第24話

 朝、西荻窪の自室で目が覚める。

 あの日、フクロウの拠点を強襲しVX15は予定通り回収された。今頃、公安の拠点で厳重に保管されているだろう。

 あれほどの規模で、ヘリまで使った作戦だったが、当然そのことはされにも知られていない……ニュースでも、SNSでも、話題にも挙がっていない。

 だが、フクロウの拠点は壊滅し幹部も多くが拘束された。おそらく、近いうちに組織が解体されることになるはずだ。

 ……俺の護衛についていた公安の二人も、裏切者として拘束された。

 正直わかっていたことなので当然俺に驚きはなかったが、美鈴はやはり驚いていた。

 ……美鈴のあの日の行動は、おとがめなしとなった。これは、彼女の今まで出してきた結果から導き出された結論だ。何かあるようだったら擁護しようかと考えていたが、その必要もなかった。

 今、まだ美鈴の精神は不安定だが、それはこれからゆっくりと改善していけばよい。

 

 さて、これですべて解決されたのだろうか?……当然、まだ終わりではない。

 華共がこの国の平穏を乱そうとした、という事実も、やつらが公安にスパイを送り込むことが可能なほどこの国を侵食していることも、何も片付いていない。

 ……この国を守るために、俺は考え、紐解き、行動すればよいのか。そんなことを考えながら、逢桜と美鈴を待つ。

 

 かんかん、と階段を下りてくる音が聞こえた。

 古びたうちのアパートは、階段を下りる音がよく響く。振り向くと、逢桜は柔らかく微笑む。

「まさくん、おはよー」

 階段の中腹でたたずむ彼女は、きっと、何も変わっていない。

 とりあえず、俺は今そのことを祝い、挨拶を返そう。

 ――おはよう、と。

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俺のささやかで大切な平穏。 @niky

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