第36話 エーテル化学部部室前
ㅤ翌日の放課後、彼はエーテル化学部の部室の戸を叩いた。
ㅤ低身長白衣の女生徒が出てくる。
「おっと、入部希望者?」
「見学させてもらえませんか。それと使わせてもらいたい機材があるんです。
ㅤ挨拶が後回しになってしまってすいません、はじめまして、飴川雫です」
「あぁ、リバイバー少年か」
「なんて?」
ㅤ反射的に聞き返してしまった。
「私は
ㅤよろしく、リバイバー少年」
ㅤ握手がてら、雫はもう一度訊く。
「そのリバイバーなんとかってなんです」
「奇跡的な視力回復と魂魄鎧の成長、きみ軽く噂になっているんだよ、気づかなかったかい?」
「――」
ㅤ確かに最近は悪目立っている自覚はあったが、面と向かって言われると戸惑うものだ。
「それで、先輩はなにやってる人ですか」
「君二年生だろう?
ㅤ私も同期なんだからタメでいいよ」
「そうです?
ㅤわりにインテリジェンス高くて、俺としては気後れしてしまうんですが」
「そんな、大人っぽいだなんて大袈裟だよぉ」
(言ってないけどこのままのほうが都合いいかな)
ㅤ向こうの誤解はそのままにしておく。ロリ体型について野暮な指摘はしない。
「目が見えるようになって早速、ということは、魂魄鎧にかかわることかな」
「それも含めて、ですかね。これまでの自分でできなかったこと、色々試したくて。
ㅤエーテル化学部の卒業OBの方々には、歴代凄い実績のあるそうじゃないですか。
ㅤお歴々ほどではなくても、俺が今できることを探したいんです、なんだったら入部届、今書きますよ」
「前のめりなのは嬉しい。
ㅤただそうだな、うちの部が文化部としては珍しく、一部エーテル競技系運動部との兼部が可能なのは知っているね?
ㅤ正直言ってきみのようなもやしくんには、想像と勝手が違うなんてこともあるだろう。
ㅤ部の出し物についても、毎年それを主導できるのはフィジカル的にもすぐれた子たちだ、そういう子たちほど自分の仕事に対する責任感や成果物の安定がある。というわけで、きみを少しテストさせてもらうことになるが――無論、入部がダメとはまったく言わない、うちに入っていたことのそれを自己PRの材料に用いることだってできるしね」
「なるほど」
「きみは事情が特殊だから、辺鄙な時期とはいえ私的には融通したいところだけど、うちの気風を知ると半端な実力しか持たない生徒には、居心地が悪くなる。
ㅤテストは実戦形式だ、エーテル制御を見るにはそれがもっとも手っ取り早い」
「というと」
「今日このあと、ラージシミュレーターへ。準備して待っていてくれ」
ㅤ雫は頷いた。
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