8.Don't worry my friend

振りかざした剣はランチュリーに重傷を与えた。

ランチュリーは他の悪魔と比べとても若かった。彼女には知能があり、強い能力があった。なのであまり戦闘経験を積んでいない状態でここまで来た。相手が2人だろうが勝てると思っていた。初めての敗北。痛みと悔しさで涙が出る。


よくやったわ。ラクー。早く楽にさせてあげて


メルが言う。


分かっている。人形さん。首を一発ではねてあげて。


ラクーが言う。


まだ早い。死にたくない


ランチュリーの頭にたくさんの感情が巻き起こった。無意識に彼女は旗の色を白に変えた。降参の白。1度ども使うことはないと思っていた。

これは遠くにいる相手に降参を伝えるためにメガホン機能がついているものであった。ランチュリーは本音が漏れた。


"遊びに行きたい"


ラクーが悲しそうな顔でランチュリーに言う。


僕たち天使は輪廻転生と言う考え方を持っていてね。死んだら次の一生が始まるんだ。次は天使として生まれて来な。そうしたら友達になろう。


光の剣士が剣を頭の上から下ろそうとした。


ラクー!!!急いで船を作って!!!


突如、メルが叫ぶ。


え?分かった


ラクーはすぐ船を作った。するとメルがラクーを蹴り船に乗せ、船に蹴りを入れ、床をぬるぬるにし、船が坂道を転がっていく。


なんなんだよ。メル!


ラクーが叫ぶ。


さよならの渓谷でピリオド様の所へ行って!


メルが言う。ラクーは何が起きているかよく分からなかった。しかし、すぐに理解した。とてつもない勢いで何かがこっちに来る。それは自分たちが干渉することを許さないもの。月とスッポンなんてレベルではない。銀河とハウスダストそう言った方が近い。


メル!!俺も戦う!!!!


ラクーは叫ぶ。しかしだいぶ距離が空いてきていたので声が届いているのかはわからなかった。だが声が届いていると確信に変わる。メルが親指を立てたのだ。メルいわく友情に酔っている証。今まで馬鹿にしていた行為を行ってまで伝えたいことは分かっていた。

ラクーは涙を堪えたが、戻ろうとはしなかった。自分より強いメルが己を犠牲にしてまで自分の価値に未来を託した。それを踏み躙ることは許される行為ではないと心の底から理解していたからである。


メルは親指をラクーの方にたてていたが、目は近づいてくる脅威を真っ直ぐ見ていた。メルは強かった。自分の死を受け入れることはせず、どう時間を稼ぐかをずっと考えていた。

とてつもない爆発と共にそれは姿を現した。


アソビイキタイ。モウガマンデキナイ。コロシテクウ


知能が感じられない声でこちらを睨む悪魔。

メルは震えた声で言う。


そう。じゃ私を食べれば?殺せたらだけど。

ヌルヌルージョン!


泥帝は足を滑らせこける。


ウガ。ナンダコレ


泥帝が真下のぬるぬるを少しも残さず吸い込む


化け物が。


メルが諦めた声で言う。


ヌルヌルージョン!ヌルヌルージョン!

ヌルヌルージョン!ヌルヌルージョン!


息をすることも忘れ、叫びまくる。ほんの少しの隙で殺される。それが自分だけならいいが、時間を稼がないとラクーまでも。


一生懸命に吸っていた泥帝であったが、急にやめる。


アキタ。


メルは何かを悟り、ラクーと逆方向をぬるぬるにし、華麗に滑って逃げる。


あと5秒。5秒でいい。ラクーの気配に完全に気づかれなくなる距離に行くまで。


メルは滑った。無我夢中で。

しかしそれは一瞬であった。瞬きをして目を開けたほんの一瞬。手を掴まれていた。

薄気味悪く、泥帝は少し笑った。


アハ


途端とてつもない爆発が起きる。

メルは体裁が全く分からなくなるほど粉々に弾け飛び命を失った。泥帝は聖臓だけを手で守っていた。それを一口で食べる。途端、泥帝に衝撃が走る。これまで食べてきたものはなんだったのかと思うほどの美味。


ウオオオオオオオオオオ


とてつもない雄叫びを上げた。それはラクーの耳にも届いていた。爆発音からの雄叫び。それがメルの死を表していることは容易に想像できた。ラクーは息を殺して泣いた。恐怖、悲しみ、パニック。色々なものに押しつぶされそうになっていたラクーは泣くのを我慢できたかった。平穏だった毎日が一夜で地獄に。もうラクーに希望なんてなかった。


雄叫びの後すぐにモロトモと虚帝が泥帝の元へ行く。


畜生!油断した!遅かったか。


虚帝が言う。

モロトモは怯えていた。とてつもない力を見せつけたられたためだ。マルコなんて比べものにならない。そうとすら思えた。


キョッチャン。テンシハドコニイルノ?


泥帝が言う。


ダメだ。泥ちゃん。もう食べてはならない。


虚帝が言う。


ドウシテ?ヒトリジメスルキナノ?


泥帝が怒った顔で虚帝に言う。


離れてください。虚帝様。今の泥帝様への干渉は危険です。


モロトモが虚帝の前へ出る。


モウイイ。ヒトリデサガシテクル。


泥帝が凄まじいスピードで離れてく。

虚帝は狼狽えた顔で言う。


作戦変更だ。泥帝を援護しながらウエクウカンを天使から乗っ取る。そして泥ちゃんに天使を全て食べられる前に捕獲し、聖臓から作られるエネルギーを無限に採取し、永遠に争いがない世界を作る。モロトモ。元闇様に知らせてこい。


御意。


モロトモが答える。



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