第13話 スキル確認ってテンション上がるよね!……ちょっとはひたらせろよォ!!

『やったー!かっこいい!ボクかっこいいよー!!』


『かっこい!かっこい!』


 どうも!進化後の体があまりにも強そう&カッコいいすぎて、アカを背中に乗せてウロの中を回転しているボクです!

進化したお陰で手足もむっさ機敏に動くよう!!

ハハハハハ!なんだこの全能感!!


『そろそろスキルの確認に移りたいのですが』


 アッハイ。


『わは!たのし!』


 あっやべ。

急ブレーキかけたらアカが吹き飛んだ。

本人は壁をバウンドして楽しそうだからよかったけどごめん!


『さて、むっくんのスキルです』


 あ、さっきお世話になった半透明ボードくん。

お久しぶり~。



・個体名『むっくん』

・保有スキル『視覚補助(熱源)』『魔力吸収』『衝撃波(中)』『高性能多脚制御』『撃発刺突棘・二段』『耐衝撃甲殻』



 お、おお~!!

個体名の間抜けさに一瞬スン……ってなったけど、なんかスキル増えてる!


『……むっくんがご不満ですか?』


 あっなんかトモさんが落ち込んでる気がする!

違う違う大丈夫!むっくん大好きです!


 さ、さあて。

楽しい楽しいスキル確認の時間だ!


 『視覚補助(熱源)』?なんとなく想像できるけど……できるかな?

あっ!視界が緑ベースに切り替わった!

やっぱりサーモグラフィ的な感じだ!


『おやびん?』


ホラ!アカの方向見ると真っ赤な芋虫シルエット見えるし!

おー……今はまだ明るいから実感湧かないけど、夜間にも超役に立ちそう!


 で、『魔力吸収』はいつものね……『衝撃波』が(中)になっとるがな!

(小)の時点で結構威力が上がったからな~!破壊力がどれくらいか確かめるのが楽しみだ!


 『高性能多脚制御』はアレだね、さっき実感した。

手足をシャカシャカ動かす速度が上がったし、なんというか細かい作業速度も上がってそう!

指あるもんね!二本だけど!!


 『撃発刺突棘・二段』は……試してみよ、ふんぬっ!


 ――ジャキキン!!


 うっひょお!射出速度がむっちゃ上がった上に、前よりも長くなってる!

前は肘?と手の間位の所にくっ付いてたんだけど、今は肘?まである!

届く範囲は以前の二倍くらい!しかも太くなってる!

そして……今のすっごい!二段階に伸びる!!

一段目は前と同じ場所、二段目はさらに遠くまで!

ふはー!アガる~!!何回もやっちゃう!何回も!!


『魔力が減りますよ』


 そうでした!

なんかロボットみたいでかっこよくて、つい……


『『耐衝撃甲殻』は読んで字のごとく、ですね。遂に防御力が上がりましたよ、むっくん』


 心なしかトモさんのテンションがちょっと高い!

トモさんが嬉しそうだとボクも嬉しいよ!


「キューッ!キュ!」『おやびん!かっこい!かっこい!』


 アカも嬉しそうだ。

ボクもおやびんとして誇らしいよ。


 ……っていうか、アカ進化しないのね?

ボクの時はすぐに進化したのに。

この子もボクと一緒に結構な魔物食べてるんだけどなあ?

そこんとこどうなんです、トモさん。


『アカちゃんはレア個体ですので。ゲーム風に言うと必要経験値が多く必要なのです』


 むっさわかりやすい説明だ。

なるほど……ゲームのレアキャラって初期性能高いけどレベルアップ遅かったりするもんね。

ゲームをやった記憶は皆無だけど、そういうことはわかるんだよなあ。

むむむ……ボクの過去がちょっと気になるぞ、ちょっとだけど。

さっきへんな夢見たからかなあ……


 ……でも、思い出せないもんは仕方ないもんね!

正直過去に思いを馳せている暇はないもん!ボクに!!

そういうのはいつかでいい!いつか!

もっと長生きしてからでいいや!


 よーし!

早速外へ出てこのニュー素敵ボディの性能を試さねば!

行くぞアカ!おやびんの雄姿を――


『――むっくん、強い魔力反応です。動かないでください』


 はい動きません。


『アカ~、なんか怖いの来るから端っこでおとなしくしとこうね』


『こわいの!?はぁい!』


 ぴゃっと背中に乗ったアカと一緒に、限りなく端っこに避難。

息を潜める……そういえばボク今まで息してないな!?

あ、昆虫ってお腹の横から呼吸?するんだっけ?

意識してないからわかんなかったよ。


『来ます……こちらには気付いていないようですが、いつでも離脱できるように備えていてください』


 なんか、すっごい大きなモノが羽ばたく音がする。

こ、これは、まさか……まさか!


 どずず、と轟音。

同時に、木がみしみしと軋む。

ひええ、まるで地震だよ……


『――アレは、水晶竜です』


 ウロからは、キラキラと輝く青い水晶で全身を覆われた……クソデカドラゴンが見えた。

前に見た大地竜?よりもさらにデッカイ!

たぶん、学校とかの25メートルプールくらいの体長がありそう!

今のボクじゃあ、逆立ちしたってかないっこないのは見ただけでわかる。


『そうですよ、多少防御力は向上しましたが……デコピンで消し飛びますよ』


 何故チョイスがデコピンなのか。

まあ、指先一つでダウンさってことだろう。

ボクもそう思う!


『ボクよりキラキラだね、アカ』


『……おやびん!かっこい!あれより、かっこい!』


 泣きそう。

涙腺ないけど。

なんだ?この最高の子分は。

三千世界に響き渡るいい子ですよ、アカは!


『念話も控えてください。微弱とはいえ魔力が出ます』


 はい。

しー、しとこうねアカ、しーっ。


 どずん、どずん。

地響きをさせて、水晶竜が歩いている。

こことの距離は50メートルくらい、かな?

遠ざかる感じだから大丈夫だとは思うけど、地上で何してるんだろう。

竜らしくずっと飛んでいなさいよ。


『地表に向って魔力を放射していますね。何かを探しているようです』


 もうちょっと遠い所で探し物してくんないかなあ。

アイツが飛んで行ったら、ボクたちも逃げた方がいいね。


 あ、止まった。

きょろきょろしていたのに、首までピタッと。

探し物見つけたんかな?


『離脱してください!できるだけ遠くへ!!』


 うひゃあ!?トモさんがむっちゃ焦ってる!?

こんな声聞いたの初めてだ!!


『――アカ!しっかり掴まってるんだよ!!』


『あい!』


 ボクの声に、アカが背中にしっかり密着したのを確認。

その瞬間に、ウロから飛び出した。


 枝に飛び移り、水晶竜と反対方向に逃走開始!

うわあ!むっちゃ足速くなってる!!

この状況じゃ有難いけど、体がまだ慣れてない!

だけどトモさんがあんだけ言うんだ、必死で行くしかない!!


 アカは謎の粘着力でしっかり貼り付いてるし、落っことす心配はないな!

動物じゃなくって虫ボディだから、背中はあんまり動かないし!


『大気中の魔力を吸収……体内で凝縮しています!もっと離れて!もっとです!!』


 了解ですう!

唸れ!ボクのさらに格好よくなった手足!

グリップ力も上がってるから調子いいぞ!


 枝から枝へ飛び移りながら、必死で逃げる!

さながら猿飛佐助だね!

虫だけど!!


『おやびん、こわい!』


『ハーッハッハッハ!安心しなさいアカ!おやびんの背中はこの世で一番安全な場所だからねえ!』


 おお、アカが怯えとる怯えとる。

まあしょうがないよね、異世界歴短いボクにもヤバい状況だってわかるし!


『魔力吸収、並びに凝縮反応終了――!あそこです!あそこの岩山の裏に!!』


 おお!こんな森の中で珍しい岩山さん!

目測10メーターはあるぞ!小高い岩って感じ!


 枝から枝に!そして……ジャーンプ!!

……なんか滞空長くない?

あ!ひょっとしてアカが浮かしてくれてんの!?

怖いだろうに、できた子分ですよ!


 地面に着地してダッシュするつもりだったけど、この分なら速度を維持したまま岩山の近くまで行けそう!

楽しい!滑空楽しい!

この面倒ごとがすんだら絶対にまたやろうっと!


 ハイ着地ィ!

そして大地を噛む素敵レッグ!

ダッシュ&ダッシュぅ!!


 どっかの峠道でも大活躍しそうなくらいの慣性ドリフトをかましつつ、速度を維持したまま岩山の……裏へ!!


『魔力反応増大!頑丈そうな岩の影に入って――』


 トモさんの声の途中で、視界が真っ白になった。

うわ、明るい!?転生した時の部屋?くらい明るい!!


 ――遅れてとんでもない轟音が響いて、それきりなにもわからなくなった。



・・☆・・



『むっくん、むっくん、起きてますか』


 お、おおん?

むあ……今、今起きようと思ってたとこォ……


 むくり、と体を起こす。

えーと……よかった、どこも欠けてないや。


 じゃない!アカは……


『むにゃ、むにゃ……』


 あ、背中にいるわ。

念話で寝言とか天才か?ウチの子分。


『なんとか間に合いましたね。肝はないですが、肝が冷えましたよ』


 トモさんの小粋なジョークが飛び出した。

間に合ったようならよかったあ、でも、さっきのなに?


『水晶竜のブレスです。魔力を口腔内に凝縮して放つ、竜種のまあ……必殺技ですね』


 はえー……なんでそんなもんを地面に放ったんだろう。

親を大地に殺されでもしたのかな?


 まあいいや。

ちょっと見に行ったろ。

ここまでは届かなかったし、ブレス。


 ……む?あれ?

なんか……変じゃない?

景色が変じゃない?


『ここに岩山があって助かりました』


 ひ、ひええぇえ!?

さっきまで逃げてきた方向の森が、ぽっかりないよォ!?

あれからどれくらいの距離を逃げたのかわかんないけど、いびつな円形に森がなくなってるよォ!?


 だって……かなり遠くなったけど見えるもん、水晶竜!

背中側なのに、あんなに破壊力があるんだ……異世界、こわっ!!

 

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