「王国議員は仕事もせずにラジオに夢中」
ラジオを聴いていると、こちら側の心情が読み取られているかのように、労働者新党の名が挙げられた。王銀に、経営危機に陥ったこと・海外企業買収案を批判し、王を好き放題罵倒した挙句、テロの予告までしてくれた手紙が送りつけられたらしく、その手口などから労働者新党のものとみられるという。こんな大事をやってくれるとは。少し期待してしまうではないか。一昨日のビラ配りはもしかしたら犯行声明を配っていたのかもしれない。秘書が申し訳なさそうに、ああ、取りそこねたな、と、後悔のぼやきをした。秘書はもとから、私みたいに労新に興味がなかったが、期待まで行かずとも多少は気にしているように見える。テロの予告、とラジオで伝えられても漠然としすぎて想像が出来ない。一番うれしいのはこのあたりでやってくれること。国営放送局の中継所もあるのでありえない話ではない。ここで私は彼らに出頭して、受け入れてもらう計画なのだが、さすがに秘書は乗り気でない。怪しすぎるそんな団体を仲間にするのはリスクが大きすぎる、と。
同じような夕食。最近このパンがライ麦パンなるものだと知った。最初は口の中での違和感が大きすぎて、ジャムとコーヒーがなければ吐き出してしまいそうだった。今でも小麦でつくられた普通のパンが恋しい。緊急時なのでどうしようもないのだが。先程から継続して聴いていたラジオが、ようやく音楽番組に切り替わった。国内外の著名人によって作曲された音楽がいつも決まった時間に流されるのだが、労新のニュースがあってか、遅れてのスタートとなった。 堅苦しい放送局の数少ない娯楽なのだから、減ってくれるのは嬉しいことでない。それでも新しいラジオで鮮明な音楽を聴くのは心地が良い。ここ最近は落ち着いた曲が多いような気がする。世の中の事情に合わせてだろうか。私は、早めにパンもコーヒーも飲み込んでしまったので、秘書を待ってゆっくりと、音楽の世界に没入することとする。本当は、断続的な中継機の作動音を打ち消すような大音量で聴いてみたいのだが、国営局の中継所といえ、いつも静かな建物から音がするのは不審がられるだろう。中継機の音が鳴る中で寝て、飲み、食いをするのは、脳のどこかがおかしくなりそうだが、今そこから逃避できるのは、コンクリートの壁が通さない程度の音量で聴くラジオ番組のみだ。曲が一つ鳴り終わる頃、秘書もパン食べ終わったらしい。議会でやじを弾き飛ばしてきた鋼鉄の私でさえ、咀嚼音ですら少々恐ろしくなるほどの精神状態になってしまったものだ。この後は夕方まで続いたニュースのまとめが流れるのが定例なので、曲が終われば寝てしまいたい。時報がないので分からないが、昨日よりも一時間ほどは遅れているような気がする。
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