第2話

 孤島に島流しされて2日目。

 俺は今、窮地に立たされている。

「まさかこんなにゴミがないとは…」

 そう、昨日拾った木箱以外のゴミが全くないのだ。

 使える物・使えない物問わず全くないのだ。

「このままだと水が確保できず死ぬな…。タイムリミットは今日含め2日ってとこか」

 諸島って言ってたってことはそう遠くないところに島があるはずだ。

 まずはいかだを作らないとな。

 2〜3mほどの手ごろな流木を6〜7本探す。

 細い短めの流木も探し、持っていく。

「これがちょうどいいかな」

 比較的まっすぐで乾いている物を選び運んでいく。

「はぁ…はぁ…かなり体力を持ってかれるな‥」

 それもそのはずで、この体は12歳である。

 力仕事は全く向いていない。

 肉体が変わったという事実と向き合い、そのギャップを痛感しながら流木を運んでいく。

「さて、次は…蔦か」

 流木だけあってもバラバラになるだけであり意味はない。まとめる物がないと意味をなさない。

「流石に森に行けばあるでしょ…」

 目的に合いそうな蔦は案外見つかったが太くて切れそうにない。

「近くに尖った石は……あった!」

 石の尖った部分を使いながら蔦を2本に切断し、運ぶ。

 途中で細い短めの蔦もいくつか取っていく。

 流木、蔦、ヤシの葉、木箱

 材料は揃った。

 劉をうまいこと噛み合うように並べ、蔦で両端をしっかりと縛る。

 ヤシの葉をいかだの上に敷き、座り心地を改善する。

 帆を作れるほどの知識もないし、浮き輪のような浮力を発生させる物もないため、持ち物は最低限でなくてはならない。

 元々持ち物なんてないか。

 機能見つけた木箱を分解し、細い流木の先端に括り付けオールの代わりにする。

 また同じ要領で舵も作り、航海性能を上げる。

「まあこんなところか」

 昨日から海を観察していてわかった事だが、このあたりの海の流れは非常に穏やかで一定の方向に向かって流れている。波もほとんどなく、航海はしやすそうだ。

「さて、出航と行こうか!」

 勢いをつけていかだを海岸から押し出し、海に浮かべる。

 幸いなことに案外安定している。ちょっとやそっとでは沈まなそうだ。

食料に関してはヤシの身を数個と川魚を2〜3匹持ってきている。

 さて、これからどこにいこうか?

 正直、行ける場所は限られている。

 もしかしたら、死んでしまう可能性だってある。

 後は、神頼みだ。

「取り敢えず、近くの島まで行ってみるしかないかな」

 時刻はよくわからないけど、陽の傾き方から朝の10時くらいだろう。

「準備は、整ってはいないか…」

 筏の浮力、食料、水etc … 天気はいいが、正直何が起きてもおかしくはない。

 でも、ここでずっと留まっているわけにはいかない。

「よし、出発だ!」

 今から、一世一代の旅が始まろうとしている。

 何日も海を彷徨うかもしれない、突然の悪天候で筏が逝くかもしれない(つまり死ぬ)、海のギャングに食われる可能性だってある。

 生きていれば、修羅場なんていっぱいある。

 それを潜り抜けれるのも人間の強みだ。

 だったら、生きる。それだけ!



 何時間漕いただろうか、何も見えてこない。

「視界は良好。だけど、こうも何にも見えてこないとはな」

 引き返すにしても、どっちから来たかなんてわからない。

 つまり、引き返すという選択肢は論外だ。

[WARNING WANING]

 なんだこのサイレンは?

 青かった空が真っ赤に染まりWANINGという文字が四方八方に見える。

 異国の地と言えど、明らかに良い方に結果は転ばないだろう…

「ここまでか…」

[Status check. All green. She doesn’t have any skills (ステータスチェック。異常なし。スキルなし)]

「な、なんなんだ…」

 機械音声みたいな声だな。

 札みたいなものが8つ浮かんでいる。

[Skill Activation(スキル発動)]

 どうやら、何かが選択されたようだ。

[Roughing Ocean(荒れる大海)]

 なんとなく、ダサいと思った。

 命の危機だというのに、何を考えているんだろう。

 突如、赤かった空が灰色の空になっていく。

 風、雨、雷がここら一帯を襲う。

[System: Normal Operational status:16% Target damage:28% Retry target scan Progress:38%(システム:正常 稼働状況:16% 対象の損壊:28% 対象のスキャンを再度試行 進行状況:38%]

「この世界の人間は、自然をも操るのか…」

 万事休すだ。

 筏が風に煽られ、身体は雨に濡れて体温を奪われ、雷にあたればあの世に逝くことができるだろう。

「ぅ…うぁああああ……」

 高波に飲まれてしまった。

 そこで、俺の意識は途絶えた…


…………


「ぅう…は!? こ、ここは?」

 目を覚ましたら、知らない天井が見えた。

 ここはどこだ?

『あ、あのぉー。お身体は大丈夫ですか?』

 発音とか、文法とか… 新しい言語を学ぶって大変だよ。

 体は12歳だが精神は17歳だ。もう新しい言語なんて碌に覚えられないだろう。

 と、取り敢えず返事をしないと、

 頷いて返答する。

『よかったです!あまり多くはないのですが、よかったら食べてください!』

 と言って出されたのは、魚の塩焼き。めちゃくちゃ美味しそうだ。

 やはり、ここもカエリス諸島の一部の島なのか?もし、そうだとすれば、ここに人たちも極貧生活をしているはずだ。貴重な食料をを見ず知らずの者に分け与えるなど、このお嬢さんはどれだけ優しいんだ。

 見た目は、狼の獣人か?犬か?よくわからんが、長い灰褐色の髪の毛に幼い顔立ち。俺よりも若そうだ。身長も自分より小さい…

『私は、ミッチ。宜しくね!お名前おしえて!」

 か、可愛い。子供は、無邪気なのが一番だな!

「……む、むたg」

 いや待てよ、ここは異世界。自分の本名を言ってどうする。ここは、偽名を使わないと。

 一度失った信頼は、取り戻すのが難しいからな。慎重に!

「ミ、ミーシャ」

 名前に言語による発音の違いなんてないだろう。これで、伝わる…はず…

『ミーシャさんですね!改めて宜しくね!』

 ミッチから手が差し伸べられる。

 手を取って握手をする。

 そう言えば、何故ミッチはこんなに俺に懐いでいるんだ?危機感がない子供なのか?

『ミッチ、ちょっと来なさい』

 お母様だろうか?口調から優しい人だとわかる。

『彼女は大丈夫?』

『うん!元気そうだったよ』

 気遣ってくれてるのか?

『お水持っててあげて!』

『わかった!』

 なるほど、ミッチの優しさは親譲りなんだなー。納得。将来いい子に育つだろう。

『はい、お水!』

 木でできた茶碗を受け取る。久方ぶりのお水だ。

 ゴクゴクゴク

 うまい。

 簡易ベットから降りて、ミッチのお母様にお辞儀する。

『初めまして、ミッチさん。ミッチの母のアーシャです。宜しくお願いします』

 握手をする。今は、この方法しかない。日常会話が少しできれば、あまり苦労しないだろう。

 ここの生活に早くなれるといいのだが…

 そんな一抹の不安を抱えながら、少女は新たな場所で生活を始める。

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精神転移していたらトラブって帰れなくなったのでどうにかしてコインを取り戻します 〜ロリ獣人、世界を練り歩く〜 shiv @2004Reitaisai

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