第13話 学園祭会議

 5月8日 16:11 深山中・高校 1階 生徒会室


「はーい、今年も後1ヶ月で学園祭で~す!」


「「ワ~!!」」


 学園祭まで残り1ヶ月!

 学園祭は毎年6月3週目の土日に実施される。

 世間じゃ10月開催が多いらしいが、ウチでは何故か6月。

 10月枠は体育祭に充てられている。


「しかしっ! 流石に3人で学園祭の準備は出来ないので、今年もお仕事はありませ~ん!」


「「わぁ~!」」


 仕事が減ったのは良いが、減りすぎだ。

 まぁ、6人でも諦めた物を3人で出来るはずはない。

 納得の采配だ。


「クラスの出し物に専念してね」


「「はーい」」


 さて、いよいよこの生徒会の存在意義が分からなくなって来た。

 2人しか居ないし、生徒からの意見も届かない。

 ……いつ滅ぶのかな? この生徒会。




 5月9日 13:14 高校1年1組


「学園祭の模擬店決めるよ~」


 生徒会の仕事は無いのでクラスの物に専念。

 中学生までは展示だけだったのでただただ遊び回るだけ。

 高校生になったので、遂に模擬店を運営する事が出来る!


 彩華が司会、私は書記。

 彩華が会長だし、私の方が背が高いしね。

 因みに担任はいつも通り何処かに行っている。


「皆何か無い~?」


 皆考え始めた。

 隣や周辺の人と相談する人も居る。


「ねぇねぇ橘花ちゃん」


「ん~?」


「橘花ちゃんは何か無い?」


「え~? う~ん……」


 学園祭の模擬店……。

 何だろう、何が定番なんだろう。


「やっぱり、ご飯物?」


「やっぱり定番やね、焼きそばとか?」


「あ~、焼きそばええね」


 焼きそばかぁ、あんまり食べた事は無いけれど、美味しいのだけは分かる。

 ネットとか見てても、学園祭の焼きそばは定番だ。


「チュロスとかどう?」


「あ~!」「良いね良いね」

「定番やね!」「去年どっかがやってたね~」


「……チュロス?」


「「「「え?」」」」


「き、橘花ちゃんチュロス知らんの?」


「うん、知らん、なんそれ?」


「「「「えぇ~っ!?」」」」


 今ここで、初めて聞いた単語、チュロス。

 でも他の皆は知ってる……。

 ともかく、一体何なんだろう?


「コレコレ! こんなん!」


 彩華がスマホでそのチュロスと言う物を見せてくれた。

 棒状の揚げ物らしい。

 そして、お菓子に分類されると言う。

 不思議なお菓子だ。

 にしても、私だけ知らないのは妙だなぁ。

 ……ま、いっか! そんな事考えても、どうせ結論は出ない。


「へぇ~、こんなんなんやね」


「そうそう。 あ、皆他に何か無い~?」


 このチュロスを筆頭に様々な案が出た。

 焼きそばは勿論の事、焼き鳥やポテト、クレープ等々。

 食事計では無い案も当然出た。

 お化け屋敷、迷路、射的等の系統の物も次々に出された。

 しかし、どれも決め手に欠けていたのだ。


「あ、メイドカフェとかどう?」


 天塩の発言は皆の注目を集めた。

 メイドカフェ……!

 彩華のメイド服姿……、あ、良い、着せたい。


「めっちゃ良いね!」「良いじゃん、メイドカフェ!」


 あちこちから同意の声が上がる。

 これはメイドカフェで決定かな。


「じゃ、じゃ、そろそろ多数決取るよ~。 メイドカフェやりたい人~!」


 次々手が上がる。

 そして、最終的に18人全員が手を上げた。


「じゃ、メイドカフェで決定~!」


 こうして、人生初めての模擬店はメイドカフェに決定した。

 彩華のメイド服姿、楽しみだな~。

 絶対可愛い、可愛くないはずが無い。


 どんなメイド服かな?

 ロング丈? ショート丈?

 どっちも良いなぁ~。


 クラシカルメイドも良いし、一般的なメイド喫茶のタイプでも良い。

 どちらにせよ、似合う事は確実!

 彩華の姿を想像するだけでニヤケが止まらない。

 ヘヘヘヘヘヘ……。


「――橘花ちゃーん?」


「へぇっ!?」


「あ、やっと気づいた」


「え、え、何、何?」


「書いてよぉー、さっきからずっとペン止まってはるよ?」


「え? 何か話しとった?」


 あれ、全く聞いてなかった。

 今、何話してたのかな。


「も~、出すメニュー決めとったやろ~?」


「え、そうなん」


 彩華の事を想像してたら全く聞こえなかった。

 でも、皆の彩華を見る限りどうやら話をしていたのは事実の様だ。


「え、んで、何書けばええんやったけ」


「んーとね――」


 こうして、話し合いは順調に進んだ。

 出すメニューも無事決定。

 メイド服のデザインについては少々奇妙な提案が採択された。


 この深山学園は私を含めメイドさんを雇っている家が多い。

 ウチみたいに皆が想像するようなクラシカルメイド服を着ていたり、普通に私服を着ていたり、家主の趣味に沿った服を着てたり等々。

 つまり、私達の近くには本職の人が大量に居る。

 ……特にウチは。

 ならば、本職に決めて貰おう。

 そう言う流れになったのだ。


「じゃあ、次は出す料理――」




 16:35 1階 生徒会室

 クラスの会議は無事に終了。

 今日だけで殆ど決まった。

 唯一決まって無いのはメイド服のデザインだけ。

 因みに、経費は学校持ちではなく、全て私持ち。

 まぁ、膨大な収入に比べたら大したこと無いだろうし。


「えへへ、色々注文せんとね」


「せやね、早い方が変更も効くやろし、今の内にね」


 さてと、注文注文。

 PCを開いて、機材を探す。

 今探しているのはコーヒーメーカー。

 カフェって付いてんだからコーヒーの1杯も出さなくてどうする。

 因みに私はまだ飲めない、まだ苦いのよ、アレ。


「ねぇねぇ、橘花ちゃん」


「ん? どしたの?」


「メイドカフェ、実際に行ってみーひん?」


「ん? と言うと?」


「ほら、どうせやるなら実物見た方がええやん?」


「それもそうやな」


 そっか、実際に見に行くのも大事やね。

 ネットでいくらでも情報は手に入るけど、その場の雰囲気は現地に行かないと確認できない。

 うんうん、良い考えだ。

 そう言えば、メイドカフェって――。


「……何処にあるん?」


「……何処にあるんかな?」


 分かんない。

 メイドカフェ乱立地域みたいなのがあるのだろうか。

 あ、こういう時こそインターネットよ。

 Googlemap先輩に場所を聞いてみよう。


「メイドカフェ……、っと」


 検索の結果、ピンが大量に建てられたのは大阪。

 京都にも少し存在する。


「メイドカフェ乱立地域ってあるんやね」


「ね~」


 乱立してるのは大阪、日本橋周辺。

 そう言えば、大阪の秋葉原と呼ばれた事を何処かで耳にした。

 そう言う場所ならば乱立してるのも納得か。


「何処行ってみる?」


「う~ん、何処がええか分からへん……」


「ね~、分からんよね」


 彩華にも私にも分からない。

 至極当然の事である。

 しかし、実際に行ってみる事はとても大事。

 適当に選んで行ってみよう。


「ん~、ここにしよ!」


 乱立する大量のピンの中から選んだのは"Maid Holic"と言うお店。

 調べた感じ、どうやら全国展開しているメイドカフェの様だ。

 メイドカフェって、全国展開するんだ。


「ねぇ、彩華」


「なぁに~?」


「日本橋ってどうやって行くん?」


「……私に聞かれても知らへんよ?」


「やっぱ知らへんか」


「知らんよ~!」


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 大変長らくお待たせを致しました......。

 いや、ホント、すみません......。

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