第一話「忘れること」

第一話「忘れること」

いつもと変わらない帰り道。だが不思議と見える光景の何もかもがいつもとは違うように感じてしまう。今日学校であんなことがあってはこうなるのも無理は無いだろう。

 透明人間の女子高生『水蓮愛』。

 彼女に出会ってからというものそんな感覚が続きながら自宅の前に着いた。何の変哲もない一般的な二階建ての一軒家。

 家に入り、ただいまと少し声を大きくして家中に響く声を出す。

 すると上からドタドタと音が聞こえ、何かと思えば目の前の階段から裸足で駆け下りてくる女性がいた。その綺麗なルックスはいつも完璧なのだが、ボサボサの長い黒髪が最初の綺麗という心証を台無しにしていた。

「おかえりー!」そう叫び俺目掛けて走ってくるのは俺の姉であり現役女子大生の晶同葵しょうどうあおいだった。

 外見は非常に良く、モテるのだが彼氏を今まで一度も作ったことがない。その理由を聞くのだが、俺一筋だの俺以外興味が無いだの冗談しか言わずに教えてくれないので俺が中学の頃からもう理由を知ることを諦めていた。

 まあこの様子のままであれば彼氏を作ることは一生無いだろう。

 玄関から上がり、二階にある俺の部屋へと向かう。後ろから姉さんが付いて来ている気がするが、気にしたら無駄に疲れるだけなので何も言わずに階段を上がっていく。

 階段を上がり右を向けば俺の部屋へ繋がる扉が現れる。

 何か髪に違和感を感じると思い、後ろを振り向くと姉さんの顔が少し前に行けば鼻が当たってしまうほどの距離にあった。

 俺はいきなり姉さんの顔が目の前にあったので気が動転し無意識に少し身体を姉さんから後退させた。

「何してるの...?」

「すーくんの髪細くていいなーと思って、触ってた」姉さんは何一つ表情を変えずに言った。先ほどの髪の違和感の正体がわかったが、姉さんはこういうことを平気でよくしてくるので、家の中で気を抜くことは許されない。

「その呼び方恥ずかしいからやめて。後俺のことすーくんって呼ぶの姉さんぐらいだよ」

 昔から俺の事をすーくんと呼ぶのは姉さんだけだ。まあ友人が一人しかいないので呼ぶのが姉さんだけなのも納得したくないが真実は変わらない。

 友人を作りたいのは山々なのだが、いざ勇気をだして話しかけようとしても身体が全力拒否して話しかけるど頃の話ではなくなるのだ。

 治したいとは思っているのだがどうも俺の性のようで最近になって無理だと思い始めてしまっている。

 部屋に入り、学生鞄を置き右手が重量感から解放される。

 学生服から部屋着であるシンプルな青単色のパーカーと少し袖を踏んでしまうほどの長さのジーンズを身につけ、リビングへと向かう。

 部屋に入るまでついて来ていた姉さんはもうおらず、リビングの今すぐ飛びこみたいくらいにふかふかのソファを独占していた。

「姉さん、一人占めしないでくれる?」

「一人占めじゃないよ、すーくんが来るまでソファを温めてあげてたんだよー」姉さんは堂々とソファに横たわりながらこちらを見て言った。

 そんな状況にため息が自然と出てしまう。いつも通りの光景。

 もう別世界にいたような感覚は完全に無くなり、ただのくだらない普通の生活に戻っていた。

 水連愛。彼女にまた会えるだろうか。あの佳麗な顔立ち。本当にこの世のものかすら疑ってしまうかのような透き通る水色の髪。そしてその美貌から発せられる甘く透き通るような声は、聢と脳裏に焼きついて離れなくなってしまっている。

 この感情は何だろうか。初めての感情に混乱して目の前の光景が頭に入ってこなくなる。脳裏に残っているのは愛の顔と昔俺と仲良くしてくれていた幼馴染だった。


 あれは俺にとってまだ怖いものが無かった時期だった。小学校に通い始めるのは明日だというのに学校の制服を先に着て浮かれていた時、傍には俺のお母さんと一人の少女がいた。

 当時の俺と同じ歳だった彼女は、俺のお母さんと彼女のお母さんとで非常に深い関わりがあり、彼女と良く一緒に遊んでいた。彼女は愛に似た髪を持っており、学校のクラスの中でもその大人びた美貌は一際目立っていた。良い意味でも、悪い意味でも。

 

 あっという間に月日が流れ、4年生になり待望と宿題による絶望の夏休みが半分ほど過ぎた頃。

 彼女と花火大会が行われる夏祭りに来ていた。彼女は初めての浴衣姿を自慢したかったのか、彼女と仲が良かったクラスの女子たちの所へ楽しそうに走って向かっていた。

 そしてその光景を眺めている俺に気付くなり、その女子たちにまたねと一言だけ言い、俺の方へ走って来ていた。

 俺は彼女の浴衣姿に目を奪われ、周りの景色が頭に入ってこなくなっていた。そして知る事になったのだ。俺は彼女が好きだということを。

 花火が始まり、俺が少しかっこいい所を見せようとして事前に調べていた秘密の花火スポットがあると言い彼女を連れてそこまで走っていた。彼女のてはとても細くて握ると彼女が女であることを俺に自覚させる。

 秘密の花火スポットにはいくつかのベンチがあり、そこから町の全貌を見れるといった場所だった。着いてみれば想定以上に人が居る。だがベンチは一つだけ空いていたのでそこに彼女と二人で座った。彼女はこちらを見るなり、まだ発達していない高い声で「手をつないでも良い?」と聞いてきた。

 俺がうん、と答えると彼女は非常にうれしそうな笑顔を俺に見せてくれた。その笑顔は自然と俺に伝染していき、いつの間にか俺も笑っていた。

「ねぇ、ハルくんって好きな人とかいるのー?」何気なく恐ろしい言葉を放ってくる彼女は、少し顔を赤らめているように見えたが、それを花火が隠してしまう。

「い...いないよ」この時俺は初めて彼女に隠しごとをした。

 すると彼女は小さな頬を少し膨らませ言った。

「嘘だー、絶対今の反応はいるでしょー」

「いないから!そういうお前はいるのかよ」俺は気になっていた事を何気なく言うチャンスだと思い聞いた。彼女は分かりやすく恥ずかしそうにして言った。

「私は...いるかな...」小声で言った彼女は下を向いており、今どんな顔をしているのかわからなかった。

「誰だよ」

「それは...その...ハ――」一番気になる言葉を花火の音と震動が邪魔した。

「ごめん、何だって?」

「なんでもない」そう言って彼女はそっぽを向いてしまいかわいらしい左の頬だけしか見えなくなる。

 彼女に好きな人がいる。それは誰なのだろうか。

 夏休みが終わるまで、その考えが頭から離れることは無かった。

 夏休みが終わり、学校が始まってしばらくした頃、彼女は少し俺につきまとうようになった。

 登校の時はもちろん、教室の隅の席で本を読んでいる時もわざわざ仲のいい女子たちから離れて隣の席で難しそうな本を読み始めた。俺が図書室に行けば後ろから付いてくる。

 そしてある日、そんな日々が普通になろうとしていた時。

 図書室から教室に戻った時、男子たちから勝手に俺のことが好きだとか俺のストーカーだとか噂を流されていることに気を落としていた彼女を見つけた。

 彼女に駆け寄ろうとしたが、噂を流していた男子たちに目を付けられ、いきなり後ろから頭を叩かれた。本気ではなくじゃれあいのようなもので、大して痛くは無かったが、後ろを振り向くと一人の男子が俺を鋭い目つきで睨んでいたように見えた。名前は須藤。このクラスの男子を仕切っているような存在だ。

「お前、最近あいつに気にかけてもらってるからって調子乗りすぎじゃね?俺がいることを忘れんじゃねぇぞ」そう言った須藤は彼女の事が好きだったらしい。だから最近俺に彼女が付きまとって来ることに嫉妬し、俺を彼女に近付ければ取られると思ったのだろう。

 右の拳を強く握りしめた須藤は、その拳を振り被り、俺に向けて殴りかかった。

 俺はあまり反射が良い方ではないので、あまり反応せずに左腕を拳が来るであろう位置に動かしただけだった。少し鈍い音がしたがあまり痛みが来なかった。

 須藤も思っていた反応とは違ったのか、困惑した顔を見せた。

 須藤は何度も俺を殴り、近くにいた女子はそれを止めようとし、「やめてよ!須藤くん!」その叫び声を聞いたのか他の男子も止めに入ってくれた。だが気を落としていた彼女は俺を少し鈍い色をした眼で見ているだけだった。少し怖がっているように思えたのは彼女が初めて会った頃から痛いことが極端に嫌いだったのが原因だろう。

 何度も殴られた頬は不思議な事に何も感じなかった。感じたのは須藤の拳の感触だけだった。

 俺は痛みに鈍感だったのだ。異常なほどに。

 それに気付いたのは小学3年生の頃、手を滑らせカッターでで指を思い切り切ってしまった時だった。薬指を縦に切ってしまい、薬指からは血が止まらなかったが、俺はそれに気付かずに工作していた作品に血を付けてしまっていた。それが血と気付くまでは、何もなかったかのように工作を続けていたのだ。

 その日を期に、彼女は俺に近づくのをやめた。学校では彼女はまるで俺を赤の他人のように冷たい目で見始めたのだ。下校時には元通りだったが、いつもと違うのは彼女が俺を見るたびに申し訳なさそうな顔を見せることだ。

 彼女は俺が殴られていたのを見るのが辛いから近づくのをやめたのだろう。

 だが学校では彼女に見られていない所で須藤に殴られるようになり、彼女もいつもより気分が下がっているように見えた。

 彼女は俺の見えない所で須藤につきまとわれていた。もっと早くその事実を知りたかった。

 そして卒業式の前、彼女は校舎裏で須藤に告白されていた。俺は校舎裏のその場に偶然用があったのでその現場を隠れて見てしまった。

 彼女は断っていたが、須藤はしつこく、告白をやめる気配がなかった。彼女はずっと断っていたが、須藤はしびれを切らしたのか、ため息をつきながら右拳を握りしめていた。

 何をするつもりかと隠れていた校舎の柱から自然と身体を出して走っていた。

 須藤は俺に気付き、叫んだ。

「また俺の邪魔か!」須藤は俺の方を向き血管の浮かび上がった右腕を後ろに引き俺を殴った。

 彼女の方を見るとやはり怯えた目でこちらを見ていた。

「お前さえいなければ順調だったんだ!」

 俺は反撃する気になれず、須藤にひたすら殴られる時間が10分ほど続き、須藤も少々疲れたのか、はたまた俺の痛みへの無反応さに気味の悪さを覚えたのか赤く腫れ上がった拳を振るのをやめ、気分が落ちたのか力が入っていない足でその場を去っていった。

「大丈夫?須藤が結構しつこかったみたいだけど」そう言いながら後ろを振り向くと不思議なことに彼女はいなかった。足音もしなかったのに。

 そして中学生に進学してから彼女が行方不明となっていたことを知った。

 それから現在に至るまで、彼女は発見されていない。

 今でも彼女のお母さんに会うが、彼女に似た昔の元気な姿が嘘のような様子である。


「...おーい」

 彼女が抱えている闇をもっと早く知れていたら救ってあげれたのだろうか。

「えー、透晴さん、生きてますかー」

 彼女は何故あんなにも痛みに恐怖していたのだろうか。

「はあ...すーくん!」

 突然姉さんの大声で身体が驚きのあまり跳ねてしまう。

「なんだよ、びっくりしたじゃん」俺は冷や汗をかきながらいつのまにかソファから俺の目の前まで来ていた姉さんを見て言った。

「すーくんが1回で反応してくれないからじゃん。そんなに姉さんのこと嫌い?」姉さんはわざとらしく上目づかいをしながら可愛い表情をした。これが俺以外の男子であれば瞬殺されていたことだろう。

「いや、別に」

「なにー?好きな人でもできたの?」姉さんは少しにやけながらこちらをからかってくる。

「そんなんじゃない。考え事してただけ」俺は否定したが、昔好きだった人の事を考えていたことは事実だった。

 彼女は今行方不明だが、どこかで生きているのだろうか。それともやはり水連愛は彼女の亡霊だったのだろうか...。

 そんなことを考えても心の傷を抉るだけなので彼女について考えるのをやめることにした。

 姉さんは期待していた返答と違ったのか、少し不満そうにしてソファから少し離れた台所へと移動した。

「今日お母さんとお父さんは帰りが遅くなるらしいから。冷蔵庫に入ってるカレー温めて食べてだってさ」姉さんはそう言いながら黒く鈍い光を放つ色の冷蔵庫の上の方にしまってあったカレーを二皿取りだし、レンジへと向かった。

 レンジの中にカレーを入れ、電源を押すとレンジの中が黄色の曇ったような光を発し、カレーの皿を回転させ始めた。

 しばらくして二皿分温めて姉さんは食卓に並べ、先に食べ始めた。俺も姉さんと反対の席に座り、一緒に黙々とカレーを食べ始める。

 リビングを静寂が満たし始めた頃、姉さんが静寂を突き破る声を発した。

「それで、今日は何かあった?」突然の質問に答えるのが遅れてしまう。

「...何でそう思ったんだ?」

「いや、いつもならソファでくつろいでる私を無視してたのに。なにか疲れることでもあった?」姉さんはこういうと頃で感覚が鋭く、姉さんに隠しごとをすることができる人間はいないのではないかと思うほどだった。

「その...昔仲良くしてた子思い出してさ。今も生きてるのかなーってさ」

「あー...もしかして新目零ちゃんのこと?」

「なんでわかるんだよ...」

「だって昔すーくんと仲良くしてたのって零ちゃんくらいしか思いつかないじゃん」姉さんはさりげなく俺の心を抉り取ってきた。

 新目零。あの行方不明になった彼女の名前だ。

「う...」俺の悲痛の声が無意識に出ていた。

「零ちゃん、きっとまだ生きてるよ。」包むような優しい声が俺の耳に入った。もう姉さんは俳優を目指した方がいいのではないか。

「そうだといいけど、まだ見つかって無いだろ...零の話はやめよう」

 俺はあの日以来、零のことから逃げていた。零が消えてしまったのは俺があの時助けに入ったからではないのか。そう考えてしまい、物事に集中できなくなる上胸あたりが苦しくなり、何も視界に入ってこなくなる。

 ごまかすようにカレーを匙で口に運ぶ。濃い味が口の中に広がることで味に集中できたのか、徐々に心が落ち着いてくる。

 夕飯を食べ終わり、姉さんの分の皿も一緒に洗面台で洗い、片づける。

 姉さんに譲られ先に風呂場へと向かう。水が身体に当たると心地良い感触が身体全体に広がり、汚れが落ちるのを感じ取れる気がした。

 風呂から上がり、自身の温かい身体を手触りの良いタオルで拭き、部屋着に着替える。

 俺がリビングに戻るとそれに気付いたのかのんびりソファに座りテレビでコメディ番組を見ている姉さんはソファから気だるそうに立ち上がり着替えのパジャマを持って風呂の方へと歩き出した。

 俺はやっとソファに座り、チャンネルを変えようとしたが、特に見たいものがなかったのでテレビを消してテレビの隣に重々しく存在している本棚から今の気分に合う本を探していた。

 真っ先に目に入ったのは俺のお気に入りの作者が書いている恋愛小説「水影」だった。

 この人の書く恋愛小説は大体主人公が恋している女性と繋がることは無いのだが、その切なさと恋をするまでの思い出がとても心惹かれ、学校で読み始めたらいつの間にか授業が始まっており先生に少し怒られたこともある。

 今の暇な時間にはこの小説がちょうど良かった。

 

 読み終わり本を閉じると時計の針が真上を指していたことに気付く。

 本棚に戻し、リビングの電気を消す。姉さんは真面目ではあるので明日は早いと言い先に寝ている。

 親はまだ帰っていない。いつもの事なので特に気にしないが、静寂が支配した光の無いリビングは少し恐怖を感じさせる。

 颯爽と逃げるように自室に戻り、ベッドに飛び込む。

 ふかふかな材質の顔が埋もれるほど柔らかい枕は頭を置くだけで眠りへと誘ってくれる。



 目が覚めると先程のベッドと違い硬い木製のベンチが俺を支えていた。隣には浴衣姿の新目零がいた。

 脳内にはここに来るまでの楽しい夏祭りの記憶しか入っていない。

 そして何か違和感が俺を包んだ。

 俺は少し下を向き、手を前に出す。やはりだ。新目零は4年生の姿のままなのに俺は高校生の姿だ。だが校生活の記憶が無い。そう思い新目零の顔を見ようとしたが新目零はいなかった。

 そこにいたのは水蓮愛の姿だった。その姿は大人びた様子など零に似ている雰囲気があり、不思議と水蓮愛を新目零と見間違いしてしまうほどだった。

「透晴君。私は君のことが好きだよ。でも君を嫌いにならなきゃいけないの」

「それはなぜ?」訳の分からないことを言う。いつもの零らしくない。

「だってあなたは私に関わると皆から嫌われちゃうから。私がいなくなった後、君には友達が一人出来たでしょ?私、あの時嬉しかったのに悲しくて涙が出そうになった」今も泣きそうな顔をしている。ああ、零ではなくこの人は水蓮愛だ。脳が混乱している。2人とも似ているから、間違えてしまうのだ。

「だから、私がいない方が君は順調に友達が出来ると思う」細々とした今にも泣きそうな声で言った。

「そんな...俺は零がいたから――」

「私、あなたが嫌い」

 それは突然だった。


 目が覚めると、いつもとは違い目の下に水気と窓からの光の温かみを感じた。

 涙か。流したのはいつぶりだろうか。もう覚えていない。

 水蓮愛。また会えるかどうかでは無い。会いに行かなければならない。


 朝の学校へ行く準備を済ませる。リビングに向かうとお母さんが朝食を作って待っていた。

「おはよう」挨拶を済ませ、朝食を食べる。お母さんは今日休みらしく、裏口から洗濯をしに外に出ていた。

 朝食を食べ終わり、後片付けをした後に制服に着替える。

 玄関を出ると今日初の太陽の光を直接浴びる。春の心地良い風が吹き、涼しいのか暖かいのか分からない気温が身体を包んだ。

 今日は水蓮愛を一日中でも探し続ける。

 そう決意し歩き始めると、視界に入ったカーブミラーに違和感を感じた。

 この辺りの学校の制服では無いセーラー服を着ている女子高生がいる。

「え?」予想以上に会合するのが早すぎて情けない声が口から出てしまった。

「あ...バレちゃった...」

 愛は少し残念そうにカーブミラーを見ながら言った。

「なんでここに...?」

「その...実は玄関まではいつもあなたについてきていたの!」愛は勇気を振り絞ったであろうこの辺りに響く大きな声で言った。

 この通学路には俺と同じく通学する学生が割と多くいるが、誰も気にしていない。聞こえていないかのように愛の大声を無視している。

 そういえば昨日私の声が聞こえてるの?と言っているのを思い出した。もしかして本当に俺以外には聞こえていないのだろうか。

「あ"ー...うるせぇな...朝から叫ぶんじゃねえよ。ガキが。ここにもいるのか」だが1人、そう言った男性がいた。フードを被り、顔がよく見えない。

 顔を見る前に男性は過ぎ去っていった。

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