ぬけだせ!激ヤバの森!!
第30話 森が黒い!過去も黒い!おまけにお先も真っ暗だ!!
『むっくんは暗視ができますが、今日のところはもう休みましょう』
了解でーす。
黒の森の中の、デカい木のデカいウロ。
そこに腰を下ろし、ボクは一息ついていた。
「おちかれ!おやびん!おちかれ!」
「オツカレ~」
キャッキャと楽しそうなアカを前に、ポーチに手を突っ込む。
むん……ヨシ!
ボクの手の上には、ずっしりとした2つのリンゴがある。
このポーチって本当に便利!
「ドウゾ~」
「あんぐ!むぐ!おいし!おやびん、これおいし!!」
美味しいよねえ、リンゴ。
まだ23個あるのだよ、ふふふ。
おひいさま、マジでありがとう。
ボクもがぶり、しゃくしゃく。
……はぁ~!美味しい!美味しい!!
コレがお馬さんの餌だって言うんだから、エルフの国ってとんでもないや!
未来永劫行けなくなったのが残念でならぬ。
まあ、国はエルフの国だけじゃない。
この先の冒険に期待ですね、期待。
ボクもアカも、食べたものが100%魔力になるから栄養バランスとかに気を遣う必要がないのが便利だよね。
……まあ、そのおかげで死体ばっかり食べるハメになってるんだけどもね~?
あ、そうだ。
トモさんトモさん、今のうちにアカのスキル見せて。
『ああ、そうですね。表示します』
見慣れた半透明のプレートくんが出た。
・個体名『アカ』
・保有スキル『念話』『念動力』『雷撃魔法』『火炎魔法』『衝撃・魔力反転装甲』『魔力吸収効率化』『疑似撃発口吻・多弾射出』『剥離装甲刃』
ウワーッ!?魔法!魔法ジャンルが増えてるゥ!!
あと他にもチラホラ!チラホラ!!
トモさん!解説お願いします!!
『『火炎魔法』はその名の通り炎を操る魔法ですね。迂闊に森では使えませんが……これは素晴らしい!ここでは使用可能です!』
え?ここ森なんスけど。
『黒の森の木々はとても頑丈で、耐火性に優れています。ここでなら延焼を気にせずに、思う存分使用できますよ……戦闘になったらアカちゃんに試してもらいましょう』
あー……そういえば、めり込んだ時に無茶苦茶硬かったね、ここの木。
なんにせよ、攻撃の手数が増えるのはありがたいねえ。
あの、『反転装甲』ってまさか……攻撃を全部跳ね返せるってことォ!?
無敵じゃん!子分なのにおやびんよりも無敵じゃん!!
『いえ、そのような都合のいいスキルはありませんよ。これは使用者の力量に応じて、『ある程度の』攻撃を減軽し、逸らすか反射するモノです……進化したといえアカちゃんはまだ子供です、過信は禁物ですよ』
……うん、そうする。
なるべくアカに攻撃が当たらないようにしないとね。
っていうか撃発口吻まだあるんだ。
普通の?口になってるのに。
しかも多弾ってなんじゃろ? ちょっと確認してみっか。
『アカ、食事中ごめんねえ。あのさ、口からなんかこう……攻撃?出せる』
ちょうどリンゴを齧り終えたアカに念話。
「んく……けぷ。あーい!ん、んんん、ん~!!!!」
元気よく答えたアカが、大きく口を開く。
すると、喉の方から細かい針のようなものが次々と射出された。
ボクのが単発なのに対して、どだだだだだ!!って感じ。
……ひえええ、ウロの壁にハチの巣みたいな穴が空いてるゥ……
あ!これ射出ってことは寿命使うの!?
二度とさせないようにしなきゃ!!
『いえ、あれは違いますね。一見針に見えますが純粋な魔力体です』
そういえば『疑似』って書いてあったな……いいなあ!リスクなしで連射いいなあ!!
『魔力は使いますよ? 射程はそれほどでもありませんし、アカちゃんの切り札のようなモノでしょうね……あの子はどう見ても遠距離戦に特化していますし』
確かに。
近距離防御みたいな使い方の方がいいかも。
アレだ、空母のファランクス?しーうす?みたいに。
『ありがとねアカ。はいおかわり』
『わはーい!』
協力に感謝し、新しいリンゴを渡しておく。
明日からの逃走中も果物だけは探しておこう。
緊急時の栄養補給にもなりそうだ。
さて最後は……『剥離装甲刃』?何のことやらサッパリだ。
『コレはですね、アカちゃんの体を包んでいる硬い装甲板を剥離させて刃のように飛ばすスキルです。ある程度は念動力を使用して追従や突撃をさせられるはずです』
〇ァンネル!ファン〇ルじゃないか!!
なんかアカのスキルカッコいいの多くない!?
『こちらも寿命は使用しないようですが、装甲の再生には何日もかかりますし……なによりその間防御力がかなり低下するでしょうね。使い所には注意させたほうがいいでしょう』
だね!
これも口マシンガンと同じく、アカの最後の砦的な感じにしておいた方がよさそうだなあ。
どっちにせよ近距離というか前衛?はボクが頑張るんだからさ。
アカには後方支援をお願いしよう。
いや~……進化ってすごいねえ。
よく考えたらクソ雑魚芋虫が謎の二足歩行カブトムシになるんだし。
アカなんか芋虫から妖精よ?
物理法則さんがブチギレて、インドあたりに旅に出そうなくらいにはおかしい。
『この世界ではそれが普通ですよ、むっくん』
それを言われると何も言えないなあ。
ま、確認作業も終わったし今日の所は寝るとするかなあ。
ごろーん。
ああ、芋虫状態の時はなんとも思わなかったけど……寝っ転がるの気持ちええ……
気分だけでも人間の時に戻れるからかな?
人間の時の記憶ないけどね!HAHAHA!!
……そろそろこのネタ、マンネリ気だなあ。
「おやびん、ねる?ねる?」
「チカレタ、ネル~」
「アカも!アカもねる!」
うひゃひゃひゃ!
だから触角に飛びつくのはやめってば!
「アシタモ、ガンバロ。オヤスミ、アカ」
「おやしゅみ!おやびん!」
そのままアカがボクの首のあたりにするする降りてきた。
首のあたり、ね。
厳密に言えば首ないもん、ボク。
まあいいや、急に眠くなってきた。
寝るぞい、ぞいぞい……
『おやすみなさい、むっくん、アカちゃん』
ぽやしみ……
・・☆・・
『○○、本当に忌まわしい子……』
うわあ、また変な夢だよ。
なんか、40代くらい?の男女が部屋の中にいる。
『あなた、何故あの子なのです!何故由緒ある――の本家筋ではなく、あのような傍流の……』
おばちゃんがむっちゃキレてる。
このノイズがかかったみたいに聞こえる『〇〇』ってのが前世のボクなんだろうか?
この前の美人さんの時は一人称視点だったけど、これは……天井くらいから見下ろしてる感じ。
うーん、映画でも見てるようなアングルだ。
不思議な夢だなあ。
『やめろ!もう何も言うな!!誰が聞いているかもわからんというのに!!』
『この家の中で他に誰が聞いているというのですか!!』
はーい!ボクボク、ボクが聞いてますよ~!
でもアレよね、いきなり映画を途中から見せられてる感じで全然乗り切れないんだよねえ。
頼むから初めから見せて?
『決まっているだろう!あの方が――』
『あなたまでそんなことをおっしゃるの!今の時代にいつまでも黴の生えた迷信を――ぃ、いぃ、お、あ、あ!?』
『っひ!?』
うわあ!?
おばちゃんの方がいきなり顔を真っ赤にして震え始めたァ!?
なんか、息ができなくって苦しそう!
何かの発作かな?おっちゃん、救急車呼んだげて!!
『お、お許しを!――様、どうか!どうかお怒りをお鎮めにになってください!平に、平に!!』
いやいやいや。
おっちゃん、奥さんの危機ですってば!
土下座して南無南無してる場合じゃないでしょ!
お葬式はまだ先だと思うよ!?
『――!!お前も誠心誠意お詫びしなさ……ああ、駄目か』
ウワーッ!?
おばちゃんの、おばちゃんの首が!!首が真後ろに向いちゃった!!
目が半分飛び出してるし、これもう即死でしょ……
え!?これホラー映画ジャンルの映像だったの!?
うわ……うわあ……グロ、グロすぎ。
魔物の死体よりもグロい!!
『――お母様!お母様ァっ!?』
ふすまが開いて……うわ、この前のサムライソード美人が入ってきた!
あ、そういうご関係なんですね!?
ストーリーが繋がってきたぞ!!
『お父様!こ、これは――』
『それ以上喚くなッ!!』
おっちゃんの男女平等パンチが、娘さんの顔にクリーンヒット。
娘さんは首が回転したおばちゃんの死体と一緒に畳に倒れ込む。
家庭内暴力すごいですね。
『いいか!我が家が今日あるのは全て、我々の努力なぞ及びもつかぬ方の恩恵だということをゆめゆめ忘れるんじゃない!!あのお方のなさることに、疑問を差し挟むことなぞ許されんのだ!思い上がるな!!』
おっちゃんが、倒れて泣いている娘さんにマジギレして怒鳴っている。
こっわ……奥さん死んだのに無茶苦茶鬼畜じゃん。
『う、ううう、うううう……!!っひ、ひぃ――!?』
娘さんが物凄い顔でおっちゃんを睨み……その背後を見て目を見開く。
え!なんかいるのそこに!?そこだけ画面外みたいになってて見えないんですけど!!
見えない方がコワイんですけど!!
『――こんどは、ないぞ。あのこのほかは、なにもいらぬ』
前の夢の時に聞いたような綺麗な声が、確かに聞こえた。
・・☆・・
「おやびん!あさ!あさぁ!」
むううん……なんか寝覚めが悪いぃ……あんなグロ映像見たからだよォ……
アカ、胸の上で連続ジャンプするタイプの目覚ましは危ないからやめようね。
『うなされていましたよ、また例の奇妙な夢を見たのですか?私の方では観測できませんね……むっくんの損傷していた脳が原因でしょうか』
この世界に脳外科とかないよねえ……ま、今のボクには関係のない夢だよ。
何回見ても、映画を見てる感じしかしないもん。
○○てのが本当にボクかもわかんないしさ。
どの道この世界じゃ、なんにも関係ないじゃん。
『さーてアカ、リンゴを食べたら今日も頑張ってダッシュしよう!このえげつない区間をさっさと抜けるんだ!』
「りんご!りんごしゅき!おやびんのつぎ、しゅき!!」
朝からかわいいことを言うアカにほっこりしつつ、ポーチに手を突っ込むのだった。
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