第八章

 ヒバリが女の子になった。

 それは嬉しい事だ。ずっと性別無くって悩んで居たあの子がようやく見つけた自分の居場所を祝福すべきなのに、私は素直に喜べなかった。どうしてだろう? ヒバリが好きなのは夏樹で、付き合っているのも夏樹で、ようやく見つけた性別をあの子はきっと私よりも女の子を楽しんでいくだろう。これから生理で悩んだり、女子トイレに入らないといけないから少し戸惑うかもだけど、そういうのを教えて行くのは楽しい。私が女として先輩なんだよって少しだけ胸を張れる。けど……。

 やっぱりヒバリ……私はあなたが好き。

 幼稚園の頃からあなたの事が好きだった。

 あの頃からあなたは可愛かった。あの頃は本当にみんな楽しかった。性別なんかなくって、みんなで一緒のトイレに向かうし、一緒にお風呂にも入ったりした。性別がどうだとか言う大人の区別に縛られずに、自由で生きられた。

 でも神様ってひどいよね。せっかく自由だったのにいきなり十五歳になったら性別決めなさいとか、本当に何を考えているんだか……。

 『人は大災害と度重なる戦争によって、いつしか性別と言う区分を捨てました。これは子孫繁栄の新たな進化だと言う人も居ます』保健体育の授業でそんな事を先生から教えられた。

 「子孫繁栄が目的……」

 文科省はそう生徒に教えたがり教育機関はそれに従う。大人だって元は性別無かったのに、なんで性別をはじめから持って居るかのように振舞い、性別がないのを恥じるのだろう……。

 「子孫繁栄が目的なら何で好きになった性別で自分の性別が決まるんだろう……」

 それなら両性具有の方が良いに決まっている。そっちの方が都合がいいはずだ。それなのにわざわざ後天性的に性別を決めたのって……。

 私は枕を抱いてベッドに横になったまま天井を見た。



 「神様って……もしかして意地悪?」

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