第7話 母娘

 「落ち着いた?」

 「…うん」グスッ

 「よかった。ご飯持ってきたよ?今日はこれ食べてゆっくり休んでね?」

 「うん。ありがとう…お…お母さん」

 「ふふっ。明日から、この世界の事と魔法の事教えてあげるね?」

 「うん!」


 わんわんと泣き続けていたマヤ。泣き疲れ落ち着いてきた頃…メリッサが持ってきていたパンとスープをマヤの目の前に差し出してきた。

 マヤは差し出されたパンとスープを食べ終わると、安心した様に眠りにつき始めた。


 「お腹も膨れて…安心したら眠っちゃったか」


 マヤが寝たのを確認したメリッサは、ガタッと座っていた椅子から立ち上がり…マヤがいるこの部屋から出て行こうとするが…。


 「ん?…あらあら」


 メリッサのローブの裾はマヤによってギュッと握りしめられていた。


 「わかったわ。何処にも行かないから…安心していいわよ」


 再びベッドに座り直るメリッサ。空になった食器を近くの棚に置き…マヤの手を握り、これから我が子となるマヤの寝顔を見ながら添い寝する事にした。

 次の日、寝ていた自分の横で添い寝をしてくれているメリッサを見つけるマヤ。ガサゴソと動き始めたマヤに気付いたメリッサは…。


 「おはよう。マヤちゃん」

 「お…おはよう。…お母さん」

 「可愛い〜。ああ〜私の娘!」

 「え?お母さん?」

 「あっ!…ごめんなさい。嬉しくって…つい」

 「ふふふ。お母さんってそんなキャラだったんだね?」

 「そうだよ。こんなお母さんは嫌かな?」

 「ううん。優しくて楽しいなんて最高だよ」

 「ほんと?お母さん嬉しい!」ギュー

 「私も嬉しい。けど…」キュルル

 「まずは朝ご飯ね。手伝ってくれる?」

 「うん!」


 体を起こし、ベッドから立ち上がるマヤとメリッサ。まだ家の中を知らないマヤは、メリッサの後ろに付いて別の部屋に歩いて行く。


 「今日からこの家がマヤちゃんの家になるからね?家の中を案内してあげるね?」

 「うん!」

 「今いる二階は2部屋で私の寝室とマヤちゃんが寝てた部屋しかないの」

 「へぇ〜」

 「一階に降りるよ?一階はリビングとキッチンとダイニング、シャワーとトイレと書庫があるよ」

 「書庫?」

 「そうだよ。お母さんは魔女だからね?色んな本から勉強して魔法を覚えているんだよ?」

 「…あの、私も…」

 「うん。神様から言われたんだよね?私がちゃんとこの世界の事と魔法を教えてあげるからね」

 「ありがとう」


 これからここに住む事になる家の中をメリッサに案内してもらったマヤは、メリッサと一緒にキッチンへと向かった。


 「えっと…昨日のスープが残ってるから温め直して、あとはパンと…何かお肉焼こうか?」

 「へぇ~。色んな物があるね?」

 「そう?よくある調味料と食材だよ?」

 「へぇ~。これはどうやって使うの?」

 「コンロね?簡単だよ。上にお鍋を置いて…お鍋の下にプチファイア!」ボッ

 「わぁ!すごいすごい!何も無いとこから火が付いたぁ」

 「あら、これぐらいでそんなに喜んでくれるのね?」

 「だって、私がいた世界に魔法なんて無かったもん」

 「そうなんだ?これからいっぱい覚えていこうね?」

 「私も魔法使えるの?」

 「きっと大丈夫だよ。マヤちゃんは神様から魔法を覚えるといいって言われたんでしょ?」

 「…うん」

 「うん。後でお勉強しようね?」

 「うん!」

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