第21話
「いけいけ!」
板垣さんの号令とともに全員が降機していき、最後に俺らが降りていく。
入り口まで15mほど。走れば一瞬だ。
建物の窓を警戒しつつ、部隊は先へ先へと進んでいく。俺らはその性質上、しんがり一歩手前くらいの場所を務めていた。
先行は特に抵抗もなく入り口を突破。一回部分の制圧を開始してるようだ。
俺らも後に続き、隊員たちが次々とクリアリングしていく。信者と思しき人達は、突然のことだったからか皆非武装で困惑顔でこちらの指示に従う。
「手を上げろ!」
ほとんど無抵抗なまま、信者たちを制圧。あっという間に1階の半分を制圧し、裏口の部隊と合流した。
今の所、武装した信者は確認されていない。
そのまま階段を抑えつつ、2階の部隊を待つ。
「2階クリア」
すぐに、屋上から来た部隊も2階部分を制圧した旨の連絡が来た。
1、2階部分を制圧し残りは地下1階のみ。地上部分で拘束した信者たちを屋上から来た部隊に任せ、俺らは裏口から来た部隊と合同で階段を駆け降りていく。
階段の先は、かなり暗く照明もない。
それぞれの隊員が銃につけたライトをつけていく。
……だから、気がつくのが遅れた。
バン!
廊下の奥から発砲音。1発なった後は連続して射撃音が鳴る。どうやら、廊下の奥でどっしりと構えているらしい。
「階段まで退避!」
板垣さんの指示で階段まで退却。今のカウントでこちら側の2名が負傷したようだ。
この建物、構造上階段がはじにきているため、廊下の奥から射線を通されると辛いものがある。
そもそも、奴らかなり銃器の扱いが上手いような……?
だが、流石は特選群。落ち着き払った様子でフラッシュバンを投げ、いったん相手の視界をふさぐ。
その時、今までおとなしかった美鈴が急に前に出た。
「おい!」
止めるが彼女は止まらない。そのまま階段を駆け下り、一気に廊下へ。
「くそ……!」
俺も急いで彼女に続いてついていこうとする。しかし、すぐに激しい銃撃が起こり、階段側にも数多の銃弾が飛んでくる。
「だめです!今出たらあぶない!」
「おい神木!お前は行くな!」
それでもなお、俺は前に出ようとするが、板垣さんに全力で止められる。おそらく、フラッシュは効いたのだろうが……あそこで下へ行くのはあまりにも無謀。早くいかなければ、手遅れになる。
「はなしてください!」
「だめだ!今お前が行っても被害が増えるだけだぞ!」
「……!」
そんなのわかってる。わかってなお、美鈴を助けたいという感情を御することができない。
しかし、そんな時間もすぐに終わりを迎える。
「銃声、やみました」
銃声がなっあのは時間にして、おそらく1分にも満たない短い時間だった。
「……くそ」
俺は体の力が抜け、その場に崩れ落ちた。
こんな時だからだろうか、いくつものシーンが思い起こされ、そのたび俺は彼女を止めることができたのではないか、という思いが心を支配する。
「……確認しろ」
落ち着き払った様子の板垣さんが指示を出し、階段にいた隊員が体を出し確認する。
「……」
すると、その隊員は一度目を見開き、静かに驚いた後、俺の方向へ体を向けた。
「……神木さん、彼女、生きてます」
「……!」
俺はすぐに立ち上がり、階段から廊下へ歩み出る。廊下はかなり暗く、先まで見渡すことができない。しかし、すぐに後に続いた隊員のフラッシュライトによって、廊下の奥まで照らし出された。
そこは土嚢が詰まれ、簡易的な銃座が設置されていた。なるほど、これならかなり友好的に階段から降りてきた敵を一掃することができる。
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