君に優しいのは好きだからではない

てんてん

君に優しいのは好きだからでない



・僕はよく優しいと言われる。


うん、優しいだろうな。


そうなりたいと思ってるし。


そう言われるのも嬉しい。


そういった行動もする。


『 どちらまで行かれるんですか??この荷物持ちますよ??』


そう信号待ちをしている、腰の曲がったおばあちゃんに話しかけた。


『 ありがとう。お兄ちゃん優しいのね 』


『 いえいえ、重そうなので 』


『 お願いしちゃって大丈夫かしら??』


『 もちろんですよ^_^ 』


荷物をお家まで持ってあげる事になった。


家はとても近く、5分程度で着いた


まったく苦ではなかったし、笑顔が見れてよかった


それに

帰りにはお菓子を貰い、良いことはするべきだと再確認した


人が幸せになるのは嬉しいし、そのためにする


人の幸せは自分の幸せでイコールであると小学校の算数の教科書に載せるべきだ


自分が幸せになりたいから、人を幸せにするとも案ずる気がする


そしてそれに準じて僕は行動する


優しさとは人のために、幸せのためにある。




例えそれが嘘だとしても、、








・高校3年の夏が終わる頃


『 辛いから側にいて。』


そう言ってきたのは特に彼女とかというわけではない、いわゆるただの友達だ。

名前は幸歩

友達以上の気持ちはあるが2人の間柄を説明するならばそれにすぎない


少し何かしらのきっかけで付き合っていてもおかしくもかもしれないけど

特にそうなるようなきっかけは、まだないようだ


そんな子に言われた。側に居てと。

好きな人が近くにいるだけで辛くなくなるというのは、思い人ができた事がある人なら誰でも分かる感情であろう


だけど今回はそうじゃない幸歩とは友達だ


『 いいよ。』


人が悲しんでいる。悲しんでるなら助かるべきだ


悲しみに対する感情がある人は、

それだけ優しいという事


人の優しさには、

無条件で肯定され、評価される価値がある

否定する事はそれを無下にする。


悲しいんでる人を救うという事を否定してはいけない

それに今回は否定する理由もない。


僕は君の悲しさを消すため、側にいる選択をすることにする

ここに好きだからってのが文面につくとなぜだがすごく綺麗な文になる、けどそれは付けない



『 ありがとう、優くん。』


『 どうした、何かあった??』


『 ただ1人でいるのが寂しくて、でも、一緒にいてくれる彼氏なんていないし。』


そう涙をポツポツ流しながら言っている


この子は昔大切な人を亡くしている、ハタから見たら可哀相な子

その事を知ってる人はあまり多くはなく

僕がその事を知っているのは

この子に側にいてと言われるくらいは近い距離にあるからだ



そんな辛い過去があるのを知っていてる僕は

今にも死んじゃいそうな君を見て辛くなった

つまり同情しているというわけだ。


自分じゃない他の人の悲しみをいちいち当事者と同じように感じてしまって生きる

今の僕だ

それを感じない人は少し冷たく感じる


だけど、


行動し続ける事に意味があり、

それは正しいと判断し続ける。

救えなくても、

救おうとするこ


それが正しいと思う。


良いことをすれば、それは返ってくるとよく大人は言う


いや、それって実際そうなのか?

返ってくる割合はどれくらいなのか

返ってきた人はいるのか?


無駄な愛は送れない

そういうわけではないけれど

返還してくれる人にしか送りたくない、そういう気持ちになってもおかしくない

心にだって限りがある


自分だって幸せになりたい

でも、

本当の善だと呼べる人間がいるならば

それはきっと、それを救えた人だろうな。



『 そうか、そうか。今一緒に居てあげるから、泣かないで。』


『 うん。』


側にいる当たり前の存在が嬉しいんだろうな。。。

辛い時に感じる少しの幸せが

普通の幸せより良かったりする。

辛い時には側にいて黙っていてくれるだけでいいように、

普段ならなんてことないことだけど、

それがとても心地いいんだろうな。


『 いつでも頼ってほしいと思ってる。』


『 うん。』


『 何をしてあげれるか、わからないけど、どうにかしてあげないと思ってるから。』


『 ありがとう、なんでそんな優しいの? 』


見返りなんてない

好きだからなのか

ただの偽善なのか


『 だって赤の他人じゃないんだから^_^ 』


『 頼っていいの??』


『 あたりまえじゃん!』


そうだ結局は誰かにすがりたいだけなのかもな。

相手なんて誰でもいいかもしれないし、

他にもっといい相手もいるかもしれない。

僕じゃなくてもいいかもしれない

でもそれは考えない、今幸歩の近くに居れるのは僕だから。






・次の日の夕方電話が来る。


相手は幸歩だ。


『 今から会いに来てくれない?』


『 どこに行けばいい??』


『 旭山の公園で大丈夫?』


『 わかった。すぐ行くね!』


特に今何かしているわけでもないし、この後の予定があるわけでもない


鏡を3回見返して

すぐ準備して向かう


公園に着くとブランコに座り、少しだけブラブラ揺れている姿があった


『 幸歩!どうしたの。』


公園に着いた頃にはもう外は暗くなり始めている


『 う〜ん、1人でいるのがしんどくなった。』


『 夜ご飯食べた??どっか行く??』


正直夕食の時間ということもあり、お腹が空いたのでお腹を満たしたかった


『 行く。』


そう小さい声でうつむきながら言った。


『 よし!じゃ行こう。』


『 ありがとう、来てくれて。 』


『 お腹空いてるし、付き合ってくれるなら全然!!』


『 私もお腹空いた。』


そう言ったのがなんだか可愛くて、余計何かしてあげたいと思った。



・ご飯も食べ終わり旭山公園に戻る事になった。


そしてまたブランコに座り、揺れている。


僕もその横のブランコに座る


特に喋るわけもなく、時間が過ぎて、


急に幸歩が話し掛ける


『 ねぇ〜優くん 』


『 なに?』


『 付き合ってくれない?』


『 いいよ 』


即答だった

もちろん好きという感情もあると思う

ただ僕が付き合って君の寂しさを埋めることができるなら、それでいい

それだけのために


1人の幸せのために

1人の時間を自由を奪う


それでもいい


これがきっと愛なのだから




*終わり
















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