第3話 忍び寄る悪事
さらに月日は流れ…
ついに真夜がこの児童施設を出て行く16才の春になりました。
代理先生に言われていた私は、中学校からの帰り道を使って求人フリーペーパーや店舗の貼り紙を確認して働き口を探していました。
今日も求人フリーペーパーを貰いにスーパーへ…。
「そろそろ決めないと…はぁ〜。今週はどうかな?」パラッ
「…え?住み込み可能の新聞配達?これいいかも!」
「決まっちゃう前に早く電話しないと!急いで帰ろう!」
毎週更新される求人フリーペーパーを毎週貰い続けてきた私。今日やっと住み込み可能の働き口を見つける事が出来ると、急いで児童施設に戻り児童施設から電話をかけて面接まで漕ぎ着ける事が出来た!
「真夜です。先生?今いいですか?」コンコン
「どうぞ」
「良さそうな所を見つける事が出来たので、面接に行く事になりました」ガチャ
「…そうですか。受かるといいですね」
「…はい。それで…」
「なんです?」
「履歴書がいるみたいなので…お金を少し貸して貰えないでしょうか?」
「ああ。そうですね。わかりました…写真と履歴書で1000円もあれば足りるでしょうから、これも毎月の支払いに入れておきますね?」
「わかりました。…ありがとうございます」
無事、代理先生にお金を借りる事が出来た私。前回、紙に残していなかった事で、この時借りた1000円がこれから先…何倍にも膨れ上がる事になるなど…この時の真夜は気付いていなかった…。
◆
16才の春…私はこの児童施設を卒業する。これからの私が住む場所は、あの時…面接に向かった住み込み可能の新聞配達会社。
「無事に住む場所と仕事が決まったようで良かったわね?」
「…はい」
「来月からさっそく支払いして貰うからね?いっぱい稼いでくるんだよ?」
「…わかりました。…お世話になりました」
これから月1で支払いに来る事になるが…代理先生とも挨拶を済ませた私は、新たな住居となる新聞配達会社の寮へと移動した。
新しい日々が始まった16才の春…。児童施設と小中学校以外にはあまり出歩けなかった私…これからどんな事が待っているのかと思うと、少しワクワクしていた…が、それも長くは続かない…。
来る日も来る日も…早朝に起きては朝刊配達、数時間後には夕刊の配達、クタクタになった体を気遣って多めに睡眠を取るの繰り返し。バイクは勿論、自転車すらも買って貰えた事がなかった私は自転車の乗り方など知るはずも無く、重たい新聞の束を持ち…自分の足で走って配達していた。
そんな私を見ていた会社の社長は、優しくしてくれるが…新聞配達は新聞を買ってくれるお客さんがいてこその仕事の為、急な休みや配達の遅れ等を出す訳にもいかず…私の体調までは気にかけてもらえなかった…。
「ハァハァ…もうすぐ初めてのお給料日、お部屋代を払って、残り全部払えば…楽になるはず」
イジメは無くなったが…それからは友達という友達は出来ず、小学校から中学校卒業までずっと1人で過ごして来た真夜。授業が終わると誰にも関わろうとせず、すぐに児童施設に帰っていた為…あまり体力がある方では無かった…。
今日は待ちに待った給料日。
真夜が住み込みしている寮の支払いが差し引かれ、初めての給料が渡された。
「はいどうぞ。毎日ご苦労さま」
「はい。ありがとうございます」
「明日は児童施設に行くんだったかな?」
「はい。月に一度、行く事になってまして…」
「え?施設の書類関係かい?」
「いえ…。私は小さい時に入院した事がありまして…その時の入院費用の支払いを先生が立て替えてくれていたそうなんです。そのお金を支払いに…」
「…そうか、わかった。明日はゆっくり休んでね?」
「はい。ありがとうございます」
翌日、自分の力で稼いだ初めての給料を手に先月まで住んでいた児童施設に向かい始める真夜。
見慣れたボロボロの児童施設の中をどんどん進み、代理先生がいる部屋へとやって来た…。
「先生?真夜です」コンコン
「どうぞ」
「…はい」ガチャ
「来たわね?」
「先生。これ…今月分のお金です」パサッ
「…5万円ですか?」
「…はい。寮に住んでまして…たぶん色々と引かれた後かと…」
「へぇ。これじゃあ…いつまで経っても全額返済出来ないわよ?」
「え?」
「まだ空いてる時間あるんでしょ?その時間も使って稼いできなさい!」
「…はい」
「…今月はこれでいいわ。来月もよろしく」
「…はい。…また来月来ます」ガチャ
(あの時の私、こんな大金かかる程の酷い怪我してたのか…。新聞配達は休めないし…朝夕の間でお仕事増やさなきゃ…)
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