力をあまり込めてなかったので棘は貫通せず、だけどオオムシクイドリは大きく体勢を崩した。

ボクは足首が変な方向に向いたまま、反動でちょっと吹き飛ぶ。

超痛い！

　どずん、と倒れ込むオオムシクイドリ。

「お見それいたしやんした！しぇば、ワダスもッ！――オオオオオオオオオッ！！」

　ロロンが倒れたオオムシクイドリの体を駆け上がり、高く高くジャンプ。

大槍を抱えたままなんであんなにジャンプできるんだろ……すっご！

「――えぇえええいやっ！！」

「ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！？！？」

　ロロンはジャンプの頂点で大槍を真下に構えて――思いっきり突き刺した。

伸びた刃の半分以上が、オオムシクイドリの胸に埋まる。

「アカちゃん！」「あいっ！！」

　ロロンは槍から手を離し、オオムシクイドリを蹴り付けて後方へ離脱。

いつかのように、丸まった姿で。

　――そして、刺さったままの槍にアカの稲妻が直撃した。

「――――！？！？！？！？」

　避雷針的な感じで、オオムシクイドリの全身に、いや体内まで雷が殺到する。

奴は痙攣し、体から放電をしつつ煙まで撒き散らしている。

声も出せないって感じ。

な、なんちゅうえげつない連携攻撃なんだ……

『むっくん！油断をしない！まだ生きていますよ！』

　トモさんが言う通り、首が抉れて胸に棘や槍が刺さっても――オオムシクイドリは動いている。

くそ！決定打がない！

ボクの攻撃は効きはするけど、一撃で殺せるほどの威力はないんだ！

「ガアア！アアアア！！ギシャアアアアアアアアアアアアアッ！！」

　オオムシクイドリが吠え、出鱈目に首を振りながらブレスを放った。

あっぶ、ない！？

なんとか避けたけど、木が何本もスパァっ！て感じで切れた！

　一撃……一撃か！

やってみるかァ！！

「フウゥウウウ……！！！！」

　ブレスを放った後のクールタイムに合わせ、魔力を全力で溜める。

お腹の下あたりから発生した、全ての魔力を――額の触角へ！

　集まる魔力に触角が震え、波打ち……そしてひびが入った。

「ギィイイイイイイイ！！ガアアアアアアアアアアアアッ！！」　

　魔力に反応したのか、オオムシクイドリがこちらを向いてボクを睨む。

口から血を吐きつつ、顎を大きく開け――魔力が、凝縮されていく。

「ムーク様！」「おやびんっ！？」

　エネルギー充填！(目分量)１２０％ォ！！

「――喰ラ、エェエエッ！！」　

　ブレスが放たれるよりも一瞬早く、触角を崩壊させながら――衝撃波を放った。

あ、やば、反動のこと考えてなかっ――

・・☆・・

「おやびん！だいじょぶ？だいじょぶぅ！？」

「……ダイジョバナイ」

　気が付くと、視界一杯にアカの顔が見えた。

涙目で、ボクの頬に抱き着いてきた。

　と、トモさん……どうなってんの、ボク。

『衝撃波の反動で吹き飛ばされて……木を13本貫通して露出した岩肌にめり込みました。現在、右手と左足の一部、そして背中がその衝撃で破損しています』

　結構な重傷！？

どうりで体中が痛過ぎるはずですよ！！

　あ！ヤバ！

オオムシクイドリ！オオムシクイドリはどうなって――

「ムーク様ァ！！大金星！大金星でござりやんす！！」

　ボクが吹き飛んできた方向。

なぎ倒された木の向こうに……オオムシクイドリの体に乗って、嬉しそうにボロボロの槍を突き上げるロロンが見えた。

　――オオムシクイドリの頭は、上顎から上が爆発したようになくなっていた。

どうやら、ボクの素敵な衝撃波がやってくれたらしい。

『素晴らしい戦果です。謎芋虫だったむっくんが本当に立派になって――それはそれとして、修復を開始します。体が治ったら魔石、肉、そして換金できる部位を収集しますよ』

　わぁい、やったあ……

強くなったなあ、ボク。

相変わらず、攻撃力に反比例して防御力がクソ雑魚だけど、それでもやったぞ～！！

……やっぱりいる！鎧がいる！！