第6話 脱走?

いたって普通の休日のある日、いつも体に乗っかって起こして来るアイツが居なくなっていた。

「おーい、どこだー?」

大きな声で呼んだところでアイツは喋れないので「はーい」といった返事はできない。けど、声が聞こえているなら走ってこっちに来るハズ。

しかし、アイツは返事はおろか物音すら立てない。

そして、玄関の扉を見ると昨夜かけていたハズの鍵が開いていた。

「これは脱走?したな。とにかく、外に出たことは確実」


外だと大きな声でアイツを呼びかけるのは人目もあるので恥ずかしい。

子どもだったら、大きな声で「○○どこー?」と呼んでいたかもしれないが、今の自分は恥ずかしさの方が勝って、叫べない。


しかし、外に行ったとしても行く場所が分からない。街中にマップがあっても、たぶん読めないので闇雲に進んでいると迷子になっているかもしれないし、交通ルールの認識もしているか分からないので事故に遭っている可能性もある。

アイツはぬいぐるみなので、死ぬことはないが損傷の具合によっては無惨な姿に変わり果てているかもしれない。


そして、街中を探して2時間後。

公園のベンチでハトたちと戯れているところを発見。

「もう心配かけるなよ!出かけるなら事前に言ってくれ…」と涙ながらにアイツに訴える。本当に無事で良かったよ!怪我もしてないみたいだし、一安心。

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