第12話 お家デート?

 5月4日 13:34 七条宅 寝室


「入って入って~」


「えへへ、お邪魔します!」


 今日は彩華が家に来た。

 しっかり大阪で買ったあのワンピースを着て。

 あぁ、もう、可愛い、天使だよ天使。


「いつ見てもベッド凄いね!」


「カーテンついてるしね」


 私のベッドは天蓋付き。

 天蓋にも布製の屋根が張ってあって、その上で薄いカーテンがある。

 落ち着いて寝る日はカーテンを閉めるけど、寝落ちした日とかはカーテンは開けたままだ。

 まぁ、全部私の自由だし?


「お部屋良い匂い!」


「ふふふ、お掃除したかんね~」


 彩華が来るから、いつもより徹底的に掃除した。

 埃1つも許さない位に。


「やっぱりお家おっきいね!」


「まぁね。 正直持て余してる」


 あぁ、今日は彩華の良い匂いがいつもより多く漂って来る。

 あ、クーラーの方向が良いからだ!


「あ、モニター3枚もある!」


「ふふふ、増やした!」


 丁度昨日、新しいモニターが届いた。

 これで1枚から3枚に!

 ゲームしながらdiscord開いて、ついでに検索エンジンも開ける。

 やはりモニターは多ければ多い方が良い。


「やっぱ同時に映るん?」


「当然!」


「すっごぉい……」


 彩華がモニターを舐め回すように見ている。

 彩華はスマホしか持ってないからね。

 無論、彩華が欲しいって言えば買うけども。


「…………」


 彩華がPCをじっと見つめている。

 この感じ、多分欲しくなったんだろう。


「……欲しい?」


「…………うん」


 やっぱし。

 こうなったら私がやるべき事はただ1つ。

 彩華にPCを買い与える、以上。


「じゃ、買お。 どんなんがええ?」


「うぇ!? え、ええん? 高いんとちゃうん? そ、そんなn――」


「私は地主」


「あ、そっか……」


 お金がどうたらとかは全部コレで黙らせられる。

 大変便利な言葉だ。


 そして、これはチャンスだ。

 PCの前にはゲーミングチェアがただ1つ。

 これは私の上に彩華を座らせる絶好のチャンス!!!

 実行に移す以外に選択肢は無い。


「じゃ、PC選ぼ、座って座って」


 私はゲーミングチェアに座り、膝の上を右手でポンポンする。

 彩華は少し困惑していた。

 もう一押しすれば座ってくれるかな?


「き、橘花ちゃんの上座るん……?」


「……嫌?」


「うぇ!? ううん! 嫌やないよ!」


「じゃ、座って~」


「う、うん、し、失礼しま~す」


 彩華が私の上にゆっくり座った。

 手を繋ぐなんかよりも当然温かい。

 抱っこするのも良いけど、こうやって座らせるのも良いね、幸せ。


 あ、髪良い匂い。

 ……あら? 前とはちょっと違う匂いがする。

 こーれは、シャンプー変えたのかな?


「ねぇねぇ彩華」


「な、なぁに?」


 あ、顔がほんのり赤い。

 可愛いね、凄く。


「シャンプー変えた?」


「え、分かるん?」


「分かる分かる、当然」


「えへへ、そっか……!」


 彩華は嬉しそうに微笑んでいる。

 やっぱり彩華は笑っている顔が一番だ。


「それで……、どれが良い? デスクトップ? ノート?」


「えっと、あの、サラリーマンとかが持ってるアレ!」


「OKノートね。 デスクトップやなくてええの?」


「う、うん」


「OK~、CPU何がええかな?」


「わ、分からへん……」


「そっか、せやったら全部私が選ぶね」


「うん!」


 とびっきり良いものを買おう。

 折角なので私が使ってるPCと同じ所から買お。

 多分、その方が彩華も嬉しいよね。


「燕電子燕電子~っと」


「燕電子?」


「そうそう、今使ってるメーカー」


 日本のPCメーカー、燕電子。

 ゲーミングPCに強い日本企業だ。

 私はずっとココを使っている。


「PCで何したい?」


「ゲーム!」


「OK、最適解」


 ゲームをしたいなら燕電子は最適解。

 ココ以外の選択肢は今潰えた。

 動画作りたいとかだったら他の所もあったんだけどね。


「え~、最新モデル最新モデル」


 燕電子のGNシリーズの最新モデルを買おう。

 Nは単純にノートのN。

 ノートパソコン自体はまぁ、和製英語何だけどもね。


「あった、GN35AF」


 4月に出たばかりの最新モデル!

 これを買う事にしよう。

 さ~て、CPUはUltra9で~、当然Win11でしょう?

 メモリーは多い方が良いよね、多くて損は無い、選択できる1番多かったのが32GBだったから32GB~っと。

 ストレージは……あ、2TB選べる、2TB~。

 ディスプレイも選べるんだ、ならタッチ出来る奴にしよ。


「あ、彩華彩華」


「な、なぁに?」


「色、何がいい? 白、黒、銀、赤、青ってあるけど」


「う~ん……、銀!」


「OK、銀ね~」


 ふと、彩華の頭を右手撫でてみる。

 やっぱり彩華の髪の手触りは最高だ。

 この~、何て言うか、その~……………………。

 とにかく! 触ってて心地いい! 彩華の髪は!!

 このサラサラした銀髪は天然の銀髪でしか得られない!!


「うへへ~」


 そして反応も可愛い。

 私は左手で彩華を軽く抱きしめてみる。

 彩華は少し動揺した物の、ゆっくり私に身を委ねて来た。

 うん、最高、最高すぎる。


「よーっし、購入っと」


 値段は38万9100円。

 この38万円で彩華を私の上に座らせられて、その上撫でたり出来るて、その上PCも買えるのなら安い物だ。

 ……いずれは、こんな機会に頼らなくてもいいようにしたいな。


「あ、何処に届ける? 彩華の家?」


「う、う~ん、橘花ちゃんの家で良いかな?」


「ん? ええけど」


 ふーむ、直接家に届けられては困る様だ。

 まぁ、多分親関連だろう。

 ノートPCにしたのも隠す為?

 直接的な言葉は1つも無いが、まぁそんな気がする。


「住所は私の家~」


 これで良し。

 1週間経てばこのPCが家にやって来る。

 そしたら、PCを彩華に渡して任務完了。


「OK、これで1週間したらPCが来るよ」


「えへへ、ありがと!」


「んふふ、どーいたしましてっ」


 振り向いて笑顔を向けてくる彩華。

 これを可愛いと表さずして何と表すか。

 私には分からない。


「あ、そうだ彩華」


「なぁに?」


「別館行こ?」


「べ、別館?」


「そう、別館」


 別館、旧本邸。

 今住んでいる本館とは違い、平屋の和式建築。

 今は殆ど使用していないが、時折プラモの組み立ての為に行く。

 風通しも良いし、1部屋1部屋が広いし落ち着く。

 庭も良く見えるしね。

 そう言えば彩華には1度も案内していなかった気がする。

 折角ならこの機会にね。


「ほら、あの和風建築」


「あ、ちょっと気になっとった!」


「なら丁度ええね、行こ行こ」


「は~い!」


 部屋を出て、1階へ。

 私の後ろをトコトコついて来る彩華。

 メッチャカワイイ!!!

 ずっと見てたいんだけどコレ。

 しかし、そう言う訳にもいかないので仕方なく前を見て歩く。


「ねぇ橘花ちゃん」


「ん~?」


「こんな広くて迷わん?」


「うん、迷わんよ?」


「えぇ~! 私絶対迷う!」


「そりゃ、16年も住んどったら嫌でも覚えるわ」


「あ、そっか……」


「彩華も住んだら分かるよ」


「……うん、そっか」


 そうこうしている内に、別館に辿り着いた。

 長い長い縁側を西へと進む。


「こんなんなってるんやぁ~……!」


「ふふふ、構造は結構単純やけど、広いからね」


 まぁ、広いのは我が家全体に言える事だけどね。

 メイドさんや三島さんの宿舎も敷地内にある訳だし。

 1人で使うには広すぎる。

 ……まぁ、3人で使うにも広すぎるんだけどね?

 皆が居てやっと丁度いい感じ。


「確かに、同じ部屋がいっぱい!」


「昔はもっと細かったんやけど、今はデカい部屋が4つだけになっとるんよ」


「へぇ~」


「お陰で風通しが良いから塗装する時に便利なんよ」


「あれ臭い凄いもんね」


「ね~、凄いよね~」


 シンナーの臭いはとても耐えられるものではない。

 いや、ってか耐えたらアカン。

 シンナー中毒なってまう。

 とまぁ、こういう訳であるから、風通しの良いこの別邸は重宝している。

 大きい模型でも容易に組み立てられるし、塗れる。

 放置しても誰も何も言わない。

 この別邸は私にとってはただの模型の組み立て場だ。


「ねぇ、橘花ちゃん」


「ん? なぁに?」


 彩華がモジモジしながら何かを話そうとしている。

 少なくともトイレでは無い事は容易に分かった。

 彩華の意図を探っていると、何といきなり彩華が私を押し倒した!


「さ、彩華……!?」


 彩華の息は少し荒くなっており、やりたい事は概ね察する事は出来た。

 てっきり私から行くものかと……。


 私は少しだけ口を開けて彩華を待つ。

 しかし、彩華は私を押し倒したまま動かない。

 顔は下を向いたまま。


「さ、彩華……?」


 声を掛けると、彩華の身体が小刻みに震え出す。

 そして、震え出したと思ったら急に止まり、空気が抜けたかの如く私の上に倒れた。


「……彩華?」


「うぅ~……」


「……よしよし」


 どうやら今の彩華には私のファーストキスを奪う気力は無かった様だ。

 ……やっぱり私からになるのかな、ファーストキス。


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大 変 長 ら く お 待 た せ を 致 し ま し た 。

やっとこさ新しい話です。

次は未定ですが、少なくとも2月以降にはなる予定です、ハイ。

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