第六章

 「ええええ!! 女の子になっちゃったの!?」 雪穂は女の子になった僕を見て素直に驚いて居た。

 僕の変化にクラスの皆は動揺したりしていたけど、でも元々僕らはそう言う存在なのに、こんな風に成長してから性別が変わる事に対して、どうして、こう不思議がられるのか僕には少しわからない感覚だった。

 「ええ、ヒバリは女の子になりたかったの……?」

 何故か困惑する雪穂は僕の両腕にしがみ付きながら言う。

 ……なんか嫉妬してる?

 「え、うーん、分からない……。けど、雪穂みたいに可愛くなれたら良いなぁとは思って居たよ」

 「え、え!?」

 雪穂は何故か顔を紅くした。

 周りの女子が何故か騒めく。



 「えっと、ヒバリは女の子になって夏樹君と付き合っていて、女の子も好きって事?」

 「え、それってレズって事なの?」

 「両方ならバイセクシャルじゃないの?」

 「バイなら逆に男の子の方が萌えるわ」



 「「「わかるわ~!!」」」



 分からない。

 その感覚は本当に分からない! あと、なんの話しなの!? え、僕で変な話ししないでよ!!

 僕は心の中で抗議の叫びを上げた。

 「うう~、何であなたの方が胸大きいのよ!!」

 「え? あの……ごめん……」

 「謝るな!! 余計惨めになるわ!!」

 怒る雪穂。僕にどうしろと言うんだと思ったけど、そう言ったら火に油を注ぐ事になりそうだからやめた。



 △


 「……お前女になったんだってな」

 昼休みになってようやく僕は夏樹と話が出来た。夏樹にはLINEで女になったと言うのを伝えたけど、既読だけで返事はなかった。嫌われたのかと昨日の夜は少し泣いたのだが、夏樹の登校した姿を見て少し安堵した。

 でも、クラスの皆から色々と質問されたり、誰を好きになったのとか聞かれたりして学校に名前はどうするとか聞かれたりして色々あって夏樹と話すのが昼休みまで掛かってしまった。

 雪穂は雪の中でも穂を変わらず立てて欲しいと言うご両親の願いから自分で決めたらしい。夏樹はそのまま、ご両親が性別決まったら付けたかった字を当てたらしい。

 僕の両親はそこを決められなかった。

 元々、雲雀と言う漢字が好きで着けたらしいが成長したら子供が欲しい名前で戸籍を更新する予定だったのだが、僕がこの名前が好きだから漢字もそうしたら良いよと言ったのだが、両親は雲雀と言う字は好きだが名前となると他の字を当てたいと言った。そこでヒバリと読める漢字を幾つか探したのだが……。



 僕はこのヒバリと言う名が好きだった。日本には名前に必ず漢字を当てないといけないと言う法律はないから、このままで良いと思ったけど、通例的に性別が決まったら漢字を当てると言う風習に両親は染まっていて、長い間性別がなかった僕にとってはその風習に馴染みがないけど、もしかして幼い頃から性別があったのなら馴染んだかもしれない。

 「うん……」

 僕は頷いた。

 「俺が好きって事で良いのか……」

 夏樹は少し不安そうだった。

 僕は頷いた。

 「そっか……」

 夏樹は安堵したように溜息を吐いた。

 「はぁぁ……」

 「!?」

 夏樹は急にうずくまって深く長い溜息を吐いた。

 「ど、どうしたの!? 大丈夫!?」

 「いや、なんか……俺のせいで女になったのかなぁって思うと責任感じて……」

 「え……」

 僕は胸が痛んだ。

 それって、僕が女になったら嫌って事?

 「って、おいおい!! 何悲しそうになってんだよ!?」

 「だって、僕が女になったら嫌なのって思うと……」

 「ち、違うって!! 確かに今までヒバリが性別無くてビックリしたけど、別に嫌じゃないって。てか、ヒバリが男でも女でもどっちでも好きだし!!」

 そう言って夏樹は僕に抱き着いた。

 僕は驚いたけど、その夏樹の大きな背中に手を回していたら落ち着いて、安心して、僕は安堵の溜息を吐いた。

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