6.歪み合い

おや。モロトモ君。生きていたんですね。てっきり死んだと思って次の作戦を考えてましたよ。デイくんがずっとうるさいのでこっちも大変だったんですよ。


そう話すのは元闇様の左腕と呼ばれる悪魔の知将、虚帝キョテイ。黒真珠を使って、ウエクウカンに侵入する作戦を立てた、悪魔の中でひときわ賢い存在である。


そして、虚帝が泥くんと呼ぶ存在。それは元闇様の右腕と呼ばれる誰よりも強い悪魔、泥帝デイテイである。


申し訳ありません。ある天使との戦闘に少々手こずりまして。その後に泥帝様にも匹敵する可能性がある天使に会いまして、一緒に来た岩は粉々にされてしまいました。


モロトモが頭を下げて申し訳なさそうに言う。


あらら。そうですか。泥くんに匹敵する可能性があるなんて、にわかに信じがたいですが。

ふむふむ。分かりました。ここからも慎重にいきましょうか。


虚帝が顎をさわりながら言う。



一方マルコは王の所へ急いで向かっていた。


(やってしまった。舐めすぎていた。悪魔は群れて動かないものだという固定概念に囚われすぎていた。急いで知らせなければ)


マルコは焦っていた。

少しして、王のところに辿り着いた。


ピリオド様。一大事です。悪魔が、悪魔がせめて参ります。直ちに色を集めて戦争の準備に。


マルコは恐れていた。永遠に続くと思っていた平和が脅かされるとは、どんなに強者でも統一して襲ってくる恐怖であった。しかし、王から帰ってきた言葉は意外なものであった。


今からするのは戦争を始める準備ではない。

1人でも犠牲者を少なくするために撤退する準備だ。

色を持つ、ラクーとメルは相手の偵察。マルコお前は亡くなった天使が30日後降ってくる可能性がある場所に張り込んでくれ。

オルタナは朕と来い。

ラクーや。偵察に行く前に空飛ぶ船を作ってくれ。飛んでいくんじゃ遅すぎるからな。


ピリオドが言う。


御意


ラクーが命令通り、空飛ぶ船を作る。

青の色を与えられているラクーは光を具現化する能力である。兵を作ったり、乗り物を作ったり、変幻自在である。


マルコは呆気に取られていた。


ピリオド様、なぜ…なぜ戦わないのですか。相手はたかが悪魔ですよ。我らの力が集まれば、負けることなどあり得ません。どうして…どうして逃げるのですか。


ピリオドは何も言わずにラクーが作った船に乗り込む。


オルタナや。村がある場所を順に飛んでいってくれ。全員、さよならの渓谷を目指すようにアナウンスしながらな。朕の名前を使ってもらって構わない。


ピリオドがマルコを無視して言う。

マルコは今までピリオドに逆らったことなど一度もない。天使の中の王と言うのは誰もが認めていたし、自分だって今でも認めている。しかし初めて、声を荒げてピリオドに言う。


王!!どうしてですか!!ウエクウカンを悪魔に譲渡するつもりなのですか!自分は逃げて色たちに危ない任務を渡すのですか!


マルコは泣きながら言った。こうなっているのは自分のミスということは重々承知していたのだが、何よりも自分が信じていた人が緊急時に見せた弱さ、脆さに初めて心の底から切望したからである。


ピリオドはそれを聞き、空飛ぶ船が進もうとする方向を見ながら言う。


あそこにはビートがいた。だが、主とここに来ていない時点で悪魔に殺されているはずなんだよ。そのレベルにまで悪魔が達していることはとても信じにくいが、現実そうらしい。

その悪魔が門を開き、仲間を呼んでいたということは今の我らに勝ち目はない。

そこで我々ができることは少ない犠牲で30日逃

げ切り、ビート、死んでいった者たちの転生者が降ってくるか。その真偽を確かめることしかないのだよ。やれるか、マルコ。


王は一切焦りが見えない、優しい口調でマルコに言った。マルコは王しか見えていなかった。自分が信じてきた人はいつも通りであった。自分が焦っていただけであった。もし、ビートがあそこにいて、モロトモに殺された後に、自分が会っていたなら、王の判断は賢明である。


マルコは涙を拭い、迷いのない真っ直ぐな目で王に言う。


御意


王が飛んでいき、すぐにとてつもない爆発が大界天聖堂で起きる。マルコとラクーが目を合わせる。


死ぬなよ。これは俺たち天使に課せられた試練だ。きっとビートも死んでいない。


マルコがラクーに言う。


当たり前だ。こうなったのはお前のせいじゃない。俺たちなら楽勝だ。急げよ。


ラクーが親指を立てて言う。


友情に酔っている時間はないのですよ。急いで相手の数、目的などを特定しに行きましょ。


メルがやれやれ顔で言う。


ふふっと笑った後、マルコは急いで行く。



同刻、大界天聖堂。爆発が起きる少し前に遡る。


泥くんには申し訳ないのですが、まだこちらには呼べませんね。彼は頭が悪すぎる。まだ呼ぶべきではないです。相手が手強いのは間違いないので改めて作戦を。


虚帝が言う。


モロトモー!その泥帝様くらい強いヤツってどんな能力なのー教えて!!


女型の悪魔が言う。


手を前に出して、拳を握った瞬間相手が破裂する能力。発動条件、ペナルティ、何も分からない。ランチュリー、お前じゃ勝てない。


モロトモが言う。


えししし。楽しそう。ちょっと遊んでこよかな。


ランチュリーが言う。


アソブ?オレモ!オレモ!!!


その瞬間、爆発が起きる。





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